デエビゴの特徴は?ベルソムラと比較しながら解説します!

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今回のテーマはデエビゴ!

一般名はレンボレキサント、不眠症の治療薬です。

分類は、オレキシン受容体拮抗薬。先に発売されたベルソムラと同じですね。

デエビゴはベルソムラ何が違うのか?

比較しながら特徴を解説します。

目次

デエビゴを理解するためのポイント:ベルソムラと比較

製品名デエビゴベルソムラ
販売日2020年7月2016年12月
一般名レンボレキサントスボレキサント
規格2.5mg・5mg・10mg10mg・15mg・20mg
適応症不眠症不眠症
選択性OX1R<OX2ROX1R>OX2R
禁忌本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
重度の肝機能障害
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシン、ラベプラゾール・アモキシシリン・クラリスロマイシン、リトナビル、ニルマトレルビル・リトナビル、エンシトレルビルを投与中の患者
用法用量通常…5mg
最大…10mg

中程度または強力にCYP3Aを阻害する薬剤と併用
2.5mgへ減量
成人…20mg
高齢者…15mg

CYP3Aの阻害剤と併用
10mgへの減量を考慮
代謝CYP3ACYP3A、P糖蛋白
排泄尿中29.1%(未変化体1%未満)尿中23%(未変化体1%未満)
一包化可能不可
薬価¥52.1/82.7/123.6¥69.3/90.8/109.9
デエビゴ、ベルソムラ電子添文より作成、2024.4月時点の薬価

デエビゴとベルソムラの違いは大きく5つです。

  1. オレキシン受容体への選択性
  2. 薬物相互作用
  3. 肝機能障害患者への投与
  4. 腎障害患者への投与
  5. 一包化の可否

順番に見ていきますね。

オレキシン受容体への選択性

デエビゴとベルソムラでは、オレキシン受容体(OXR)に対する選択性が違います。

選択性:デエビゴとベルソムラの比較

デエビゴ
(nmol/L)
ベルソムラ
(nmol/L)
hOX1R6.1±1.48.8±2.5
hOX2R2.6±0.412.0±2.8
デエビゴ、審議結果報告書より

ヒトオレキシン受容体に対するIC50値は上記のとおりです。

IC50値は低いほど親和性が高いことを示しています

デエビゴ…OX1R<OX2R
・ベルソムラ…OX1R>OX2R

こんな感じですね。デエビゴはOX2Rに選択性が高いのが1つ目の特徴です。

じゃあ、何が良いのか?

OX1RとOX2Rは機能が異なる

OX2Rの方が睡眠覚醒と関わりが深い

OX1Rを欠損したマウスでは睡眠異常が見られないのに対してOX2Rを欠損したマウスではナルコレプシー様症状を呈することが遺伝子を用いた研究で明らかになっているからです。現在、OX2Rのアゴニストがナルコレプシーの治療薬として開発が進められています。

低分子オレキシン受容体アゴニストの創製

であれば、デエビゴの方がよく効くのでは?

と思ったのですが、そうでもないみたいです。生理的には両方のレセプターを阻害して睡眠作用が得られるからです。デエビゴはOX1RとOX2Rの両方を阻害する不眠症治療薬、いわゆるDORA(dual orexin receptor antagonist)として開発されました。(デエビゴ、製品概要参照)

ということで、

デエビゴの位置付けはベルソムラと同じと考えられます。

今後は新しいエビデンスが出て、「デエビゴの方が睡眠効果が強い」ってなる可能性もありますが、承認時にはベルソムラと直接比較した臨床試験はありません。

薬物相互作用

デエビゴとベルソムラは、薬物相互作用に違いがあります。

薬物相互作用:デエビゴとベルソムラの比較

デエビゴベルソムラ
禁忌イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシン、ラベプラゾール・アモキシシリン・クラリスロマイシン、リトナビル、ニルマトレルビル・リトナビル、エンシトレルビル
注意
(阻害剤)
イトラコナゾール
クラリスロマイシン
エリスロマイシン
フルコナゾール
ベラパミル
ジルチアゼム
ベラパミル
フルコナゾール等
ジゴキシン(P-GP)
注意
(誘導剤)
リファンピシン
フェニトイン等
リファンピシン
カルバマゼピン
フェニトイン等
デエビゴ錠、ベルソムラ錠 電子添文

デエビゴとベルソムラについて、主な併用禁忌と注意薬を抜き出すと上記のとおりです。

デエビゴは併用禁忌がない!

デエビゴ…併用禁忌なし
・ベルソムラ…併用禁忌あり

ベルソムラよりも使いやすくなりました。ここがメーカーの売りですね。

地味に嬉しいのが

クラリスロマイシンと併用禁忌ではない点です。ベルソムラ投与中に処方されることは珍しくなかったので。危うく見逃しそうなった場面はみんな経験あるのではないでしょうか。デエビゴならピロリ菌の一次除菌療法とも併用できます。

ただし、油断は禁物!

