今回のテーマはネクセトール錠!一般名はベムペド酸、高コレステロール血症の治療薬です。「ATPクエン酸リアーゼ阻害剤」という新しい機序を有します。どのような特徴があるのか?ポイントをまとめたので共有します。
ネクセトール錠の基本情報
| 商品名 | ネクセトール錠180mg |
|---|---|
| 販売日 | 2025年11月21日 |
| 一般名 | ベムペド酸 |
| 作用機序 | ATPクエン酸リアーゼ阻害剤 |
| 適応 | 高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症 |
| 用法用量 | 1回180mg・1日1回 |
| 禁忌 | 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、妊婦又は妊娠している可能性のある患者 |
| 代謝 | UGT2B7によるグルクロン抱合(NADPH依存性の酸化もあり) |
| 排泄 | 尿中62.1%、糞便中25.4%(未変化体はそれぞれ5%未満) |
| 相互作用 | 併用禁忌・併用注意なし |
| 薬価 | 371.50円 |
ネクセトールの特徴を読み解くポイントは6つです。
- 適応
- 作用機序
- 投与方法
- 有効性
- 肝機能障害患者への投与
- 相互作用
- 安全性
ネクセトールの適応
・高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
脂質異常症の診断基準
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール | 120〜139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | HDL低コレステロール血症 |
| トリグリセライド | 150mg/dL以上(空腹時採血) | 高トリグリセライド血症 |
| トリグリセライド | 175mg/dL以上(随時採血) | 高トリグリセライド血症 |
| Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高Non-HDLコレステロール血症 |
| Non-HDLコレステロール | 150〜169mg/dL | 境界域高Non-HDLコレステロール血症 |
★家族性コレステロール血症とは
- 家族性高コレステロール血症(FamilialHypercholesterolemia:FH)
- 常染色体顕性の遺伝性疾患(多くはLDL受容体遺伝子の変異が原因)
- 高LDLコレステロール血症、早発性冠動脈性疾患、腱・皮膚黄色腫を3主徴とする
- ヘテロ接合体性家族性コレステロール血症(HeFH):300人に1人の割合
- ホモ接合体性家族性コレステロール血症(HoFH):36〜100万人に1人の割合、指定難病
LDLコレステロールを下げる薬一覧
| 分類 | 一般名(商品名) | 作用機序 |
|---|---|---|
| HMG-CoA還元酵素阻害薬 | プラバスタチン(メバロチン)、シンバスタチン(リポバス)、フルバスタチン(ローコール)、アトルバスタチン(リピトール)、ピタバスタチン(リバロ)、ロスバスタチン(クレストール) | 肝臓におけるコレステロール合成を妨げ、LDL受容体を増やす |
| 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 | エゼチミブ(ゼチーア) | 小腸におけるコレステロールの吸収を妨げる |
| 陰イオン交換樹脂 | コレスチミド(コレバイン)、コレスチラミン(クエストラン) | 胆汁酸と結合して体外へのコレステロール排泄を増やし、肝臓でのコレステロールの胆汁酸への異化を促進し、LDL受容体を増やす |
| その他 | プロブコール(ロレルコ、シンレスタール) | LDLの異化を亢進、特に胆汁酸中へのコレステロール排泄を促進する |
| PCSK9阻害薬 | エボロクマブ(レパーサ)、インクリシラン(レクビオ) | LDL受容体の分解タンパク質であるPCSK9を阻害し、LDL受容体の増加作用によりLDLの肝臓への取り込みを促す |

ネクセトールは高コレステロール血症に対する第一選択薬ではありません。既存薬スタチンの効果が不十分であった時や使用できない場合(副作用や禁忌等)等に使用します。また、家族性コレステロール血症(FH)のうち、ホモ接合体性FHには使用経験がなく、非薬物療法(LDLアフェレーシス等)に加えて使用を考慮するかたちです。
HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又は以下に示すHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない患者に使用すること。
- 副作用の既往等によりHMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が困難な患者
- HMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が禁忌とされる患者
家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体については使用経験がないので、治療上やむを得ないと判断される場合のみ、LDLアフェレーシス等の非薬物療法の補助として本剤の適用を考慮すること
ネクセトール錠180mg 電子添文

