今日から業務で使える!非定型抗精神病薬11種の要点まとめ

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今回のテーマは非定型抗精神病薬!国内で使用できる成分は11種類もあります。本記事では新人薬剤師の方が処方監査や服薬指導などにおいて実践的に活用できるよう、各種薬剤の特徴、使い分け、注意点等をまとめたので共有します。

目次

非定型抗精神病薬の比較表

国内で使用可能な非定型抗精神病薬(経口薬)は全部で11種類です。スマートフォン等の画面幅が狭い場合は、表を横にスクロールしてご覧ください。

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一般名リスペリドンクエチアピンペロスピロンオランザピンアリピプラゾールブロナンセリンクロザピンパリペリドンアセナピンブレクスピプラゾールルラシドン
商品名リスパダールセロクエルルーランジプレキサエビリファイロナセンクロザリルインヴェガシクレストレキサルティラツーダ
販売年月日1996年6月2001年2月2001年2月2001年6月2006年6月2008年4月2009年7月2011年1月2016年5月2018年4月2020年6月
剤型・規格
1,2,3mg
OD錠2
0.5,1,2mg細粒
1%
内用液1mg/mL
12.5,25,100,200mg
細粒
50%
4,8,16mg2.5,5,10mg
細粒
1%
ザイディス錠
2.5,5,10mg
1,3,6,12mg
OD錠3,6,12,24mg

1%
内用液0.1%

2,4,8mg

2%
テープ20,30,40mg

25,100mg

3,6,9mg
舌下錠5,10mgOD錠0.5,1,2mg20,40,60,80mg
作用機序SDAMARTASDAMARTADSSSDAMARTASDAMARTASDAMSDA
適応症統合失調症、小児期の自閉スペクトラム症の易刺激性統合失調症統合失調症統合失調症、双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)統合失調症、双極性障害における躁症状の改善、うつ病・うつ状態、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性統合失調症
※小児12歳以上も適応
治療抵抗性統合失調症統合失調症統合失調症統合失調症、うつ病・うつ状態、アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動統合失調症、双極性障害におけるうつ症状の改善
用法用量(統合失調症の場合)初回
1回1mg ・1日2回
維持量
1日2〜6mg
最大
1日12mg
初回
1回25mg・1日2〜3回
維持量
1日150〜600mg
最大
1日750mg
初回
1回4mg ・1日3回
維持量
1日12〜48mg
最大
1日48mg
初回
1回5〜10mg・1日1回
c
1日10mg 最大
1日20mg
初回
1日6〜12mg
維持量
1日6〜24mg
分1〜2
最大
1日30mg
初回
1回4mg・1日2回
維持量
1日8〜16mg
最大
1日24mg
※成人
初日
12.5mg
漸増していく
維持量
1日200〜400mg
最大
1日600mg
初回
1日1回6mg
維持量
1日6〜12mg
最大
1日12mg
初回
1回5mg・1日2回
維持量
1回5mg 1日2回 
最大
1回10mg 1日2回
初回
1回1mg・1日1回
維持量
1日2mg
最大
1日2mg
初回
1回40mg・1日1回
維持量
1日40〜80mg
最大
1日80mg
食事の影響なしなし食後投与なしなし食後投与なし食後投与なしなし食後投与
禁忌共通共通+糖尿病またはその既往歴共通共通+糖尿病またはその既往歴3共通共通+CYP3A4阻害薬(強い)投与中多数あり(電子添文参照)共通+中等度以上の腎機能障害共通+重度肝機能障害共通共通+CYP3A4強阻害薬、CYP3A4誘導薬投与中
腎機能障害AUC増加
半減期延長
規定なし動物モデルで血中濃度増加規定なし規定なし規定なし禁忌(重度)禁忌(重度・中等度)
減量(軽度)
規定なし減量又は投与間隔延長(重度)減量(中等度以上)
肝機能障害悪化のおそれありAUC増加
半減期延長→少量から開始
動物モデルで血中濃度増加悪化のおそれあり悪化のおそれあり血中濃度上昇のおそれ禁忌(重度悪化のおそれあり禁忌(重度)
中等度、血中濃度上昇のおそれ
減量又は投与間隔延長(中等度から重度)減量(中等度以上)
高齢者少量から少量から少量から少量から慎重に慎重に慎重に少量から慎重に慎重に慎重に
CYP相互作用CYP2C6
CYP3A4
併用注意
CYP3A4
併用注意
CYP3A4
併用注意
CYP1A2
併用注意
CYP3A4
CYP2D6
併用注意
CYP3A4
併用注意
併用禁忌
CYP1A2
CYP3A4
併用注意
規定なしCYP1A2
CYP2D6
併用注意
CYP3A4
CYP2D6
併用注意
CYP3A4併用禁忌
併用注意
各製剤の電子添文、インタビューフォームより作成

