キャブピリン配合錠の特徴【3つの懸念と合わせて解説!】

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キャブピリン配合錠が発売されました!

タケキャブアスピリンの配合剤です

名前の後半部分「キャブ」と「ピリン」の組み合わせですね。

また、配合剤が発売されたの?!

と思った瞬間に、ちょっと違和感を覚えました。キャブピリンを使う場面を考えるうちに、心配な点が出てきたからです。

いま考えると、タケルダ(アスピリンとランソプラゾール)にも言えることですけど…

今回はまず、キャブピリンの特徴について解説!そのあとに私が感じた3つの懸念事項を共有したいと思います。

目次

キャブピリンの特徴について

基本情報

製品名キャブピリン配合錠
一般名アスピリン+ボノプラザンフマル酸塩
適応症下記疾患又は術後における血栓・塞栓形成の抑制
(※胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る
・狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後
禁忌・本剤の成分又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
・アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩を投与中の患者
・消化性潰瘍のある患者
・出血傾向のある患者
・アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者
・出産予定日12週以内の妊婦
用法用量1日1回1錠(アスピリン/ボノプラザンとして100mg/10mg)

キャブピリンは配合剤です

・アスピリン…抗血小板薬
・ボノプラザン…P-CAB

(※カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)

開発コンセプトは、

アスピリン服用中に起こりうる消化性潰瘍をタケキャブ(ボノプラザン)で予防するというもの。

製剤は外層と内核で構成されています

(製剤に関する項目、剤形)

ボノプラザンフマル酸塩を含む外層アスピリンを含む内核錠で構成される白色のフィルムコ ーティング錠である。

キャブピリン配合錠 インタビューフォーム

腸溶性コーティングされたアスピリン錠の外側をボノプラザンで包み、フィルムコーティングを施したものです。タケルダと同様ですね。

まずは2種類について、臨床における位置付けを確認します。

アスピリンの位置付け

アスピリンはいろんな場面で使われます。

中でも多いのは心臓と脳領域です。脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に飲んでいる人をよく見かけます。

ガイドラインにおける推奨は以下のとおりです。

非心原性脳梗塞)

再発予防上、最も有効な抗血小板療法はシロスタゾール200mg/日、クロピドグレル75mg/日、アスピリン75〜150mg/日(以上、グレードA)、チクロピジン200mg /日である(グレードB)

脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2019]

急性冠症候群、安定冠動脈疾患

禁忌がないかぎり,無期限にアスピリン81〜162mg/日を経口投与する(クラスI A)

冠動脈疾患患者における抗血栓療法JCS2020

アスピリンは心血管イベントの予防に汎用されています。安価でエビデンスも確立しているからです。処方数量はかなりのものですね。

一方で、消化性潰瘍の副作用が問題になります

プロスタグランジンの阻害により、胃粘膜防御能が破綻させるからです。もう誰もが知っている副作用ですよね。吐血で受診され、内視鏡検査で胃潰瘍と診断された患者さんが、実はアスピリンを飲んでたというのはよくあります。

副作用を予防するためにはどうすれば?

PPI(プロトンポンプ阻害薬)の出番です。

PPIの位置付け

ボノプラザンの位置付けはPPIとほぼ同じです。P-CABの方が胃酸分泌作用が強いというイメージですね。

同じく消化性潰瘍の予防に使用されます。

低用量アスピリン(LDA)による上部消化性潰瘍の再発予防にはPPIの投与が有効であるので投与するように推奨する(IA)

消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版)

アスピリン+PPIの組み合わせはガイドラインのお墨付きです。

処方の目的

キャブピリン配合錠の必要性は何か?

患者さんの服薬負担減らすことです

配合剤の利点といえば、これですよね。2剤が1剤になれば単純に服用数が1つ減ります。たった1剤であっても毎日のことを考えたら、患者さんにとってメリットですよね。

アスピリンとPPIを飲む人は、他にもいろんな薬を飲んでいます。脳梗塞や心筋梗塞を起こす人は、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの基礎疾患を持つ人が多いからです。

たとえば、心筋梗塞後の人でよく見る処方パターンは下記です。

  • アスピリン
  • チエノピリジン系
  • PPI(Pcab)
  • ARB又はACE阻害薬
  • βブロッカー
  • 利尿薬
  • スタチン
  • Ca拮抗薬