ネクセトールは高コレステロール血症・家族性高コレステロール血症の治療薬です。第一選択ではなく、既存薬スタチンの反応が不十分、又は忍容性がない場合に用いる点は押さえておきたいですね。
ネクセトールの作用機序
・ATPクエン酸リアーゼ阻害剤
コレステロールの合成とネクセトール・スタチンの作用機序
コレステロールはどこで合成されるのか?答えは肝臓(主に)です。アセチルCoAをもとに20を超える過程を経て作られます。原料となるアセチルCoAは糖や脂肪酸、アミノ酸から複数の経路により産生されます。例えば、グルコースは解糖系によりピルビン酸となり、ミトコンドリア内に移行したのち、アセチルCoAとなります。その後、オキザロ酢酸と結合しクエン酸回路に入って、エネルギーが作られる仕組みです。実はミトコンドリア内のアセチルCoAはコレステロール合成が行われる細胞質に移動できません。クエン酸として膜を通り、以下の反応により、アセチルCoAが供給されます。
・クエン酸アセチルCoA+オキサロ酢酸
ネクセトールはここで働くクエン酸シンテターゼを阻害します。つまり、コレステロールの生成に必要な原料の供給を止めるわけです。
アセチルCoAは、下記の反応を経てコレステロールになります。HMG-CoAをメバロン酸へ変換する酵素は有名なHMG-CoA還元酵素です。
・アセチルCoA×2→アセトアセチルCoA→HMG-CoA→メバロン酸→イソプレノイド×6→スクアレン→→コレステロール
スタチンはここでHMG-CoA還元酵素を阻害します。つまり、コレステロールの生成過程を妨げるわけですね。
ネクセトールはプロドラッグです。ここもポイント!主に肝臓にあるACSVL1によって活性体となります。筋細胞における作用がなく、スタチンで問題となる筋肉への影響が少ないとされています。





コレステロールの原料を作らせないのがネクセトール、原料からコレステロールを作る過程を妨げるのがスタチンです。肝臓選択性もポイントですね。
ネクセトールの投与方法
- 1回180mg・1日1回(固定用量)
- スタチンとの併用療法が原則
- 食事の影響なし
ネクセトールは1回180mg・1日1回の固定用量です。
【用量設定の根拠】用量反応関係を検討した国内第2相試験において、主要評価項目である投与12週時のLDL-Cのベースラインからの変化率はプラセボに比べて、60mg・120mg・180mg群で有意な減少を認め、60mg群よりも120mg・180mg群で変化率が大きかったものの、120mg群と180mg群で大きな差は認められませんでした。


上記結果と海外で行われた第3相臨床試験(1回180mg・1日1回)の結果もとに、国内第3相臨床試験においても同じ用法用量である1回180mg・1日1回が選択され、有効性と安全性が確認されています。
ネクセトールの効果が不十分の場合は、中止することとなっています。増量は不可です。
本剤投与中は血中脂質値を定期的に検査し、本剤に対する反応が認められない場合には投与を中止すること。
ネクセトール錠180mg 電子添文
ネクセトールはスタチンとの併用が原則です。スタチン及び/又はスタチン以外の高コレステロール血症治療薬を投与中のコントロールが不十分又は不耐の高LDLコレステロール血症患者を対象とした臨床試験において有効性と安全性が確認されているからです。
HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又は以下に示すHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない患者に使用すること。
・副作用の既往等によりHMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が困難な患者
ネクセトール錠180mg 電子添文
・HMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が禁忌とされる患者
ネクセトールは食事の影響を受けません。朝・昼・夕の食後でも、眠前の投与も可能ですね。
健康成人17例に本剤180mgを単回経口投与した時、空腹投与時に対する食後投与時のベムペド酸のCmax及びAUCinfの幾何平均比はそれぞれ0.88及び0.98であった
ネクセトール錠180mg 電子添文



ネクセトールは1回180mg・1日1回の固定用量(増量・減量不可)です。スタチンとの併用療法が基本である点は押さえておきたいですね。
ネクセトールの有効性
- 対象…HMG-CoA還元酵素阻害剤及び/又はHMG-CoA還元酵素阻害剤以外の高コレステロール血症治療薬を投与中のコントロールが不十分又は不耐の高LDLコレステロール血症患者96例
- 介入…ネクセトール180mgを1日1回12週間投与
- 比較…プラセボ
- 結果…主要評価項目である投与12週時におけるLDL-コレステロールのベースラインからの変化率はネクセトール群-25.25%、プラセボ群-3.46%であった(群間差-21.78%、p<0.001)