併用注意の場合には慎重投与であり、減量基準も設定されているからです。併用する場合、デエビゴは1回2.5mgへ減量する必要があります。

CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で、本剤投与の可否を判断すること。なお、併用する場合は1日1回2.5mgとすること。

デエビゴ錠、電子添文

ちなみに、

ベルソムラも注意薬と併用する場合には10mgへ減量を考慮します。

CYP3Aを阻害する薬剤 (ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等) との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、これらの薬剤を併用する場合は1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。

ベルソムラ錠、電子添文

どちらの薬剤も併用薬のチェック、投与量の確認が必須ですね。

肝機能障害患者への投与

デエビゴベルソムラ
禁忌重度の肝機能障害
慎重投与軽度および中等度重度の肝機能障害
薬物動態Child-Pugh分類A(軽度)とB(中等度)では、それぞれAUCが25%、54%上昇Child-Pugh分類B(中等度)では
AUCが3%上昇
各製剤の電子添文、インタビューフォーム

デエビゴとベルソムラは、肝機能障害のある患者さんへの対応が異なります。

中等度の肝機能障害のある人

にはデエビゴは慎重投与です。以下のように最大投与量に制限があります。

中等度肝機能障害患者では、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇するため、1日1回5mgを超えないこととし、慎重に投与すること。

デエビゴ、電子添文

一方、重度の肝機能障害患者では禁忌

薬物動態の検討はなく、AUC増加による副作用の恐れがあるためです。

禁忌
重度の肝機能障害のある患者

デエビゴ錠 電子添文

ちなみに、ベルソムラは、重度の肝機能障害の方に慎重投与ですが、特に減量基準は設けられておりません。

肝機能障害のある人では、ベルソムラの方が使いやすいですね。デエビゴは、投与の可否、投与量のチェックが欠かせません。

腎障害患者への投与

デエビゴベルソムラ
禁忌
慎重投与重度の腎機能障害
薬物動態eGFR15〜29mL/min/1.73m2の人ではAUCが50%増加CLcr30mL/min/1.73m2以下ではAUCが22%増加
各製剤の電子添文、インタビューフォーム

デエビゴとベルソムラは、腎機能障害のある患者さんへの対応が異なります。

重度腎機能障害のある方

にはデエビゴは慎重投与です。血中濃度上昇により副作用の発現リスクが高くなるからです。eGFR30m未満(mL/min/1.73m2)の場合、通常用量5mg(又は減量用量2.5mg)から開始し、安全性を見ながら投与量を調節していくかたちになります。

参考までに:代謝物活性の有無

デエビゴは代謝物に活性があります。

尿中回収率が29.1%(未変化体が1%未満)と低いものの、排泄遅延により薬効が強く現れることが懸念されます。

一方で、ベルソムラは代謝物に活性がありません。尿中回収率が23%(未変化体1%未満)でデエビゴとほとんど変わりませんが、血中濃度上昇による副作用の可能性は低いと考えられます。

代謝物に活性があるかどうか。両薬剤の違いを理解するために大切な視点だと思います。

一包化の可否

デエビゴベルソムラ
安定性試験
(無包装)
40℃/75%RH
…12ヶ月間変化なし
30℃/75%RH
…1日後からコーティング層ひび割れ
保存期間の増加につれ溶出速度低下
光安定性試験
(無包装)
変化なし溶出速度の増加
崩壊時間の短縮
硬度の低下及び退色
各製剤のインタビューフォーム

デエビゴとベルソムラは製剤の安定性に違いがあります。

一包化の可否は以下のとおりです

・デエビゴは一包化OK
・ベルソムラは一包化不可

デエビゴは吸湿性に問題なく一包化できます(メーカー確認)。ここは嬉しいですね。

ベルソムラは光と湿度の影響を受けやすい

そのため一包化できません。メーカーの見解は以下のとおりです。

分包、一包化はできますか?

本剤を分包または他剤と一包化した際の安定性について検討していませんので、おすすめしていません。 PTPのままお渡しいただき、服用直前にPTPから取り出していただきますようお願いします。 有効成分であるスボレキサントは水に溶けにくいため、製剤に工夫がされています。そのためベルソムラ®は、無包装状態での安定性試験において、光、湿度の影響を受けやすいことが確認されており、両面アルミ包装としています。

ベルソムラ 製品基本Q&Aより

介護者の負担が軽減!服薬コンプライアンスも向上?

デエビゴは配薬準備が楽になります。ベルソムラを空袋や手作りの紙にホッチキスどめするのは大変だったからです。介護施設、病院等で管理する手間が解消されます。

また、指先が不自由な患者さんにもメリットが大きいです。一包化で対応できるので、アルミのシートから苦労して取り出すことからも解放されます。

デエビゴの有効性と臨床における位置付け

デエビゴの有効性

デエビゴの効果はどうなのか?簡単に概要を確認しておきます。

SUNRISE2試験

日本人が含まれる試験です。

SUNRISE2試験

  • 対象…18歳以上の不眠症患者949名(日本人161名)
  • 方法…デエビゴ5mgまたは10mgを投与
  • 比較…プラセボ
  • 主要評価項目…投与6ヶ月時点の睡眠潜時(就寝から入眠までの時間)のベースラインからの変化量(中央値,min)

