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DLST試験とは?薬剤師が知っておくべき3つのポイントを解説!

DLST試験とは何か?

薬疹や薬剤性肝障害が起こった時に原因薬を突き止めるために行う試験のことですね。

なんとなくわかっていても、具体的にどんな試験なのか?まで、きちんと答えられる人は意外と少ないのでは?

・検査の性質上、薬剤師に相談されることも多いので、概要だけでも知っておきたいものです。

今回は「DLST試験」をテーマに、以下の3つのポイントを解説します。

  1. 基本的知識
  2. DLST試験のメリット
  3. ピットフォール

さっそく、見ていきましょう。

DLST試験の基本的知識

何のために行うの?

DLST(ドラスト)試験の略は以下のとおり。

・薬剤誘発性リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test)

薬によるアレルギー反応が起こったとき、または疑った時に、原因はどのクスリなのかを特定するために行う試験です。

被疑薬」と「血液に含まれるリンパ球」を培養してリンパ球がどのくらい活性化されたのか?その強度から薬剤性かどうかの判断を行います。

薬剤性を疑ったら、すぐに「DLST試験をやろうーー」といって、すべてのケースで行うかというと、そうではありません。薬の種類や服薬歴、アレルギー反応の出現時期などからある程度推定または特定できるケースもあるからです。

しかし、実際にはどのクスリが原因かわからない!?ことが多いのも事実。再発を防ぐために原因薬を明らかにしたい。そんな時に行うのがDLST試験なのです。

検査に必要なもの

DLST試験を行う時に必要なものは2つあります。

・患者さんの血液12mL(1薬剤追加ごとに5mLプラス)
・被疑薬

血液量は1薬剤で12mL、2薬剤を調べる時には5mL追加で計17mL。これに被疑薬をセットで検査室に持っていくという流れです。

採血に関しては色々と注意があります。
・ヘパリンが起因薬であれば専用容器を使用する
・1薬剤で500万個のリンパ球が必要なため、白血球が少ない人では採血量が倍になる……など

検査精度を上げるために細かいルールがあるのです。ややこしいので、検査担当者に聞いてみるのがいいですね。それから、被疑薬は必要量が決まってます。薬剤師に依頼があるので知っておきましょう。

検査にかかる費用

検査にかかる費用はどのくらい?

以前は自費だったのが、最近では保険請求できるようになり患者さんの経済的負担も軽くなりました。

・リンパ球刺激試験…1薬剤345点、2薬剤425点、3薬剤以上515点

検査ができないクスリ

「DLST試験に必要な◯◯というクスリを用意してーー」と依頼されることがあります。

「わかりました」と言いたいところですが、残念なことに、どんな種類の薬も調べられるわけではありません。検査できないクスリがあります。

例えば以下のようなものです。

  • 麻薬、覚せい剤原料
  • 脂溶性が高くて溶けにくい成分
  • 坐薬やシロップ剤など溶けにくい製剤

麻薬と覚せい剤原料はダメ。
麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法の規制があるからです。一方で、向精神薬は検査が可能ですが、受領の記録が必要になります。

脂溶性が高い成分や溶解性の低い製剤は、物によって検査ができない場合もあるので検査担当者と相談しながら進めた方が良いでしょう。

あとですね。皮内反応注射薬や希釈された注射薬は、容量が少なかったり、濃度が薄かったり、と反応が弱く不向き……。なので、錠剤やカプセルで代用するそうです。

DLST試験ができない薬剤があることは知っておきましょう。

検査結果の読み方

次に、検査結果の見方について。

DLST試験の結果が報告されるまでの期間は10日間程度です。検査結果は「陽性」とか「陰性」とかで表示されるかと思いきや、◯◯cpm、SI値という記載でかえってきます。

どう読めばいいのか?それぞれの用語について説明しますね。

cpm値…リンパ球に取り込まれたチミジンの放射活性 (リンパ球がどのくらい活性化されたのかをあらわす指標)

高いほど薬剤性の可能性が高くなります。培養液にトリチウムチミジン(以下、チミジン)を添加して、刺激を受けたリンパ球が増殖するために取り込んだチミジン量を液体シンチレーションカウンターで測定。この細胞内に取り込まれたチミジンの放射活性がcpm値です。

つまり、cpm値が高いと、リンパ球が刺激されてDNA合成が盛んであることを表し、薬剤性の可能性が高いといえるわけですね。

次にSI値。

SI値…stimulation indexの略(薬剤を添加した群と無添加のコントロール群との割合をあらわす)

式は以下のとおり。

・SI値=薬剤を添加した群のcpm/コントロール群のcpm

このSI値に100をかけて、180以上を「DLST試験陽性」と判断するのが一般的です。薬剤の添加によりDNA合成に使われるチミジン量が1.8倍以上になると陽性と判断されます。

DLST試験はcpmとSI値をもとに、陽性かどうかを判断することを覚えておきましょう。

・DLST試験はどんな時に行うのか?

