今回のテーマはRSウイルスワクチン!国内で使用できるのは、アレックスビー筋注用とアブリスボ筋注用の2種類です。どのような特徴があるのか?どのように使い分けるのか?ポイントをまとめたので解説します。
アレックスビーとアブリスボの比較表
| アレックスビー筋注用 | アブリスボ筋注用 | |
|---|---|---|
| 製剤写真 | ![]() | ![]() |
| 製造販売元 | グラクソ・スミスクライン | ファイザー |
| 分類 | 組換えRSウイルスワクチン | 組換えRSウイルスワクチン |
| 販売日 | 2024年1月 | 2024年5月 |
| 有効成分 | RSV-A、PreF3抗原0.12mg | RSV-A、PreF3抗原0.06mg RSV-B、PreF3抗原0.06mg |
| 価数 | 1価(RSVサブタイプAの組換えPreF3抗原) | 2価(RSVサブタイプAおよびBの組換えPreF抗原) |
| 剤型 | ①抗原バイアル +②溶解液バイアル | ①抗原バイアル +②溶解液入りプレフィルドシリンジ |
| 効能・効果 | RSウイルスによる感染症の予防 | ・妊婦への能動免疫による新生児・乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防 ・60歳以上の者におけるRSウイルスによる感染症の予防 |
| 接種対象者 | ・60歳以上の者 ・18歳以上のRSV感染症重症化リスクが高い者 | ・妊婦 ・60歳以上の者 |
| 接種回数・用量 | 1回0.5mL | 1回0.5mL |
| 投与方法 | 筋肉内注射 | 筋肉内注射 |
| 作用 | 液性免疫 細胞性免疫 | 液性免疫 妊婦(母子免疫) |
| アジュバント | あり | なし |
| 定期/任意接種 | 任意接種(自費) | ・妊婦のみ定期接種(2026年4月〜/対象は妊娠28週0日〜36週6日) ・60歳以上は任意接種(自費) |
| 保存方法 | 2〜8℃(凍結を避ける) | 2〜8℃(凍結を避ける) |
- RSウイルスとは?
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- パラミクソウイルス科に属するRNAウイルス
- 抗原性の違いから、2つのサブグループに分類(RSV-A、RSA-B)(アブリスボは2価ワクチン)
- 年長児や非高齢者成人では感冒症状のみで自然に軽快することが多い
- 生後数ヶ月までの乳児は重症化しやすく、細気管支炎や肺炎等の重症感染症を引き起こすこともある(母子免疫の必要性:アブリスボ)
- 高齢者でも気管支炎や肺炎等の重症感染症を引き起こすこともあり、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)やうっ血性心不全等の基礎疾患を有すると、重症化リスクが高く、入院や死亡といった重篤な転帰に至ることもある(高齢者へのワクチン投与の重要性:アレックスビー、アブリスボ)
アレックスビーとアブリスボ:適応と対象者の違い
| アレックスビー筋注用 | アブリスボ筋注用 | |
|---|---|---|
| 妊婦 | ||
| 60歳以上 | ||
| 18歳以上59歳以下 のハイリスク患者 |
アレックスビーの主な対象は60歳以上の高齢者です。対象年齢の拡大は段階的に行われ、2024年11月に50歳以上に、2025年6月に18歳以上のRSウイルスによる感染症が重症化するハイリスク患者への投与が可能となりました。アジュバント(免疫賦活剤)の含有により、強い免疫応答(液性免疫+細胞性免疫)を引き起こす特徴を有します。
アブリスボは母子免疫に使用できるワクチンです。「妊婦(妊娠24〜36週)」への接種に適応があります。母親の体内で作られた抗体が胎盤を通して胎児に移行し、出生後の乳児をRSウイルスから守ります。令和8年4月から定期接種(妊娠28週0日〜36週6日)の対象となりました。適応症と定期接種で期間に違いがあるので注意です。また2024年3月に「60歳以上の高齢者」にも投与が可能となりました。2価ワクチンで液性免疫を強化する製剤設計となっています(アジュバント不使用)
RSウイルスワクチンのご案内:定期接種(アブリスボ)

