ペニシリンとセフェム系の抗菌スペクトルを理解する【世代ごとにわかりやすく解説】

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「抗菌薬のスペクトルを勉強するなら、まずはペニシリンとセフェムから!」

みんなそう思います。おそらくはじめに学習するのがこの部分ですよね。

でも、単に覚える(=暗記する)だけだとマズイです。実際に使える知識にならないばかりか、しばらくするときっと忘れます…。

じゃあ、どうすればいいのか?

答えは簡単!

世代ごとのスペクトル体系的に理解することです

今回はペニシリンとセフェム系について、抗菌スペクトルを理解するためのポイントをわかりやすく解説します。

読み終えたあとには、抗菌薬の選択やコンサルテーションが自信をもってできるようになっているはずです^_^

目次

抗菌スペクトルを理解するための基本知識

抗菌スペクトルを説明する前に、前提となる知識をサラッと確認です。大きく2つあります。

  1. 抗菌薬の略号(覚えておくと便利)
  2. 代表的な細菌名(絶対必要)

抗菌薬の略号

たとえば、CEZやPIPCとかですね。

CEZはセファゾリン、PIPCはピペラシリンを意味します。

抗菌薬の略号はどのくらいあるのか?

調べてみると全部で90種類以上はありました。内服薬と外用剤、注射薬も合わせてです。(JAID/JSC感染症治療ガイド2023からカウント)

略号は抗菌スペクトルを勉強するうえで必須ではありませんが、一般名と一緒に覚えることをお勧めします。教科書はもちろん臨床においても、頻繁に登場するからです。

カルテや細菌の培養結果表(検出菌に対する抗菌薬の感受性を調べたもの)にはきまって略号が記載されています。一般名や商品名はほとんど出てきません。

また、抗菌薬の略号は医師からもよく聞かれます。

医師

(細菌培養結果表を見ながら)CFPMとCPFXは何だっけ?

という感じに。

覚えてないと略号を一般名→商品名へ変換するのに、いちいち書籍やインターネットで調べなければなりません。時間がもったいないし手間もかかるので、覚えておいた方が日常業務がスムーズです。

あとから紹介するスペクトル表は略号で表記しているので、これを機に代表的なものから順に暗記しておいた方が良いと思います。

代表的な細菌名

代表的な細菌名はかならず覚える

抗菌スペクトルを理解するために必須の知識だからです。細菌名はもちろん、それぞれの特徴も押さえておきましょう。

感染症の原因となるおもな細菌は大きく2種類です。

・グラム陽性球菌
・グラム陰性桿菌

グラム染色で青く染まるのが陽性菌赤く染まるのが陰性菌です。

見た目の形状で、丸い球菌と四角い桿菌(かんきん)に区別します。

グラム陽性球菌

覚えておきたい細菌名は以下のとおりです。

  1. 連鎖球菌
  2. 腸球菌
  3. 黄色ブドウ球菌

連鎖球菌は、肺炎を起こす肺炎球菌や咽頭炎の原因となる溶連菌が有名です。腸球菌は大きく抗菌薬が効きやすいフェカーリスと効きにくいフェシウムに分かれます。黄色ブドウ球菌は皮膚粘膜組織感染症の原因になるグラム陽性球菌の代表ですね。

グラム陽性球菌は上記3つのグループを押さえておきましょう。

グラム陰性桿菌

代表的なものは下記です。

  • P…プロテウス
  • E…大腸菌、Escherichia coli
  • K…クレブシエラ
  • H…インフルエンザ菌、Haemophilus influenzae
  • M…モラクセラ.カタラーリス
  • S…セラチア
  • P…緑膿菌、Pseudomonas aeruginosa
  • A…アシネトバクター
  • C…シトロバクター
  • E…エンテロバクター

グラム陰性桿菌は、大きく3グループに分けるとわかりやすいです。

  1. 腸内細菌のPEK(ペック)
  2. 上気道感染の起炎菌であるHM(ハム)
  3. 院内感染で問題となるSPACE(スペース)