1非定型抗精神病薬の禁忌
①昏睡状態の患者、②バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者、③アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)、④過敏症の既往です。

2リスパダール錠3mgは統合失調症のみ適応、クエチアピン後発品に12.5mgの規格あり

3ジプレキサは抗がん剤治療時の制吐目的で使用する場合は、糖尿病とその既往が禁忌から削除されました(後述します)

Q 非定型抗精神病薬(第ニ世代)と定型抗精神病薬(第一世代)の違いは?

A 主な違いは「作用機序」と「副作用のリスク」です。

定型(第一世代)の抗精神病薬は主に脳内のドパミンD2受容体を強力に遮断します。幻覚や妄想といった「陽性症状」にはよく効きますが、ドパミン受容体を遮断しすぎることで、錐体外路症状(EPS:手が震える、体が硬くなる等)や高プロラクチン血症などの副作用が出やすいのがデメリットです。一方で、非定型(第ニ世代)の抗精神病薬はEPSのリスクが軽減されています。D2受容体だけでなく、セロトニン(5-HT2A)受容体など他の受容体にもバランスよく作用するからです。意欲低下などの「陰性症状」や「認知機能障害」の改善も期待できます。統合失調症薬物治療ガイドライン2022では非定型抗精神病薬の単剤治療が第一選択として推奨されています。

第一世代抗精神病薬(first generation antipsychotics:FGAs)
第ニ世代抗精神病薬(second generation antipsychotics:SGAs)

「何に効く?」統合失調症だけじゃない、非定型抗精神病薬の幅広い適応

適応症一覧比較表

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薬剤名統合失調症双極性障害うつ病・うつ状態小児領域その他
リスペリドン小児期の自閉スペクトラム症の易刺激性
クエチアピンうつ症状(ビソプレッソ徐放錠)
ペロスピロン
オランザピン躁症状及びうつ症状抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)
アリピプラゾール躁症状小児期の自閉スペクトラム症の易刺激性
ブロナンセリン
クロザピン治療抵抗性
パリペリドン
アセナピン
ブレクスピプラゾールアルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動
ルラシドンうつ症状

①エビリファイ(アリピプラゾール)、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)はうつ病の適応があります。抗うつ薬で十分な効果が得られない場合の選択肢です。SSRIやSNRI薬などとの併用が条件となっています。

本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等と併用すること。[うつ病・うつ状態に対して本剤単独投与での有効性は確認されていない]

エビリファイOD錠 電子添文

本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。[本剤単独投与での有効性は確認されていない。]

レキサルティOD錠 電子添文

双極性障害に適応があるのは②ビプレッソ徐放錠(クエチアピン)、ジプレキサ(オランザピン)、エビリファイ(アリピプラゾール)、ラツーダ(ルラシドン)の4剤です。双極性障害とは気分が高揚する躁状態とひどく落ち込むうつ状態を繰り返す疾患です。薬物治療では主にリチウムやバルプロ酸ナトリウムなどの気分安定薬と抗精神病薬の併用療法が行われます。薬剤ごとに「躁」と「うつ」どちら(又は両方)に使用できるか、文言が異なります。