結果は以下のとおり

  • デエビゴ5mg:-21.81
  • デエビゴ10mg:-28.21
  • プラセボ:-11.43

デエビゴはプラセボと比較して、入眠までの時間が有意に改善しました。

デエビゴ群におけるベースラインの中央値は53〜55分程度でした。ざっくりいうと、入眠するまでに1時間近くかかっていたのが、半分くらいに短縮されるイメージですね。

また、睡眠効率(就床時間に対する全睡眠時間)と中途覚醒時間についてもプラセボよりも有意に改善しました。寝つきを良くするだけでなく、睡眠を維持する効果も示されたわけですね。

SUNRISE2試験は睡眠日誌を用いて患者さんの主観で評価したものです。一方で、睡眠ポリグラフ検査(PSG)を用いて客観的に評価したSUNRISE1試験があります。

SUNRISE1試験

こちらの試験は日本人が含まれません。

SUNRISE1試験

  • 対象…55歳以上の不眠症患者1,006例(日本人含まない)
  • 方法…デエビゴ5mgまたは10mgを投与
  • 比較…プラセボ、ゾルピデムER
  • 主要評価項目…睡眠潜時(LPS)のベースラインからの変化量(中央値,min)※プラセボと比較
  • 副次評価項目…LPSのベースラインからの変化量(中央値,min)※ゾルピデムと比較

結果は以下のとおり

  • デエビゴ5mg:-12.00
  • デエビゴ10mg:-16.25
  • プラセボ:-6.63
  • ゾルピデム:-2.88

デエビゴはプラセボ、ゾルピデムERと比較して、入眠までの時間が有意に改善しました。

※ゾルピデムERは徐放製剤で国内では未承認、用量は6.25mgです

PSGを用いた客観的評価においても、デエビゴはプラセボ、ゾルピデムと比較して入眠までの期間が有意に短縮されました。中途覚醒時間と睡眠効率も同様の結果でした。

個人的にはゾルピデムよりも優れている点に驚きました。従来の睡眠薬より効果が高いとは思ってもいなかったからです。もちろん国内のゾルピデムとは違うし、日本人が含まれていないけど、効きが良さそうな印象を持ちました。

臨床における位置付け

睡眠薬は大きく以下の4つのグループに分類されます。

  1. ベンゾジアゼピン系
  2. 非ベンゾジアゼピン系
  3. メラトニン受容体作動薬
  4. オレキシン受容体拮抗薬

ベンゾジアゼピン系

従来からある睡眠薬!

脳内のベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作用しGABAの働きを強め、睡眠効果を発揮します。催眠作用だけでなく、抗不安や筋弛緩、抗けいれん作用を併せ持つのが特徴です。

依存症や認知機能低下、ふらつきによる転倒等が問題となりやすく、高齢者では可能な限り使用を控えるべきとされています。(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン1))

非ベンゾジアゼピン系はBZDよりも副作用が少なめ!

BZDよりも副作用が少なめ!

非ベンゾジアゼピン系はBZDよりも安全性が高く、高齢者において選択される睡眠薬です。短時間型のゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンなどがあります。

非BZDは依存性が形成されにくく、翌朝の眠気やふらつきも起こりにくいのが特徴です。

一方で、記憶障害や半跳性不眠等の問題もあります。漫然と投与すべきではなく、少量投与、短期間投与が基本になります1)

メラトニン受容体作動薬

安全性の高さが魅力!

メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)は体内時計を正常化し睡眠効果を発揮します。BZD・非BZDと違って、自然な眠りを促す睡眠薬ですね。

睡眠のリズムに異常が見られるケースでは第一選択です。安全性が高いので、高齢者や基礎疾患がある人では使いやすいですね。

ただし、入眠障害に対する効果は期待しにくく、効果が発現するまでに2〜4週間程度かかるといわれています。

オレキシン受容体拮抗薬の位置づけは?

効果については、下記のイメージでしょうか。

BZD>非BZD>オレキシン受容体拮抗薬>メラトニン受容体作動薬

BZD・非BZDよりも安全性が高く、ラメルテオンよりも効果発現が早いのが特徴です。最近では高齢者に使われるケースが増えています。

今回登場したデエビゴはベルソムラよりも使いやすくなった!

個人的には期待しています。上述したように、併用禁忌がなくなり、一包化もできるようになったからです。BZD・非BZDから移行できるケースが増えたらいいなと思っています。

あとはベルソムラと比べて効果がどうかが気になるところ、今後のエビデンスに注目ですね。

まとめ

デエビゴを理解するためのポイントは以下のとおりです。

  1. オレキシン2受容体への選択性が高い
  2. 併用禁忌がない
  3. 重度の肝機能障害患者に禁忌
  4. 重度の腎機能障害患者に慎重投与
  5. 一包化できる

今回はオレキシン受容体拮抗薬デエビゴについて、ベルソムラと比較しながら特徴を解説しました。睡眠薬の適正使用にお役立ていただけたらうれしいです^ ^

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