ほかにも、たくさんあるけど最低限押さえておきたい細菌をピックアップしました。これらをベースに少しずつ知識を増やしていきましょう。

ここからが本題。抗菌スペクトルを見ていきます。

ペニシリン系の種類と抗菌スペクトル

代表的なペニシリン系薬

ペニシリンといっても、いくつかの種類があります。

略号成分名商品名
PCGベンジルペニシリン
(ペニシリンG)
ペニシリンGカリウム(注射)
ステルイズ水性懸濁(注射)
ABPCアンピシリンビクシリン(注射、内服)
AMPCアモキシシリンサワシリン(内服)
CVA /AMPCクラブラン酸/アモキシシリンオーグメンチン(内服)
SBTPCスルタミシリンユナシン(内服)
SBT/ABPCスルバクタム/アンピシリンユナシンS(注射)
PIPCピペラシリンペントシリン(注射)
TAZ/PIPCタゾバクタム/ピペラシリンゾシン(注射)

βラクタマーゼ阻害剤入りが4種類あります。

  • CVA /AMPC
  • SBT/ABPC
  • SBTPC
  • TAZ/PIPC

クラブラン酸とスルバクタム、タゾバクタムは、なぜ配合されているのか?

抗菌スペクトルを拡大するためです。細菌が産生するβラクタマーゼ(ペニシリン系やセフェム系を分解する酵素)を阻害します。

SBTPCはスルバクタムとアンピシリンをエステル結合した化合物で、腸管で効率的に吸収される製剤です。生体内ではSBTとABPCに分かれ作用を発揮します。

ペニシリン系のスペクトル表

代表的なものをざっくりまとめると、以下のようになります。

ペニシリン系薬:抗菌スペクトル

スクロールできます
腸球菌連鎖球菌ブドウ球菌PEKHMSCEPA嫌気性菌
PCG
ABPC
AMPC
SBT/ABPC
CVA /AMPC
SBTPC
PIPC
TAZ/PIPC

ここからは、ペニシリン系を理解するためのポイントを見ていきましょう。

ペニシリン系を理解するためのポイント

大きく3つあります。

  1. 製剤の改良により抗菌スペクトルが拡大!
  2. 基本的に、黄色ブドウ球菌には効かない!
  3. 緑膿菌に活性を示すペニシリン系薬とは?

製剤の改良により、抗菌スペクトルが拡大…①

PCG→ABPC→PIPCの順にスペクトルが広がります

PCGのスペクトルは

連鎖球菌と腸球菌(フェシウムを除く)です。連鎖球菌や腸球菌による感染症に使用されます。

実は採用している施設はそれほど多くありません。半減期が短く1日6回投与であること、Kの含有量が多く腎機能や心機能に対する影響が懸念されるからです。使い勝手がよくないのがデメリットですね。

狭域スペクトルなので抗菌薬の適正使用の観点からは、もっと積極的に使うべきなのですが…。

ステルイズ水性懸濁はベンジルペニシリンとベンザチンの化合物です。梅毒(神経梅毒を除く)の治療に用います。溶解性が低く、筋注部位から緩やかに溶け出し持続的に作用する製剤です。

ABPCのスペクトルは

PCGのスペクトルに加えて、P(プロテウス)、E(大腸菌)、H(インフルエンザ菌)までカバーできる半合成ペニシリンです。ペニシナーゼを産生するK(クレブシエラ)とM(モラクセラカタラーリス)には通常効きません。

PCGと同様に連鎖球菌や腸球菌による感染症に有用です。感受性が有ればP、E、Hをターゲットに使うこともできます。スペクトルが類似したAMPC(アモキシシリン)は経口剤です。

PIPCは広域ペニシリン

ペニシリナーゼに対する安定性が増し、ABPCに加えてさらにグラム陰性桿菌のスペクトルが拡大しました。PEKに加えてHMSPACEまで。ただし、グラム陰性桿菌は耐性化がすすんでいるので、感受性を確認後、使用するのが基本です。

とくに緑膿菌をターゲットに使用することが多いですね(後述します)

SBT/ABPCとTAZ/PIPCは

単剤に比べてさらにスペクトルが広くなりました。βラクタマーゼ阻害剤(BLi)を配合することでカバーできる細菌は下記です。

  • 黄色ブドウ球菌(ペニシリナーゼ産生:MSSA)
  • クレブシエラ
  • インフルエンザ菌(βラクタマーゼ産生:BLPAR)
  • モラクセラ・カタラーリス
  • 嫌気性菌……など

配合剤のスペクトルは?