躁病エピソード

第一選択に気分安定薬と抗精神病薬との併用療法を提案する。気分安定薬としてはバルプロ酸あるいはリチウム、抗精神病薬としてはアリピプラゾール、クエチアピン(適応外)、リスペリドン(適応外)、アセナピン(適応外)、パリペリドン(適応外)のいずれかの組み合わせを提案する。

抑うつエピソード

標準的治療として、第2世代抗精神病薬(クエチアピン[普通錠は適応外]、ルラシドン、オランザピン)および/または気分安定薬(リチウム[適応外]、ラモトリギン[適応外])が提案される。有効性、安全性、忍容性を個別に評価し、患者と話し合い、希望も考慮して決定することが望ましい

日本うつ病学会診療ガイドライン、双極性障害(双極症)2023

③ジプレキサ(オランザピン)は、抗がん剤治療時の悪心・嘔吐の予防に適応があります。高度の催吐性リスクのある抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)に対して、制吐剤(ステロイドや5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬等)と併用して投与します。

高度催吐性リスク抗がん薬に対しては,オランザピン,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンを用いた4 剤併用療法を行う。オランザピンの併用が困難な場合は,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンを用いた3 剤併用療法を行う。

がん診療ガイドライン

④レキサルティ(ブレクスピプラゾール)はアルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動に適応が追加(2024年9月)されました。

アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動の例
大塚製薬、抗精神病薬「レキサルティ」 日本における効能追加の承認取得について

⑤クロザリル(クロザピン)の適応は治療抵抗性の統合失調症です。2種類以上の十分量の抗精神病薬(クロルプロマジン換算600mg/日以上で非定型を含む)を十分な期間(4週間以上)投与しても改善が見られない(反応性不良)、あるいは非定型抗精神病薬のうち、2種類以上による単剤治療を試みたが、副作用により十分に増量できず、十分な治療効果が得られない(耐容性不良)場合に用います。

本剤は、他の抗精神病薬治療に抵抗性を示す統合失調症の患者(下記の反応性不良又は耐容性不良の基準を満たす場合)にのみ投与すること

クロザリル錠、電子添文

 非定型抗精神病薬の一部は「統合失調症」の適応に加えて、「ドパミン・セロトニン受容体を介した感情や行動の調整薬」として多岐にわたる適応を持っています。処方せんを見た際には、「どの適応症で使われているのか」を病名や投与量から確認することが重要です。

「どう効く?」非定型抗精神病薬の作用機序(4グループ)

作用機序比較表

略号正式名称 一般名(商品名)
SDASerotonin-Dopamine Antagonist (セロトニン・ドパミン拮抗薬)リスペリドン(リスパダール)、パリペリドン(インヴェガ)、ペロスピロン(ルーラン)、ブロナンセリン(ロナセン)、ルラシドン(ラツーダ)
MARTAMulti-Acting Receptor Targeted Antipsychotic (多元受容体作用抗精神病薬)クエチアピン(セロクエル)、オランザピン(ジプレキサ)、クロザピン(クロザリル)、アセナピン(シクレスト)
DSSDopamine System Stabilizer (ドパミン・システム・スタビライザー)アリピプラゾール(エビリファイ)
SDAMSerotonin-Dopamine Activity Modulator (セロトニン・ドパミン・アクティビティ・モジュレーター)ブレクスピプラゾール(レキサルティ)

①SDAは定型薬(ハロペリドール等)の副作用である錐体外路症状(EPS)の軽減を目指して開発されました。5-HT2受容体への作用により、陰性症状の改善とEPSの軽減(ドパミン遊離作用による)が期待できます。一方で、D2受容体遮断作用による用量依存的なEPSや高プロラクチン血症の発現には注意が必要です。

②MARTAも錐体外路症状(EPS)の軽減が主な開発目的です。ドパミンやセロトニンのほか、多くの受容体に作用し、陽性・陰性症状に加え、気分障害等にも有効性を発揮します。一方で、ヒスタミンやムスカリン受容体等への親和性から、体重増加や糖代謝異常に注意が必要です。

