リーバクトとアミノレバンENの使い分けは?4つの視点から読み解く

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今回のテーマは

リーバクトアミノレバンENの使い分け!

どちらも肝機能が低下した人の栄養療法に併用されます。

両薬剤はどのように使い分けるのか?

疑問に思い調べたので共有したいと思います。

さっそく見ていきましょう。

目次

リーバクトとアミノレバンENの比較表

違いをざっとまとめる下記です。

製品名リーバクト配合顆粒
リーバクト配合経口ゼリー
アミノレバンEN配合散
規格1包(個)=4.15g1包=50g
エネルギー顆粒=16kcal
ゼリー=17kcal
213kcal
糖質31.5g
たんぱく質4g13.5g
BCAAの含有量4g6.1g
脂質3.7g
リーバクト配合顆粒・経口ゼリー、アミノレバンEN配合散、電子文書より作成

アミノレバンENは肝不全用の経口栄養剤です。糖質、たんぱく質、脂質の3大栄養素に加え、ビタミンやミネラル、電解質も配合されています。一方で、リーバクトはロイシン、イソロイシン、バリンを配合した分岐鎖アミノ酸製剤です。

共通点は

必須アミノ酸BCAAロイシン、イソロイシン、バリン)を含む点!

違いは何か?

上述のように、カロリーや栄養成分ですよね。

実は、以下のように『適応』も異なります。

リーバクト
アミノレバンEN

食事摂取量が十分にもかかわらず②低アルブミン血症を呈する③非代償性肝硬変患者の④低アルブミン血症の改善

肝性脳症を伴う③慢性肝不全患者の④栄養状態の改善

①記載なし

※リーバクト配合顆粒、アミノレバンEN配合散、添付文書より作成

※対応する箇所に番号を振りました

ここがわかりにくいですよね。

適応の違いをまとめると

リーバクトアミノレバンEN
①食事量十分にもかかわらず記載なし
②症状低アルブミン血症肝性脳症
③対象非代償性肝硬変患者慢性肝不全患者
④処方目的低アルブミン血症の改善栄養状態の改善

結局のところ、どう使い分けるのか?ぱっと見てはっきりしないですよね。この部分を順番にクリアにしていきます。

ポイントは4つあります。

  1. 対象者
  2. 症状
  3. 栄養療法
  4. 処方目的

順に見ていきましょう!

リーバクトとアミノレバンEN:対象者の違い

リーバクトとアミノレバンENの対象は?

どちらも非代償性の肝硬変に用います

添付文書によるとリーバクトは非代償性肝硬変患者、アミノレバンENは慢性肝不全患者の記載ですが、ほぼ同じ意味合いと考えてOKだと思います。慢性肝不全の原因の多くは、肝硬変だし、アミノレバンENは国内長期投与試験において非代償性肝硬変患者を対象としているからです。

(効能又は効果)

食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善

リーバクト配合顆粒 添付文書

(効能又は効果)

肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善

(国内長期投与試験)

非代償性肝硬変患者105例を対象に本剤を1日3回6箇月以上投与した試験において

アミノレバンEN配合散 添付文書

代償性と非代償性の違いは?

ここで大事なポイントを確認しておきますね。

肝硬変は病期によって2種類に分かれます。

代償性肝硬変
非代償性肝硬変

①ざっくりいうと、壊された肝細胞が少ないのが代償性です。残された肝細胞が必要な機能を補える状態で、自覚症状はほとんど認められません

一方で、②非代償性肝硬変は浮腫や腹水、黄疸、肝性脳症などの症状を合併します。あまりにも多くの細胞が壊されて、残りの細胞では必要な機能を補いきれない状態だからです。

リーバクトとアミノレバンENは、どちらも非代償性の肝硬変に用います。肝機能低下によりなんらかの症状がある方が対象ですね。

では、症状によって使い分けるのか?次の項目を見ていきましょう。

リーバクトとアミノレバンEN:症状の違い

リーバクトとアミノレバンENは症状によって使い分けるの?