「ABPC(AMPC、PIPC)単独+BLiによる追加分」と理解します。

ペニシリンは製剤改良により一部のグラム陽性球菌のみであったスペクトルがグラム陰性桿菌に拡大。さらにSBTやTAZ等を加えるとペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)を産生する細菌までカバーできます

基本的に、黄色ブドウ球菌には効かない…②

PCGとABPC、PIPCは通常、黄色ブドウ球菌には無効です

ペニシリナーゼにより分解されて抗菌活性を失うからです。昔は黄色ブドウ球菌にも抗菌活性を示しましたが、最近ではペニシリナーゼ産生の黄色ブドウ球菌が増えており、基本的に効かないという理解で良いと思います。

ペニシリンが黄色ブドウ球菌に効くと誤解されている人は少なくありません。注意です!

黄色ブドウ球菌に効くペニシリンは

ペニシリナーゼを阻害するSBTやCVA、TAZが配合されたSBT/ABPC、SBTPC、CVA/AMPC、TAZ/PIPCのみです。

ただし、MRSAには効きません。すべてのペニシリン製剤が無効化されます。耐性機序がペニシリン結合タンパクの変化だからです。ここはバンコマイシンの出番ですね。

黄色ブドウ球菌の耐性度とペニシリンの感受性
  • ペニシリナーゼ非産生→PCG、ABPC(AMPC)、PIPCも効く
  • ペニシリナーゼ産生(MSSA)→SBT/ABPC、SBTPC、CVA/AMPC、TAZ/PIPCが効く
  • ペニシリン結合タンパク変異(MRSA)→すべて無効(VCMが効く)

3種類に分けて理解しておきましょう。

緑膿菌に活性を示すペニシリン系薬は?…③

緑膿菌に効果があるペニシリンは2種類あります。

  • PIPC
  • TAZ/PIPC

先述のように、PIPCは緑膿菌感染症に対する第一選択薬です。抗緑膿菌用ペニシリンと呼ばれます。

では、PIPCとPIPC/TAZの使い分けは?

PIPCは緑膿菌単独の感染症に有用です。一方で、TAZ/PIPCはβラクタマーゼを産生するグラム陰性桿菌や嫌気性菌による混合感染が疑われる場合に、良い適応だと考えられます。

ここまでが、ペニシリンについて。次はセフェム系を見ていきましょう

セフェム系の種類と抗菌スペクトル

代表的なセフェム系薬

世代ごとに以下のとおりです。(注射薬のみ)

略号世代成分名商品名
CEZ1セファゾリンセファメジンα(注射)
CTM2セフォチアムパンスポリン(注射)
CMZセフメタゾールセフメタゾン(注射)
FMOXフロモキセフフルマリン(注射)
LMOXラタモキセフシオマリン(注射)
CTRX3セフトリアキソンロセフィン(注射)
CTXセフォタキシムクラフォラン(注射)
セフォタックス(注射)
SBT/CPZスルバクタム/セフォペラゾンスルペラゾン(注射)
CAZセフタジジムセフタジジム(注射)
CFPM4セフェピムセフェピム(注射)
CPRセフピロムブロアクト(注射)
CZOPセフォゾプランファーストシン(注射)
TAZ/CTLZタゾバクタム/セフトロザンザバクサ(注射)

セフェム系のスペクトル表

ざっくり以下のようになります。

セフェム系薬:抗菌スペクトル

スクロールできます
世代腸球菌連鎖球菌ブドウ球菌PEKHMSCEPA嫌気性菌
CEZ1
CTM2
CMZ2
CTRX3
CPZ/SBT
CAZ
CFPM4

ここからは、セフェム系の特徴を理解するためのポイントを説明します。

セフェム系を理解するためのポイント

下記の5つです。

  1. 世代が新しくなると、グラム陰性桿菌に強くなる
  2. セフェム系が苦手とするのは?
  3. 嫌気性菌にも効くセフェム
  4. CTMとCMZの違い
  5. CTRXとCAZの違い

世代が新しくなると、グラム陰性桿菌に強くなる…①

CEZ→CTM→CTRX→CFPMの順にグラム陰性桿菌のカバーが広がります

ペニシリンとよく似ていますね。

第一世代セフェム:CEZのスペクトルは

黄色ブドウ球菌、連鎖球菌に加えて、PEKまで効きます。CEZといえば、黄色ブドウ球菌感染症の第一選択薬です。手術時の予防抗菌薬として有名ですね。感受性が確認されたらPEKへの使用も可です。

