睡眠薬

デエビゴの特徴は?ベルソムラと比較しながら解説します!

今回のテーマはデエビゴ!

不眠症の治療薬で、一般名はレンボレキサント。オレキシン受容体拮抗薬です。先に発売されたベルソムラと同じ分類ですね。

デエビゴはベルソムラと比べてどこが違うのか、比較しながら特徴を解説します。

デエビゴを理解するためのポイント:ベルソムラと比較

ポイントをざっとまとめると下記です。

デエビゴ ベルソムラ
一般名 レンボレキサント スボレキサント
規格 2.5・5・10mg 10・15・20mg
適応症 不眠症 不眠症
選択性 OX1R<OX2R OX1R>OX2R
禁忌 重度の肝機能障害 CYP3Aを強く阻害する薬剤投与中患者
用法用量 5mg…通常
10mg…最大
2.5mg…CYP併用注意薬投与中
20mg…成人
15mg…高齢者
10mg…CYP併用注意薬投与中
代謝 CYP3A CYP3A、P糖蛋白
排泄 尿中29.1%、未変化体1%未満 尿中23%、未変化体1%未満
一包化 可能 不可
薬価 ¥57.3/90.8/136.2 ¥69.3/90.8/109.9

※2020.4.27時点

ベルソムラとデエビゴの違いは大きく以下の5つです。

  1. オレキシン2受容体への選択性が高い
  2. 薬物代謝酵素CYPの影響を受けにくい
  3. 重度の肝障害患者に禁忌
  4. 重度の腎障害患者は慎重投与
  5. 一包化できるようになった

順番に見ていきますね。

1)オレキシン2受容体への選択性が高い

デエビゴとベルソムラでは、オレキシン受容体(OXR)に対する選択性が違います。

選択性:デエビゴとベルソムラの比較

ヒトオレキシン受容体に対するIC50値は以下のとおりです。

デエビゴ ベルソムラ
hOX1R 6.1±1.4 8.8±2.5
hOX2R 2.6±0.4 12.0±2.8

・デエビゴ…OX1ROX2R

・ベルソムラOX1ROX2R

こんな感じですね。デエビゴはOX2Rに選択性が高いのが一つ目の特徴です。じゃあ、何がいいのか?

OX2Rの方が睡眠と覚醒に深く関わっている!

OX1RとOX2Rの機能は異なることがわかっています。睡眠覚醒と関わりが深いのはOX2Rの方です。

OX1Rを欠損したマウスでは睡眠異常が見られないのに対してOX2Rを欠損したマウスではナルコレプシー様症状を呈することが遺伝子を用いた研究で明らかになっています。現在、OX2Rのアゴニストがナルコレプシーの治療薬として開発中です。

参考文献)低分子オレキシン受容体アゴニストの創製

であれば、デエビゴの方がよく効くのでは?

と思ったのですが、生理的には両方のレセプターを阻害して睡眠作用が得られるとのこと。

デエビゴは、OX1RとOX2Rの両方を阻害する不眠症治療薬として開発されました。(デエビゴ、製品概要参照)

いわゆるDORA(dual orexin receptor antagonist)で、位置付けはベルソムラと同じと考えていいわけですね。

今後は新しいエビデンスが出て、「デエビゴの方が睡眠効果が強い」ってなる可能性もありますが、承認時にはベルソムラと直接比較した臨床試験はありません。

2)薬物代謝酵素CYPの影響を受けにくい

一番のメリットではないでしょうか。

相互作用:デエビゴとベルソムラとの比較

デエビゴはおもにCYP3Aにより代謝されます。一方、ベルソムラは少し複雑です。CYP3AとCYP2C19、加えてP糖蛋白の影響を受けます。

併用禁忌と注意薬、主なものは下記です。

デエビゴ ベルソムラ
禁忌 なし イトラコナゾール
クラリスロマイシン
リトナビル
ネルフィナビル
ボリコナゾール
注意
(阻害剤)
イトラコナゾール
クラリスロマイシン
エリスロマイシン
フルコナゾール
ベラパミル
ジルチアゼム
ベラパミル
フルコナゾール等
ジゴキシン(P-GP)
注意
(誘導剤)
リファンピシン
フェニトイン等
リファンピシン
カルバマゼピン
フェニトイン等

デエビゴは併用禁忌がない!