どちらも、低アルブミン血症を呈する患者に使用し、肝性脳症を認める場合にはアミノレバンENを用いるのが基本です

肝硬変診療ガイドライン2015によると、肝不全用経腸栄養剤(アミノレバンEN)と分岐鎖アミノ酸顆粒(リーバクト)は血清アルブミンが3.5g/dL以下で推奨されています。

肝硬変診療ガイドライン2015

添付文書では

アミノレバンENに低アルブミン血症と記載がありませんが、

「(低アルブミン血症を呈し)肝性脳症を伴う」という理解で問題ありません。先述のように対象はほぼ同じなのであえて書いていないだけと考えられます。

(効能又は効果)

食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善

リーバクト配合顆粒 添付文書

(効能又は効果)

肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善

アミノレバンEN配合散 添付文書

ではなぜ、肝性脳症の場合はアミノレバンENなのか?

【エネルギー低栄養】を認めるからです。ガイドラインのフローチャートにあるとおりですね。後述する栄養療法と関係があります。

リーバクトとアミノレバンEN:栄養療法の違い

リーバクトとアミノレバンENは栄養療法によって使い分けるの?

たんぱく質の供給量によって使い分けるのが基本です。

具体的には

たんぱく質の供給が十分…リーバクト配合顆粒
たんぱく質の供給が不足…アミノレバンEN

リーバクトは食事が十分に摂取できていることが条件

(効能又は効果)

食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善

リーバクト配合顆粒 添付文書

リーバクトはたんぱく質の供給が十分な人に使う

アミノ酸組成がBCAAのみであり、たんぱく質の制限(不足)がある人への単独投与は、栄養状態の悪化を招く可能性があるからです。リーバクト投与中は、1日に必要なエネルギーやたんぱく質を食事から摂取しなければなりません。

添付文書にも注意喚起があります

(用法及び用量に関連する注意)

本剤は分岐鎖アミノ酸のみからなる製剤で、本剤のみでは必要アミノ酸の全ては満たすことはできないので、本剤使用時には患者の状態に合わせた必要蛋白量(アミノ酸量)及び熱量(1日蛋白量40g以上、1日熱量1000kcal以上)を食事等により摂取すること。特に蛋白制限を行っている患者に用いる場合には、必要最小限の蛋白量及び熱量を確保しないと本剤の効果は期待できないだけでなく、本剤の長期投与により栄養状態の悪化を招くおそれがあるので注意すること。

リーバクト配合顆粒 添付文書

ここは盲点かも知れません。薬がきちんと飲めていても、食事が摂れていなかったら、効果が望めないし、栄養状態の悪化につながる可能性もあるからです。投与中は食事量の確認も必要ですね。

アミノレバンENはたんぱく質の供給が不十分な人に使う

一方で、アミノレバンENは、たんぱく質制限により食事量が不足する非代償性肝硬変患者に用います。分岐鎖アミノ酸に加えて、エネルギーを補給でき、栄養状態の悪化を軽減できるからです。

ご存知のとおり、【たんぱく質の投与】は肝性脳症を誘発、悪化させる可能性があります。肝硬変ではアミノ酸の代謝産物であるアンモニア(NH3)を処理する尿素回路が機能不全に陥っており、処理しきれないNH3が血中に増えるためですね。

一方、【たんぱく質の制限】は栄養状態の悪化を招きます。肝性脳症を防ごうとたんぱく質の制限を行うと栄養状態がさらに悪くなるからです。ジレンマですね。

肝硬変患者のたんぱく質制限によるジレンマ
  • たんぱく質を投与する肝性脳症の誘発・悪化
  • たんぱく質を制限する栄養状態の悪化
悩ましいところですね…

ここで、アミノレバンENの出番です。糖質、脂質、ビタミン、ミネラルの配合された製剤であり、たんぱく(食事)制限に伴い不足するエネルギーや栄養素を補うことができます。ここがポイント!

食事量が不足する場合には

「リーバクトではなく、アミノレバンENを選択する」と、電子添文にも書いています。

(効能又は効果に関連する注意)

なお、肝性脳症の発現等が原因で食事摂取量不足の場合には熱量及び蛋白質(アミノ酸)を含む薬剤を投与すること。

リーバクト配合顆粒 添付文書

食事量(たんぱく質供給の程度)によって薬剤の選択が変わる点は押さえておきましょう。

リーバクトとアミノレバンEN:処方目的の違い

最後に4つ目のポイント。

アミノレバンENとリーバクトの処方目的は?