本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。

ジプレキサ錠 電子添文

③DSS(アリピプラゾール)はドパミン神経系の機能を調節する初のD2パーシャルアゴニストです。ドパミン神経が過剰な亢進状態では遮断薬として、低下状態では刺激薬として働きます。また、5-HT1A受容体部分アゴニスト、5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を合わせ持ち、統合失調症への有効性に加えて、安全性にも優れます。(EPS、高プロラクチン血症、体重増加等のリスク軽減)。ただし、アゴニスト作用に起因するアカシジアの発現には注意が必要です。

④SDAM(ブレクスピプラゾール)はDSS(アリピプラゾール)の進化系です。課題であった「アカシジア」の軽減を目指して開発されました。D2受容体への固有活性(アゴニスト作用)をDSSより低く設定しています。また5-HT1A受容体部分アゴニスト、5-HT2A受容体・アドレナリン受容体α1B、同α2Cアンタゴニスト作用を合わせ持ち、統合失調症治療において、陽性症状・陰性症状・認知機能障害の改善に加えて、安全性(代謝障害、アカシジアを含むEPSの軽減)にも優れたプロファイルを有する薬剤です。

 非定型抗精神病薬は、従来の定型抗精神病薬が抱えていた「錐体外路症状(EPS)が出やすい」「陰性症状に効きにくい」といった弱点を克服するために開発されました。現在は上記の4つのクラスに大別され、それぞれ受容体へのアプローチが異なります。

「どう飲む?」非定型抗精神病薬の剤型選択と説明ポイント

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薬剤名錠・OD錠散・細粒内用液舌下テープ注射
リスペリドン
クエチアピン
ペロスピロン
オランザピン
アリピプラゾール
ブロナンセリン
クロザピン
パリペリドン
アセナピン
ブレクスピプラゾール
ルラシドン

リスパダール(リスペリドン)とエビリファイ(アリピプラゾール)は剤型が豊富です。中でも散・細粒・内用液は錠剤が飲み込みにくい人や細かい用量調節が必要な場合に有用だといえます。内用液は直接服用するか、もしくは1回服用量を水やジュース等に混ぜて、コップ一杯(約150mL)に希釈して飲むことが可能です。配合変化により含量が低下する組み合わせには注意が必要であり、インタビューフォームの配合試験結果を確認しておくことが大切だと思います。

0.25mg単位での調節が必要な場合は、内用液又は細粒を使用すること。

リスパダール錠 電子添文
リスペリドン錠と同内用液の健康成人における単回投与時の薬物動態

リスパダール内用液は錠剤に比べてTmaxが速く、頓服で使用されることが多い印象です。

リスパダール インタビューフォーム

ロナセンテープ(ブロナンセリン)は統合失調症の治療薬で唯一のテープ剤です。ロナセン錠に比べて大きく3つのメリットがあります。特に服薬アドヒアランスの向上が期待できる点が強みですね。

ロナセンテープのメリット
  1. 食事の影響を受けない(初回通過効果の回避)
    ロナセンテープは皮膚から直接血中に移行するため、食事の有無やタイミングに関わらず、安定した効果を得ることができます。また、初回通過効果を回避できため、併用薬との相互作用の影響も小さくなる可能性があります。
  2. 血中濃度が24時間安定する(ピーク・トラフの平滑化)
    ロナセンテープは24時間かけて皮膚からゆっくり持続的に吸収されるため、血中濃度のピークに伴う副作用のリスクを抑えつつ、トラフ(谷間)での症状再燃も防ぎやすくなります。
  3. 確実に投与できる(アドヒアランス向上)
    ロナセンテープは家族や介護スタッフが「今薬を使っているか」を一目で視覚的に確認できるため、服薬管理が向上します。

シクレスト(アセナピン)は舌下錠として開発されました。錠剤は消化管や肝臓での初回通過効果が高いためです(バイオアベイラビリティー34.8%)。服用時の注意点がいくつかあります。