ベルソムラと大きく異なる点ですね。

併用禁忌がなくなったので、使いやすくなりました。ここがメーカーの売りです。

ベルソムラ投与中に、臨時でクラリスロマイシンが処方されることが結構ありました。特にピロリ菌の一次除菌療法に含まれるの注意が必要でしたね。

デエビゴはクラリスロマイシンが併用注意なので、除菌療法中に飲むことが可能です。

併用注意の場合には減量基準がある

デエビゴは1回2.5mgへ減量する必要があります。

併用注意だからといってスルーは禁物です。

CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で、本剤投与の可否を判断すること。なお、併用する場合は1日1回2.5mgとすること。

デエビゴ、添付文書

ちなみに、ベルソムラも注意薬と併用する場合には10mgへ減量します。どちらの薬剤も併用薬のチェック、投与量の確認が必須ですね。

3)重度の肝障害患者に禁忌

肝機能障害のある患者さんへの対応が異なります。

肝機能障害:デエビゴとベルソムラの比較

禁忌と慎重投与は下記です。

デエビゴ ベルソムラ
禁忌 重度の肝機能障害 (記載なし)
慎重投与 軽度および中等度 重度の肝機能障害
薬物動態 Child-Pugh分類A(軽度)とB(中等度)ではそれぞれAUCが25%、54%上昇 Child-Pugh分類B(中等度)ではAUCが3%上昇

参考)各製剤の添付文書、インタビューフォーム

肝機能障害患者への対応

デエビゴは中等度の肝機能障害のある人には慎重投与です。AUCが増加するため減量を考慮し、最大投与量に制限があります。

中等度肝機能障害患者では、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇するため、1日1回5mgを超えないこととし、慎重に投与すること。

デエビゴ、添付文書

一方、重度の肝機能障害患者では禁忌です。薬物動態の検討はなく、AUC増加による副作用の恐れがあるためですね。

ベルソムラは、重度の肝機能障害の方に慎重投与です。特に減量基準は設けられておりません。

肝機能障害のある人では、ベルソムラの方が使いやすいですね。デエビゴは、投与の可否、投与量のチェックが欠かせません。

4)重度の腎障害患者は慎重投与

腎機能障害:デエビゴとベルソムラとの比較

禁忌と慎重投与は下記です。

デエビゴ ベルソムラ
禁忌 (記載なし) (記載なし)
慎重投与 重度の腎機能障害 (記載なし)
薬物動態 eGFR15〜29mL/min/1.73m2の人ではAUCが50%増加 CLcr30mL/min/1.73m2以下ではAUCが22%増加

参考)各製剤の添付文書、インタビューフォーム

腎機能障害患者への対応

デエビゴはeGFR30m未満(mL/min/1.73m2)の人には慎重投与です。基本的には5mgから開始、安全性に問題がなければ、10mgへ増量する流れになります。

代謝物に活性がある!

デエビゴは尿中回収率が29.1%(未変化体が1%未満)です。しかし、代謝物に活性があるので、排泄遅延により薬効が強く現れることが懸念されます。

一方で、ベルソムラは代謝物に活性がありません。尿中回収率が23%(未変化体1%未満)でデエビゴとほとんど変わらないけど、血中濃度上昇による副作用の可能性は低いと考えられます。

代謝物に活性があるかどうかも、両薬剤の違いを理解するために大切な視点ですね。

5)一包化できるようになった

ここも使いやすくなった点です。

安定性:デエビゴとベルソムラとの比較

デエビゴは吸湿性に問題なく、一包化できるようです。(メーカー確認)

これはうれしいですね。安定性試験の比較は下記です。

デエビゴ ベルソムラ
安定性試験
(無包装)
40°C/75%RH
…3ヶ月間変化なし
30°C/75%RH
…1日後からコーティング層ひび割れ、保存期間の増加につれ溶出速度低下
光安定性試験
(無包装)
変化なし 溶出速度の増加、崩壊時間の短縮、硬度の低下及び退色

参考)各製剤のインタビューフォーム

介護者の負担が軽減!服薬コンプライアンスも向上?!

配薬準備が楽になりますね。

介護施設、病院等で管理する手間が解消されます。ベルソムラを空袋や手作りの紙にホッチキスどめするのは大変だったので。

指先が不自由な患者さんもメリットです。一包化で対応できるので、アルミのシートから苦労して取り出すことからも解放されます。

一包化ができれば服薬コンプライアンスにもいい影響を与えてくれるはずです。

デエビゴの有効性と臨床における位置付け

1)有効性は?