第二世代セフェム:CTMのスペクトルは

CEZに加えてHMまでスペクトルが拡大しました。βラクタマーゼに対する安定性が増したためです。BLNAR(βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性)を除くインフルエンザ菌やモラクセラが起炎菌となる上気道感染症に対して選択されます。

第三世代セフェム:CTRX、CTXのスペクトルは

CTMに比べてさらにグラム陰性桿菌のスペクトルが拡大しました(SCEまで)。市中肺炎や尿路感染等にエンピリックに使われることが多いです。BLNARにも効きます。

インフルエンザ菌の耐性度と薬剤の選択
  • βラクタマーゼ非産生→ABPC
  • βラクタマーゼ産生(BLPAR)→CTM、SBT/ABPC
  • βラクタマーゼ非産生耐性菌(BLNAR)→CTRX、CTX

さらに、第三世代セフェムは、髄液移行性が良いのが特徴!髄膜炎にも使える薬剤です。

第一世代のCEZ、第二世代CTMなどは髄液移行性が悪く、髄膜炎に使用できません

第四世代セフェム:CFPMのスペクトルは

CTRXに加えて院内感染で問題となるSPACE等の陰性桿菌にまで抗菌活性を示します。発熱性好中球減少症に対するエンピリック治療の第一選択薬です。CPZ、CZOPも同様のスペクトルを有します。

セフェム系は世代が新しくなるにつれて、グラム陰性桿菌へのスペクトルが拡大。それに伴いグラム陽性球菌の活性が弱まる傾向あり。例外的に、第四世代セフェムはグラム陽性球菌にも安定した抗菌活性が期待できます。

セフェム系が苦手とするのは?…②

大きく3種類です

  • MRSA
  • 腸球菌
  • 嫌気性菌

セフェム系薬はMRSAに無効です。腸球菌は世代に関係なく、効きません(ペニシリンは腸球菌に効く)。嫌気性菌も苦手です。活性はあっても弱く使用できません。

MRSAが起炎菌ならVCM、腸球菌ならPCGまたはABPC、嫌気性菌ならMNZ(メトトニダゾール)、CLDM(クリンダマイシン)などを選択します。

嫌気性菌にも効くセフェムは?…③

例外的に、4種類です

  • CMZ
  • LMOX
  • FMOX
  • SBT/CPZ

CMZは後で説明します。

第三世代のSBT/CPZはβラクタマーゼ阻害剤を配合しているので、嫌気性菌に活性があります。胆汁移行性であり、胆管炎や胆嚢炎などで使用されることが多く、腎機能の悪い人でも減量の必要はありません。

LMOXとFMOXはオキサセフェム系の抗菌薬です。構造上βラクタマーゼに安定であり、嫌気性菌にも活性を示します。

CTMとCMZの違い…④

同じ2世代に属するCTMとCMZ。

違いは嫌気性菌のスペクトルがあるかどうか

CTMは嫌気性菌に効きません。一方で、セファマイシン系抗菌薬のCMZは、βラクタマーゼに安定であり、嫌気性菌にも活性を示します。

ただし、最近ではバクテロイデスの耐性化が進んでおり、CMZの感受性は低下傾向です。それからもう一つ。CTMに比べてグラム陽性球菌の活性がやや落ちています

第二世代のCMZはCTMのスペクトルに加えて、嫌気性菌をカバーているので、胆嚢炎や憩室炎、骨盤内炎症性疾患など、または大腸がんなど腹腔内手術の予防抗菌薬としても使用されます。

CTRXとCAZの違い…⑤

同じ第三世代に属するCTRX(CTX)とCAZ。

大きく違うのは緑膿菌活性があるかどうか

CTRX(CTX)は緑膿菌に効きません。(ときどき誤解されている人もいますが…)一方で、第三世代のCAZは緑膿菌感染症の第一選択です。ペニシリン系のPIPCと同じ位置付けですね。