薬剤交付時の注意
以下の点について、患者等に指導すること

  • ブリスターシートから取り出して舌下投与すること。シートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
  • ブリスターシートから取り出す際には、裏面のシートを剥がした後、錠剤をゆっくりつまんで取り出すこと。錠剤をつぶさないこと。欠けや割れが生じた場合は全量を舌下に入れること。本剤は通常の錠剤に比べてやわらかいため、シートを剥がさずに押し出そうとしたり、シートを切ったり、破ったりすると割れることがある。
  • 吸湿性であるため、使用直前に乾いた手でブリスターシートから取り出し、直ちに舌下に入れること。
  • 本剤は舌下の口腔粘膜より吸収されて効果を発現するため、飲み込まないこと。
  • 水なしで投与し、舌下投与後10分間は飲食を避けること

ビプレッソ(クエチアピン)とインヴェガ(パリペリドン)は徐放錠です。噛んだり、割ったり、砕いたり、溶解することができません。インヴェガは浸透圧を利用した放出制御システム(OROS)を応用した、パリペリドンの放出制御型の徐放錠です。外皮が内部の不溶性の成分と一緒に糞便中に排泄されることをあらかじめ患者さんに説明する必要があります。

本剤の外皮は内部の不溶性の成分と一緒に糞便中に排泄されるが、正常なことであり心配する必要はないことを説明すること。

インヴェガ錠 電子添文

リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、パリペリドンは注射薬の設定があります。適応は以下のとおりです。ジプレキサ筋注はレスキュー薬、その他の製剤はアドヒアランスの向上を期待して使用するかたちですね。

一般名製剤名適応投与方法
リスペリドンリスパダールコンスタ筋注用統合失調症2週間ごと
オランザピンジプレキサ筋注統合失調症における精神運動興奮単回使用
アリピプラゾールエビリファイ持続性水懸筋注用統合失調症、双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制4週ごと
パリペリドンゼプリオンTRI水懸筋注統合失調症4週ごと
パリペリドンゼプリオンTRI水懸筋注統合失調症(パリペリドン4週間隔筋注製剤による適切な治療が行われた場合に限る)12週ごと

非定型抗精神病薬はさまざまな剤型があります。用量調節や嚥下機能に合わせて選択することに加えて、服薬負担の軽減やアドヒアランス向上を目的に使い分ける点は押さえておきたいですね。

「いつ飲む?」押さえておきたい非定型抗精神病薬の食事の影響

一般名(薬品名)用法用量空腹時 vs 食後
最高血中濃度(Cmax)
空腹時 vs 食後
血中濃度時間曲線下面積(AUC)
電子添文の記載
ペロスピロン 
(ルーラン)
1日3回・食後食後は約1.6倍に上昇食後は約2.4倍に上昇本剤の吸収は食事の影響を受けやすいので、食後に服用するよう指導すること
ブロナンセリン
(ロナセン)
1日2回・食後食後は約2.7倍に上昇食後は約2.7倍に上昇本剤の吸収は食事の影響を受けやすく、有効性及び安全性は食後投与により確認されているため、食後に服用するよう指導するこ
パリペリドン
(インヴェガ)
1日1回・朝食後食後は約36%増加食後は約37%増加特に記載なし
ルラシドン
(ラツーダ)
1日1回・食後食後は約2.4倍に上昇食後は約1.7倍に上昇本剤の吸収は食事の影響を受けやすいので、食後に服用するよう指導すること
ルーラン、ロナセン、インヴェガ、ラツーダの電子添文、インタビューフォーム
インヴェガはなぜ朝食後投与の指定があるのか?

食後投与の理由は空腹時では吸収が低下するからです。食後投与の方が空腹時投与に比べて、Cmax1.36倍、AUC1.37倍に増加します。朝に投与する理由は、24時間にわたり安定した薬物放出が可能になると考えられたためです。インヴェガは、投与後24時間にわたり薬物を放出するよう設計された放出制御型徐放錠であり、一般的に副交感神経が亢進する夜間よりも、朝に投与した方が、消化管運動が穏やかであり、より体内に留まりやすいと考えられています。

インヴェガ徐放錠の仕組みは?