アレックスビーは母子免疫に使用できません。ここはポイントです。電子添文にも、注意喚起がされています。
(効能又は効果に関連する注意)本剤は母子免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルス感染症の予防に対する適応はない(アレックスビー電子添文)
アレックスビー筋注用の間違い接種防止のお願い
アレックスビー:高齢者における「発症予防」
RSウイルスは「子供の風邪」という印象が強いですが、高齢者や基礎疾患(COPD、喘息、慢性心不全など)を持つ人が感染すると、肺炎を引き起こして重症化し、命に関わることがあります。特効薬(抗ウイルス薬)がなく、「ワクチンによる予防」が極めて重要です。60歳以上又は基礎疾患を有する18歳以上の成人では、アレックスビー(又はアブリスボ)の投与が推奨されています。アレックスビーはアジュバンドを含み、免疫応答が弱い高齢者においても有効性を高める製剤として開発されました。
国際共同第Ⅲ相試験(RSV OA=ADJ-006試験)
- 対象:60歳以上の成人24966例(日本人1038例含む)
- 介入:アレックスビー1回0.5mL筋肉内注射
- 比較:プラセボ
- 結果:主要評価項目はPCRで確定したRSV-A又はRSV-B感染による下気道疾患(LRTD)の予防効果(最初のRSVシーズン終了時)
全体での有効性(予防効果)は82.58%、日本人集団でRSV感染によるLRTDの発現は認めず。ウイルスの分類別の有効性は、RSV-A:84.62%、RSV-B:80.88%であった。ベースライン時に1つ以上の注目すべき併存疾患がある者における有効性は94.61%であった。


アブリスボ:乳児を守るための「母子免疫」
RSウイルス感染症は生後数ヶ月までの乳児では重症化しやすく、細気管支炎や肺炎等の重症感染症を引き起こすこともあり、母子免疫が重要になります。アブリスボは妊婦(24週〜36週)に接種することで、母親の体内で作られた抗体を胎盤を通じて胎児に移行させ、出生後の乳児をRSウイルスの感染から守ることが可能です。
国際共同第Ⅲ相試験(C3671008試験)
- 対象:母親参加者7358例(日本からの462例を含む)、治験薬の接種を完了した母親から出生した乳児参加者7128例(日本からの434例を含む)
- 介入:アブリスボ1回0.5mL筋肉内注射
- 比較:プラセボ
- 結果:以下の通り
主要評価項目① RSVを原因とするMA-LRTIの減少に対するワクチン有効性は統計学的に優位性は認められず。主要評価項目② RSVを原因とする高度のMA-LRTIの減少に対する有効性は、生後180日までのすべての評価時点で統計的な優位性を示した。


アレックスビーとアブリスボの安全性
アレックスビーとアボリスボは接種後の副反応に注意しなければなりません。それぞれの臨床試験による注射部位反応、全身症状の頻度は以下の通りです。両剤を直接比較したデータはありませんが、アジュバンドを含むアレックスビーは副反応の頻度が高い傾向があるといえます。
| アレックスビー | アブリスボ | |
|---|---|---|
| 接種部位反応 | 62.2%(547/879例) 疼痛60.9%(535/879例)、紅斑7.5%(66/879例)、腫脹5.5%(48/879例) | 12.1%(438/3621例) 疼痛10.5%(382/3621例)、紅斑2.7%(97/3619例)、腫脹2.4%(88/3619例) |
| 全身性の副反応 | 49.4%(434/879例) 疲労33.6%(295/879例)、筋肉痛28.9%(254/879例)、頭痛27.2%(239/879例) | 27.4%(993/3621例) 疲労15.5%(562/3621例)、筋肉痛10.1%(367/3621例)、頭痛12.8%(465/3621例) |
| 臨床試験 | 国際共同第Ⅲ相試験 60歳以上の高齢者を対象 | 国際共同第Ⅲ相試験 60歳以上の高齢者を対象 |
アレックスビーとアボリスボはショックやアナフィラキシー、ギラン・バレー症候群などの免疫疾患を起こす可能性があります。接種後の症状確認と前駆症状についての説明が必要ですね。患者さん指導等のパンフレットが活用できます。
| アレックスビー | アブリスボ | |
|---|---|---|
| RMP | 重要な潜在的リスク ①ショック、アナフィラキシー ②免疫の関与が疑われる疾患 | 重要な潜在的リスク ①ショック,アナフィラキシー ②ギラン・バレー症候群およびその他の免疫介在性脱髄疾患 |
| 重大な副反応 | ショック、アナフィラキシー ギラン・バレー症候群 | ショック、アナフィラキシー ギラン・バレー症候群 |



高齢者に使うアレックスビーは免疫応答を強く誘導する分、副反応の頻度が高い傾向が見られます。一方で、母子免疫に使うアボリスボはアジュバンド非含有であり、安全性にフォーカスを当てた製剤だといえます。
まとめ
今回はRSウイルスワクチンの特徴について解説しました。開発経緯に注目すると理解が深まると思います。アレックスビーは免疫応答の弱い高齢者がターゲットであり、アジュバンドにより効果を高めた製剤設計です。一方で、母子免疫に使うアボリスボは安全性(アジュバンドなし)を優先しつつ、2価ワクチンとして有効性を担保する戦略をとっています。本記事がRSウイルスワクチンの特徴を理解、整理するためにお役立て頂けたら幸いです!