ただし、第三世代のCAZはグラム陽性球菌に対する抗菌活性が低く、グラム陽性球菌のスペクトルを犠牲に緑膿菌活性を獲得したという理解です。

2019年6月に発売されたTAZ/CTLZ(ザバクサ)のスペクトルは、別記事でまとめています。合わせてご覧いただけたら幸いです

抗菌スペクトルの理解が役立つ2つの場面

適切な抗菌薬が選択できるようになる

抗菌薬を選択するときの流れは下記です。

STEP
感染臓器を特定する
STEP
起炎菌を推定する
STEP
感受性がある最適な抗菌薬を選択する

これが、基本的な考え方になります。

具体的に見てみましょう

STEP
感染臓器を特定する

→たとえば、肺炎だとわかりました

STEP
起炎菌を推定する

→年齢や基礎疾患から○○菌の可能性を疑うことに

STEP
感受性がある最適な抗菌薬を選択する

ここで、抗菌スペクトルの知識が問われます

・たとえば、肺炎球菌ならPCGやABPC

・もし、クレブシエラやインフルエンザ菌の可能性もあるなら、SBT/ABPCまたはCTRX

・仮に嚥下機能が悪く、誤嚥性肺炎を疑うなら嫌気性菌をカバーしたSBT/ABPC。

・TAZ/PIPCは耐性菌の関与が強いときに選択します

おおよそのスペクトルが理解できていれば、適切な抗菌薬がパッと頭に浮かびます。その中からスペクトルが狭い最適な抗菌薬を選べばよいだけです。

スペクトルだけで抗菌薬を選ぶのはダメ!

移行性や安全性なども考えないといけないからです。たとえば、CTMは髄液移行性が悪いので、CTRXの方がよいとかですね。

でも、抗菌スペクトルの理解なしに、適切な抗菌薬を選ぶのはほぼ不可能だし、移行性とかは後からついてくる知識です。まずは抗菌スペクトルだと思います。

抗菌スペクトルの理解は、最適な抗菌薬を選択するためのベースになる部分。まさに、基本中のキホンです。医師から質問されることも多いので日常的に活用できます。

抗菌薬が無効時に、次の選択肢が絞り込める

「抗菌薬が効かない?」ときに使える知識です。

抗菌薬の効果が不十分な理由はいくつかあります。

  • そもそも、細菌感染症ではない
  • 治療していた臓器と違う場所の感染症を合併した
  • 投与量が不足している
  • 投与方法が不適切である
  • 移行性の問題
  • 薬剤熱の可能性……など、他にもあるかも。

この中に、抗菌スペクトルがはずれている可能性があります。まず疑うべき理由ですね。

一番やってはいけないのは、

アセスメントせずにやみくもに抗菌スペクトルを広げることです

たとえばCTRXから、TAZ/PIPCやニューキノロン系、カルバペネムなどへ変更するなど、抗菌薬が効かない要因を整理せずに、とっさに広域スペクトルの抗菌薬に手を伸ばしてしまうこと。

これは良くありません!感染症の原則を外れすぎだし、なによりも耐性菌発現のリスクがあります。

正しくは、今カバーできている細菌とそうでない細菌名の区別を行うべきです。

現時点でカバーできているのは、○○菌と△△菌………。逆に外しているのは□□菌と◇◇菌……。次に選択する抗菌薬はコレがいいかな?

という感じに。抗菌スペクトルの理解はここで、役立ちます。次に選ぶべき抗菌薬が何かを教えてくれるからです。

抗菌薬が効かなかったときに、次の適切な選択肢を用意してくれるのは、抗菌スペクトルの知識です。抗菌薬のコンサルテーションはもちろん、薬剤耐性菌対策にも活用できるので、ぜひ身につけておきたいですね。

まとめ

ポイントは以下のとおりです。

  • ペニシリン系
    ・一部のグラム陽性球菌に特化したPCG、製剤の改良によりABPC→PIPCとグラム陰性桿菌までスペクトルが拡大
    ・βラクタマーゼ阻害剤配合により、黄色ブドウ球菌やインフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性菌なども射程範囲に(SBT/ABPC、TAZ/PIPC)
  • セフェム系
    ・世代が新しくなるにつれて、グラム陰性桿菌のスペクトルが拡大。CEZ(PEK)→CTM(CEZ +HM)→CTRX(CTM+SCE)→CFPM(CTRX+PA)
    ・セファマイシン系CMZ、オキサセフェム系LMOX、FMOX、βラクタマーゼ阻害剤配合のCPZ/SBTは嫌気性菌にも効く
    ・CAZは抗緑膿菌用の第三世代セフェム系薬
  • 抗菌スペクトルの知識を活用できる場面
    ・抗菌薬を選択
    ・抗菌薬無効時の代替薬を検討

今回は、抗菌スペクトルをテーマに、ペニシリン系とセフェム系について世代ごとの特徴を解説しました。抗菌薬の選択や抗菌薬のコンサルテーションに活用していただけたらうれしいです♪

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