OROSプッシュ・プルシステムと呼ばれる浸透圧勾配による放出制御機構を有しています。多層構造(薬物層及びプッシュ層)のコアを硬い半透過性膜(放出制御膜)でコーティングし、外部と内部の浸透圧差により水を内部に取り込み(プル)、水を吸収して膨張したプッシュ層が薬物を押し出す(プッシュ)仕組みです。消化管内に達すると、最外層のフィルムコーティングは速やかに溶解し、水が放出制御膜を隔てた浸透圧配によりコア内に浸透し、薬物層が水を吸収すると本薬の懸濁液が生成するとともに、プッシュ層も水を吸収して体積膨張が始まり、薬物放出口から本薬の懸濁液が押し出されて薬が断続的に放出されます。

osmotic controlled release oral delivery system: OROS

インヴェガ 電子添文

非定型抗精神病薬の中で食後投与の指定がある薬剤が4つあります。患者さんへの説明が必要なので、押さえておきましょう。

「ここを守る!」糖尿病禁忌と減量基準、相互作用の確認ポイント

1. 糖尿病禁忌の薬剤(クエチアピン・オランザピン)

  1. クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)とオランザピン(ジプレキサ)は糖尿病・既往の患者に原則投与できません。急激な高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こすおそれがあるためです。
  2. 2026年7月29日、オランザピンを抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)に用いる場合は、糖尿病禁忌が解除され、「慎重投与」へと改訂されました。精神科領域での継続投与と異なり、制吐目的は「短期投与(6日程度)」かつ緊急時の体制が整っているためです。

警告、抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)、糖尿病又はその既往のある患者へ本剤を投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は投与しないこと。また、本剤投与前及び投与期間中は、毎日頻回に血糖値のモニタリングの管理を行い、本剤投与後も血糖値が安定するまではモニタリングを継続するなど患者の状態を継続的に観察するとともに、投与期間を通じて、緊急時に十分に対応できる体制を整えた上で投与すること

ジプレキサ錠、電子添文

 クエチアピンやオランザピンの処方を見たら、「病名(糖尿病とその既往」を確認する習慣を身につけましょう。抗がん剤治療における「制吐目的」でオランザピンを用いる場合は前駆症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)の説明・モニタリング(血糖測定等)を行うことが大切ですね。

2. 肝機能障害時に禁忌・減量基準がある薬剤(クロザリル、アセナピン、クエチアピン・ブレクスピプラゾール・ルシラドン)

  1. クロザピン(クロザリル)とアセナピン(シクレスト)は重度肝機能障害患者は禁忌です。アセナピンはAUCが正常者に比べて5.5倍に上昇します。
  2. クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)は肝代謝であり、血中濃度上昇に伴う副作用のリスクがあります。肝機能障害がある人には低用量(セロクエル:1回25mg・1日1回)から開始、少しずつ(ビプレッソ:50mgずつ)増量し、状況を見ながら慎重に用量調節を行わなければなりません。
  3. ブレクスピプラゾール(レキサルティ)とルラシドン(ラツーダ)も肝代謝であり、血中濃度上昇に伴う副作用のリスクがあります。中等度から重度肝障害(Child-Pugh BとC)では、減量又は投与期間の延長を考慮します。ラツーダは統合失調症と双極性障害の適応ごとに、開始量・増量幅・維持量、最高量が明記されています。(レキサルティは明確な記載なし)

非定型抗精神病薬は肝代謝のものがほとんどです。肝機能障害時には血中濃度上昇に伴う副作用のリスクがあります。特に減量基準があるクエチアピン、ブレクスピプラゾール、ルラシドンは検査値を確認する習慣を身につけておきたいですね。