心臓を保護する薬や動脈硬化予防の薬がセットになっています。さらに糖尿病薬や緩下剤、睡眠薬、泌尿器疾患薬などが加わり、容易に10種類を超える人は少なくありません。

アスピリンとPPIを併用している患者さんでは、服薬数が多くできるだけ錠数を減らしたいというニーズが高いわけです。

錠剤の大きさ

配合剤の方がやはり大きくなります。

タケルダも含めて比較すると下記です。

製品名直径(mm)厚さ(mm)
バイアスピリン7.33.2
タケキャブ錠10mg8.2×4.73.4
キャブピリン配合錠8.03.9
タケルダ配合錠10.05.4
各添付文書より作成

飲みやすさは大きく変わらないかも知れません。キャブピリンはバイアスピリンに比べて一回り大きくなりますが、大差はないからです。

タケルダが大きかったので心配しましたが……。

コスト

配合剤を使えば、服薬コストはどうなるのか?

調べると下記でした。

製品名薬価
バイアスピリン¥5.7/錠
タケキャブ10mg¥125.0/錠
キャブピリン配合錠¥126.7/錠

2021年11月時点の薬価です。

アスピリン1錠+α分が安くなる計算。わずかですが、コストダウンも期待できます。

「じゃあ、切り替えを進めたら良いのか?」

と思う一方で、懸念事項もあります。順番に見ていきますね。

キャブピリン:3つの懸念事項

大きく3つあります。

  1. 恩恵を受けられる人は実は少ない?!
  2. 手術前に見逃す可能性がある!
  3. 薬効重複の可能性がさらに増える!

1)恩恵を受けられる人は実は少ない?!

キャブピリンは適応限定されているからです

基本的には消化性潰瘍の「再発予防」にしか使えません。

再発という言葉がポイント!

過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍を患ったことがある人が対象です。

アスピリンとPPIを飲んでる人はかなりおられます。しかし、みんなが再発予防だとは限りません。もちろん、胃潰瘍の治療で飲んでるかも知れないし、逆流性食道炎の可能性もあります。

さらに、消化性潰瘍の既往がない一次予防において、適応外で処方されるケースは少なくありません(意外とこれが多い気がする)

だから、処方目的の確認が欠かせません!

アスピリン+PPI(Pcab)の組み合わせがあったとして、コンプライアンスが悪くても、適応が合致しなければキャブピリンへ処方変更できない点は留意しておきたいです。

2)手術前に見逃す可能性がある!

キャブピリンと聞いて、

手術前の休薬を頭に思い浮かべる人は少ないからです

手術前に血液サラサラ系薬を中止するのは基本です。処方箋やお薬手帳の記録を見て隈なく探しますよね。

アスピリンならきっと見逃すことはないでしょう。血液サラサラ系の代名詞なので。

一方で、キャブピリンはどうでしょうか?

かろうじて、アスピリンの存在をピリンという部分が主張しているけど、意識してないと、普通にスルーしてしまう可能性は十分にあります。

「実際に見逃して、手術前ギリギリに気付いた」というケースは少なくありません。

これはタケルダやコンプラビン(アスピリンとクロピドグレルの配合剤)にもいえることですけどね。

最近では周術期外来で薬剤師が確認する施設も増えているので、チェックリスト等を見直した方が良いと思いました。

3)薬効重複の確率がさらに増える!?

キャブピリンは

もともと重複が多いPcab配合剤だからです

実際に、Pcab(PPI)の重複は少なくありません。過去にツイートしたとおりです。

PPIが登場した頃は②PPI+H2拮抗薬の組み合わせが多かったけど、今では①PPI+PPIはもちろん、③+Pcabの重複も増えてきた印象があります。

そんな中、配合剤が登場したわけです。さらに重複に気づかず見逃されるケースが懸念されます。特に複数の医療機関から薬を処方されている人では見落としやすいので気をつけたいですね。

まとめ

今回はキャブピリンの発売を聞いて、心配になった点を掘り下げました。

アスピリンとPPIの組み合わせは、抗血栓療法においてお約束と言えるくらいよく見かけるものです。

アスピリン+タケキャブ→キャブピリン

のニーズはやはりあると思います(あるから開発されたわけだけど…)

患者さんの服薬負担を減らしてくれるので、適応があれば検討するのはアリですよね。

でも、気をつけたいのは、手術前の休薬を見逃したり、薬効重複に気づかなかったりという予期せぬトラブル。処方監査や周術期のリスク管理の必要性を強く感じました。

とにかく、

キャブピリン ➡︎ タケキャブ+アスピリン

と、頭の中で読み替える習慣が大切だと思います♪

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