大きく2つの場面が想定されます。

・薬疹
・薬剤性肝障害

概要について簡単に確認しておきますね。

薬疹

薬疹は機序により2タイプに分類できます。

  • IgE抗体が主役の即時型アレルギー(Ⅰ型)
  • リンパ球のT細胞が関与する遅延型アレルギー(Ⅳ型)

・DLST試験は、遅延型アレルギー(Ⅳ型)の原因薬の特定に有用であるとされています。

T細胞が関与するアレルギー反応を評価する試験だからですね。(※ただ、即時型でも遅発型に対する感作が成立している場合には陽性になることも)

DLST試験で陽性になる薬疹はさまざまな種類があります。
その中でも、代表的なものを確認しておきますね。

典型的な薬疹は、紅斑丘疹型薬疹こうはんきゅうしんがたやくしん
→全身に紅い皮疹ができるタイプです。

重症型の薬疹で押さえておきたいのは以下のとおり。

  • スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)
  • 中毒性表皮壊死症(TEN)
  • 薬剤性過敏症症候群(DIHS)

SJSとTENは有名ですね。目や口腔粘膜を中心に発赤やびらんが生じます。だんだん皮膚にも広がって全身が紅くなり、擦れるとズルズル皮膚が剥がれるのが特徴です。

TENの方が致死率も高く重症。通常は、皮膚が剥がれた面積で区別するようで、一般的には10%以下のものをSJS、それ以上をTENと呼びます。

DIHSは薬剤以外にウイルスが関係し、発症までの期間が約4週間と長い。原因薬として抗痙攣薬が最多で、薬剤中止後も症状が悪化したり、腎臓や肝臓、神経の症状など多彩な病状を示すのが特徴です。

・薬疹は日常業務でよく遭遇します。中でも重症薬疹は、再燃再発を防ぐためにも原因薬の特定が不可欠です。DLST試験をうまく活用することが大切ですね。

薬剤性肝障害について

薬剤性肝障害は大きく2つに分類。

・中毒性
・特異体質性

中毒性は用量依存的に起こるアセトアミンフェンの肝障害が有名ですね。一方、殆どは用量非依存的に起こる特異体質性で様々な薬物が原因になります。

特異体質性はさらに2タイプに分類。

  • アレルギー性…薬物そのものや中間代謝物に抗原性を獲得する
  • 代謝性…薬物代謝酵素の個人差に起因する

・この中で、DLST試験が有用なのは、アレルギー性を機序とするT細胞傷害性の肝障害です。

一般医向けに作成された「DDW-J2004ワークショップ薬物性肝障害診断基準の提案」においてもDLST試験を活用することが記載されています。

・薬物療法中にときどき認める薬剤性の肝機能障害は、中止によって回復することがほとんどですが、中には再発、再燃を防ぐためにDLST試験を行う必要性が高いケースもあります。

DLST試験のメリット

原因薬を特定する方法はDLST試験だけじゃない

DLST試験以外にも原因薬剤を特定するための方法はあります。

  • 内服誘発試験(再投与試験)
  • 皮膚パッチテスト

この2つが有名ですよね。DLST試験のメリットを理解するためにも、それぞれのメリットとデメリットを簡単に押さえておきますね。

内服誘発試験

名前からどんな方法かイメージできますよね。

原理はいたって単純。
チャレンジ試験とも呼ばれ、患者さんに被疑薬を1/10〜1/100と少量から再投与して反応を確認する方法です。

メリットは、“確定診断ができること”

一方で、症状の再発が懸念されるので、“患者さんの負担も大きい”のが欠点です。安全性に配慮し、かなり減量して投与するとはいえ、患者さんからしたら、できることなら避けたいのが本音ですよね。

・薬剤性肝障害では、内服誘発試験は行わないのが基本です。症状の再燃、悪化リスクが高いので…。

一方で、薬疹の場合には、ケースによりチャレンジ試験を行うこともあります。ただ少量から慎重にです。特にSJS、TENなどの重症例では再発の危険を回避するために、原因薬の特定が欠かせないからですね。

皮膚パッチテスト

名前の通り、皮膚に被疑薬を溶かした溶液を塗布して局所の反応をみる方法です。

チャレンジ試験と異なり、全身投与ではないので、“当然、患者さんの負担は減ります”

しかし、生体での代謝反応を介さないため、クスリによっては偽陰性となったり、高濃度の接触によりアレルギー反応を感作する可能性があったり…と。

“結果の判定が難しいテスト”なんです。

皮膚パッチテストは、アレルギー性の接触性皮膚炎や薬疹の原因検索に有用です。当然のことながら、薬剤性肝障害に使うことはまずありません。

患者の負担が少ないのがDLST試験、最大のメリット

患者負担が少ないのが最大のメリット!