3. 腎機能障害時に禁忌・減量基準がある薬剤(パリペリドン・ブレクスピプラゾール・ルラシドン・クロザリル)

  1. パリペリドン(インヴェガ)は主な排泄経路が腎臓であり、腎障害のある患者では、血中濃度上昇に伴う副作用のリスクがあります。CCr50mL/min未満の中等度・重度の腎機能障害患者は禁忌、軽度(50≦CCr<80)の場合は、開始用量と最大投与量がそれぞれ3mg、6mgと通常用量の半量になります。
  2. ブレクスピプラゾール(レキサルティ)は重度の腎機能障害患者Ccr30mL/min未満ではクリアランスの低下(正常者に比べてAUC1.7倍)による副作用のリスクから、減量又は投与期間の延長を考慮します。
  3. ルラシドン(ラツーダ)は中等度~重度腎機能障害では減量が必要です。統合失調症と双極性障害の適応ごとに、開始量・増量幅・維持量・最高量が明記されています。

定型抗精神病薬の中でパリペリドンは珍しく腎排泄率の割合が大きい薬剤です。パリペリドン、ブレクスピプラゾール、ルラシドンの処方を見たら、腎機能のチェックと投与量を確認することが大切ですね。クロザリルは重度腎機能障害患者は禁忌です。

4. CYP相互作用で併用禁忌・減量基準が明確な薬剤(ブロナンセリン・ブレクスピプラゾール、ルラシドン)

  • ブロナンセリン(ロナセン)は強力なCYP3A4阻害剤との併用が禁忌です。ケトコナゾール(経口剤:国内未発売)との併用によりAUCが17倍、Cmaxが13倍に増加したとの報告があります。また、併用注意薬の中でもCYP3A4阻害剤は、減量を考慮、慎重に投与しなければなりません。ロナセンテープもほぼ同様の対応です。
  • ルラシドン(ラツーダ)は強力なCYP3A4阻害剤と誘導剤の併用が禁忌です。併用注意薬の中でもCYP3A4を阻害する薬剤では、減量を考慮、慎重に投与する必要があります。
  • ブレクスピプラゾール(レキサルティ)は併用薬のチェックが欠かせません。CYP3A4及びCYP2D6で代謝される薬剤との併用により、厳密な減量基準が設定されているからです。添付文書を見ながら、慎重に確認を行わなければなりません(かなり煩雑な印象)。

非定型抗精神病薬の多くは、CYPの相互作用に注意が必要です。特に、アセナピン、ルラシドン、ブレクスピプラゾールは併用禁忌や減量基準の設定があり、お薬手帳の併用薬チェックを徹底しなければならないですね。

まとめ

今回は非定型抗精神病薬11種類について特徴、使い分け、注意点等をまとめました。ポイントは以下のとおりです。

  1. 適応:統合失調症+α
    ジプレキサ(抗がん剤制吐目的)、レキサルティ(アルツハイマー型認知症の随伴症状)
  2. 作用機序:開発目的=副作用軽減(EPS)
    定型薬SDA/MARTADSSDSAM
  3. 剤型:用量調節、アドヒアランス向上
    ロナセンテープ(服薬負担の軽減)、シクレスト舌下錠(初回通過効果の軽減)
  4. 食事の影響:空腹時投与はCmax、AUC低下の恐れ
    ルーラン、ロナセン錠、インヴェガ(朝食後指定)、ラツーダ
  5. 注意点:高血糖・低血糖のリスク、肝・腎機能障害患者への対応、CYP相互作用
    ・糖尿病禁忌クエチアピンとジプレキサ(ケモ時の制吐目的は慎重投与)
    ・肝機能障害クロザリル・シクレスト(禁忌)、セロクエル(少量〜)、レキサルティ・ラツーダ(減量)
    ・腎機能障害クロザリル(禁忌)、インヴェガ(禁忌・減量)、レキサルティ・ラツーダ(減量)
    ・相互作用ロナセン・ラツーダ(禁忌)、レキサルティ(明確な減量基準)

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