同じ非代償性肝硬変に使う薬ですが、処方目的が異なります。

ここまで読めば、もうおわかりですね。

\ 処方目的はこちら /

リーバクト配合顆粒
アミノレバンEN

アミノ酸インバランスの是正

低アルブミン血症の改善

アミノ酸インバランスの是正

肝性脳症の改善

エネルギー補給

栄養状態の改善


リーバクトの処方目的

アミノ酸インバランスの是正による低アルブミン血症の改善

フィッシャー比の改善といいかえることもできます。

フィッシャー比とは、分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acid:BCAA)と芳香族アミノ酸(aromatic amino acid:AAA)の比率です

肝硬変ではフィッシャー比が低下します。AAAに比べてBCAAの割合が少ないアミノ酸インバランスの状態です。

なぜ、BCAAが低下するのか?

というと肝硬変の患者さんでは、BCAAの消費が亢進しているからです。骨格筋でエネルギーの産生、アンモニアの代謝等に利用されています。これは、肝臓の機能を代償するためです。

肝硬変の患者ではNH3はおもに骨格筋で処理されます(代償作用)。グルタミン酸→グルタミンに変換される過程でNH3が代謝。このときにBCAAが利用されます。

BCAAの投与はAlbの産生を促す!

BCAAは肝臓におけるたんぱく質(アルブミン)の合成に欠かせないアミノ酸だからです。リーバクトはアミノ酸インバランスを改善し、Albの生成を促す効果が期待できます。

アミノレバンENの処方目的

アミノ酸インバランスの改善と不足したエネルギーを補い、肝性脳症や栄養状態を改善

これが、処方目的です。アミノレバンENはBCAAだけでなくエネルギーも補給することができます。

栄養状態を維持しつつ、血清アンモニアを低下!

アミノレバンENは、BCAAの補給により骨格筋でのNH3の処理を促進し、肝性脳症を改善する効果が期待できるからです。加えて、エネルギーの補給によりたんぱく質制限(不足)にともなう栄養状態の悪化を防ぐこともできます。

LESにも使える!

Late Evening Snackの略で、夜間就寝前補食のことです。いわゆる夜食ですね。

肝硬変患者は飢餓状態に陥りやすい!

安静時消費エネルギーの増加、グリコーゲンの早期枯渇等により、一晩の間に飢餓状態になります。わずか一夜にして健常者が2〜3日絶食したのと同じ状態になるそうです。

そこで、有効なのがLES!

就寝前に投与して夜間から早朝にかけての飢餓状態を回避するためのものです。こむら返りや起床時の倦怠感なども軽減できます。

LESは炭水化物を主体とした200kcal程度の軽食です。おにぎりやサンドウィッチなどですね。胃に負担がかかりにくものを選択することも大切です。アミノレバンENもLESとして使用することができます。

一般的な食事や補食以外に就寝前のBCAA顆粒製剤肝不全用経腸栄養剤の摂取によって栄養状態の改善が得られる

参考文献)静脈経腸栄養ガイドライン

アミノレバンENはLESに最適!

カロリーに加えてBCAAを強化した栄養剤だからです。一袋で約200kcalを投与できます。

※リーバクトも軽食に併用する形で投与可能です。ただし、単独ではカロリーが不足する点は注意が必要ですね。

まとめ

今回はアミノレバンENとリーバクトについて、使い分けを理解するポイントを解説&考察しました。

本記事のポイント

リーバクトの適応

・食事摂取量が十分にもかかわらず(=たんぱく質の不足がない)低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善(BCAAの補給により

と読み替えることができます。

アミノレバンENの適応

(低アルブミン血症を呈し)肝性脳症(=たんぱく質の制限・不足がある)を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善(BCAA+エネルギーを補給することで

上記のように読み替えるとわかりやすいと思います。

記事を書きながら思ったのは、

栄養知識の必要性。医薬品だけではなく、栄養状態の評価や病態に合わせた栄養療法の知識や考え方が不可欠であると感じました!

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