DLST試験はin vitroで行うのがほかの方法と決定的に違います。だから、患者さんに危険が及ばないのが優れた点です。

患者さんの血液と被疑薬を混ぜて培養し、リンパ球の反応をもとに診断する方法なので、患者さんの負担は採血だけ。しかも、保険請求も可能なので、経済的負担も少ない。

・DLST試験はチャレンジ試験、パッチテストに比べて簡便で、何より安全なのが魅力ですね。

DLST試験のピットフォール

DLST試験は患者さんの血液と被疑薬を用意すればin vitroで行うことができるーー!つまり、患者さんに安全でかつ利便性が良いのがメリット!

それなら、原因薬特定はなんでもDLST試験だけでこなせるかというと、残念ながらそうではなくて…。検査結果の解釈に注意が必要です。

”DLST試験は陽性率が高いわけではない“

DLST試験の陽性率は薬疹全体の約50%と低め。だから、DLST試験で陽性となった場合でも、必ずしも原因薬が特定されたとはいえません。

皮膚パッチテストが50〜70%、内服試験ではほぼ確定診断ができることを考えるとやっぱり低めです。

その理由はいくつかあります。

  • 薬物代謝物や中間代謝物が原因の場合には「偽陰性」になる
    →DLST試験では、生体での代謝反応を経るわけではないので代謝物が原因の場合には不向き。
  • 採血のタイミングにより「偽陰性」となる
    →アレルギー反応の直後ではコントロール群にも原因薬が含まれてしまう。治療に使うステロイドホルモンや免疫抑制剤が混入するとリンパ球の反応が弱くなる場合も。
  • 「偽陽性」を起こすクスリが知られている
    →漢方薬やβラクタム薬、NSAIDs、注射金製剤など他にもいくつか報告が。

DLST試験が陽性だからといって、「これが原因薬で間違いない」とは言い切れないし、逆に「陰性だから原因薬でない」ともいえません。慎重な解釈が求められているのです。

実際、日本皮膚科学会ホームページのQ&Aでは

・DLST試験は偽陽性、偽陰性がかなりあり、判定はあくまで他の検査法の結果、臨床症状と照らして行うべきだと記載されています。

また、DDW-J2004ワークショップ薬物性肝障害診断基準の提案では結果を解釈するうえでの注意事項が掲載されています。

・controlのCPMが低いときは参考データに留める
・薬物そのものではなく、薬物製剤の添付されたものが原因となることがある
・免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド薬使用患者は偽陰性となることがある
・肝炎極期には偽陰性となることがある。肝炎回復期初期の施行を推奨する
・薬物の中間代謝物が抗原となる場合は偽陰性となることがある
・biological modifierを含め偽陽性となる薬物が存在する

・DLST試験は「安全性、簡便性に優れるものの、万能ではない」ので過信は禁物。あくまでも参考に、他の臨床症状、経過と合わせて評価することが大切です。

まとめ

最後にまとめておきますね。

DLST試験、3つのポイントは以下のとおり。

  1. DLST試験、基本的知識
    →薬疹や薬剤性肝障害が発生したときに、「DLST試験って、なんだっけ?」「検査のことはちょっとわからないので検査室の人に聞いてー(>_>)」というのではマズイ。再発や再燃を防ぐために原因薬を特定することは大切。DLST試験は遅延型アレルギーの原因薬を特定するための検査の一つ。慌てないで対処できるように概要は押さえておきましょう。
  2. DLST試験のメリット
    →最大のメリットは安全性。内服再投与試験や皮膚パッチテストなどのin vivo試験ではどうしても患者さんの負担が問題になる。症状の再燃や悪化の危険はもちろん、テストに用いた薬剤に感作してしまったり。とにかく安全で簡便なのがDLST試験の強み。
  3. DLST試験のピットフォール
    →陽性率が低く、偽陽性、偽陰性などの可能性もあり過大評価はかえって危険。他の方法を活用したり、臨床所見と合わせて参考情報として評価しないと。「DLST試験で陽性=◯◯のクスリが原因薬とはいえないこと、またその逆も」を肝に銘じておく

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今回は「DLST試験」をテーマに
押さえておきたいポイントを紹介しました。

薬疹や薬剤性肝障害が起こった時には、原因薬の中止、症状緩和のための治療に加えて、再発予防のために、原因薬の特定も大切な視点です。その方法の一つとしてDLST試験を活用することができます。

DLST試験について理解が深まり日常業務にお役立ていただけたらうれしいです♪

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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