デエビゴの効果はどうなのか?簡単に概要を確認しておきます。

SUNRISE2試験

日本人が含まれる試験です。

デエビゴはプラセボと比較して、入眠と睡眠維持の効果が有意に改善しました。

結果は以下のとおりです。

  • 対象者…18歳以上の不眠症患者949名(日本人161名)
  • デエビゴ5mgと10mg、プラセボと比較(6ヶ月間)
  • 主要評価項目…投与6ヶ月時点の睡眠潜時(就寝から入眠までの時間)のベースラインからの変化量
  • 結果(中央値,min)…デエビゴ5mg:-21.81、10mg:-28.21、プラセボ:-11.43

デエビゴ群におけるベースラインの中央値は53〜55分程度でした。ざっくりいうと、入眠するまでに1時間近くかかっていたのが、半分くらいに短縮されるイメージですね。

また、睡眠効率(就床時間に対する全睡眠時間)と中途覚醒時間についてもプラセボよりも有意に改善しました。寝つきを良くするだけでなく、睡眠を維持する効果も示されたわけですね。

SUNRISE2試験は睡眠日誌を用いて患者さんの主観で評価したものです。一方で、睡眠ポリグラフ検査(PSG)を用いて客観的に評価したSUNRISE1試験があります。

SUNRISE1試験

こちらの試験は日本人を含みません。

デエビゴはプラセボ、ゾルピデムERと比較して、入眠効果と睡眠維持効果が有意に改善しました。※ゾルピデムERは徐放製剤で国内では未承認、用量は6.25mgです。

  • 対象…55歳以上の不眠症患者1,006例(日本人含まない)
  • デエビゴ5mgと10mg、プラセボ、ゾルピデムと比較(1ヶ月)
  • 主要評価項目…睡眠潜時(LPS)のベースラインからの変化量(プラセボと比較)
  • 副次評価項目…(一部抜粋)LPSのベースラインからの変化量(ゾルピデムと比較)
  • 結果(中央値,min)…デエビゴ5mg:-12.00、10mg:-16.25、プラセボ:-6.63、ゾルピデム:-2.88

PSGを用いた客観的評価においても、デエビゴはプラセボ、ゾルピデムと比較して入眠までの期間が有意に短縮されました。中途覚醒時間と睡眠効率も同様の結果でした。

個人的にはゾルピデムよりも優れている点に驚きました。従来の睡眠薬より効果が高いとは思ってもいなかったからです。もちろん国内のゾルピデムとは違うし、日本人が含まれていないけど、効きが良さそうな印象を持ちました。

2)臨床における位置付けは?

睡眠薬は大きく以下の4つのグループに分類されます。

  • ベンゾジアゼピン系
  • 非ベンゾジアゼピン系
  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬

ベンゾジアゼピンは従来からある睡眠薬!

脳内のベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作用しGABAの働きを強め、睡眠効果を発揮します。催眠作用だけでなく、抗不安や筋弛緩、抗けいれん作用を併せ持つのが特徴です。

依存症や認知機能低下、ふらつきによる転倒等が問題となりやすく、高齢者では可能な限り使用を控えるべきとされています。(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン1)

非ベンゾジアゼピン系はBZDよりも副作用が少なめ!

非ベンゾジアゼピン系はBZDよりも安全性が高く、高齢者において選択される睡眠薬です。短時間型のゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンなどですね。

依存性が形成されにくく、翌朝の眠気やふらつきも起こりにくいのが特徴です。

一方で、記憶障害や半跳性不眠等の問題もあります。漫然と投与すべきではなく、少量投与、短期間投与が基本になります1)

安全性が高いのはメラトニン受容体作動薬!

メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)は体内時計を正常化し睡眠効果を発揮します。BZD・非BZDと違って、自然な眠りを促す睡眠薬ですね。

睡眠のリズムに異常が見られるケースでは第一選択です。安全性が高いので、高齢者や基礎疾患がある人では使いやすいですね。

ただし、入眠障害に対する効果は期待しにくく、効果が発現するまでに2〜4週間程度かかるといわれています。

オレキシン受容体の位置づけは

効果については、下記のイメージでしょうか。

BZD>非BZD>オレキシン受容体拮抗薬>メラトニン受容体作動薬

BZD・非BZDよりも安全性が高く、ラメルテオンよりも効果発現が早いのが特徴です。最近では高齢者に使われるケースが増えています。

今回登場したデエビゴはベルソムラよりも使いやすくなった!

個人的には期待しています。上述したように、併用禁忌がなくなり、一包化もできるようになったからです。BZD・非BZDから移行できるケースが増えたらいいなと思っています。

あとはベルソムラと比べて効果がどうかが気になるところ、今後のエビデンスに注目ですね。

まとめ

デエビゴを理解するためのポイントは以下のとおりです。

  1. オレキシン2受容体への選択性が高い
  2. CYPの影響を受けにくい
  3. 重度の肝機能障害患者に禁忌
  4. 重度の腎機能障害患者に慎重投与
  5. 一包化できるようになった

今回はオレキシン受容体拮抗薬デエビゴについて、ベルソムラと比較しながら特徴を解説しました。睡眠薬の適正使用にお役立ていただけたらうれしいです^ ^

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