副次評価項目である投与12週時におけるnon-HDL-C、TC、apo Bの変化率においてもネクセトール群はプラセボに比べて有意に低下しています。
LDL-Cの平均変化率の推移は以下のとおりです。LDL-Cの低下は投与2週目から12週まで認められています。


さらに、スタチンに対する反応が不十分な場合やスタチン不耐例においても、プラセボに比べて、有意なLDL-C低下作用が認められています。





ネクセトールはスタチンで効果不十分又は不耐のHC患者、HeFH患者において、スタチンに対する反応性、スタチンの併用の有無によらず、有効性が認められています。
ネクセトール、肝機能障害患者への投与
- 主に肝臓で代謝される
- 尿中62.1%、糞中25.4%(未変化体はそれぞれ5%未満)
- 重度の肝機能障害患者は慎重に投与する
ネクセトールは主に肝臓で代謝されます。投与量の62.1%が尿中に排泄されるので、腎排泄型と思いきや、そうではありません。未変化体は5%未満であり、ほとんどは肝臓のUGT2B7によるグルクロン酸抱合を受けた代謝物だからです。
ネクセトールは電子添文上、重度の肝機能障害患者への投与に関する注意事項が設定されています。中等度肝機能障害患者は正常の方に比べて、非結合型のCmaxとAUCの増加(Cmax:1.38倍、AUC 1.31倍)が認められており、重度の肝機能障害患者においても、暴露量の増加が予想されるからです。電子添文にも注意喚起がされています。


重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)
本剤の非結合形の血中濃度が上昇するおそれがある。重度の肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない
ネクセトール錠180mg 電子添文
ちなみに、ネクセトールは電子添文上、腎機能障害患者への投与に関する注意事項は設定されていません。腎機能障害患者は正常の方に比べて、AUCの増加が認められる(Cmax:軽度1.28倍、中等度1.61倍、AUC :軽度1.39倍、中等度1.88倍)ものの、臨床試験において筋障害の発現リスクが高まる懸念は示されていないからです。また、有害事象全般に関しても腎機能障害の程度のよって発現割合が高くなる傾向は認められていません。


ネクセトールの相互作用
- 併用禁忌・併用注意の設定なし
- スタチンの血中濃度を上昇させる恐れあり
- 投与中は血清CK値や自覚症状(筋障害の前駆症状)のモニターを強化する
ネクセトールはスタチンの血中濃度を上昇させる可能性があります。薬物相互作用試験により、各種スタチンのCmax、AUCを増加させることが示されています。ピタバスタチン、フルバスタチンは薬物相互作用試験はされていないものの、OATP1B1、OATP1B3、BCRPの基質であるといった薬物動態特性が各種スタチンと類似しており、併用により暴露量が増加する可能性があり、注意が必要な点は同様です。


ネクセトールはスタチンとの併用が基本であり、投与中は横紋筋融解症等の副作用に注意が必要です。自覚症状の早期発見に加えて、CK値のモニタリングが欠かせません。
本剤はHMG-CoA還元酵素阻害剤の血中濃度を上昇させることから、横紋筋融解症等の副作用があらわれるおそれがある。本剤とHMG-CoA還元酵素阻害剤を併用する場合は、定期的にCKを測定するなど患者の状態を十分に観察すること。また、これらの副作用の症状又は徴候があらわれた場合には速やかに医師に相談するよう患者に指導すること
ネクセトール錠180mg 電子添文
ネクセトールの安全性
- 重大な副作用なし
- 高尿酸血症、痛風(RMPの重要な潜在的リスク)
- 副作用発現率は130例中19例(14.6%)、主な副作用は高尿酸血症8例(6.2%)、血中尿酸増加3例(2.3%)国内長期投与試験
ネクセトールは「高尿酸血症、痛風」がRMPの重要な潜在的リスクに設定されています。投与中は定期的な血中尿酸値のモニタリングが必要です。
本剤投与により尿酸値が上昇し、高尿酸血症又は高尿酸血症の悪化があらわれるおそれがあるため、血清尿酸値の測定等の観察を十分行うこと
ネクセトール錠180mg 電子添文
- なぜ、ネクセトールは尿酸値を上昇させるのか?
-
ネクセトールは有機アニオントランスポーター2(OAT2)の阻害作用があるからです。腎臓における尿酸の分泌を妨げ、血中尿酸値を上昇させる可能性があります。
まとめ
今回はネクセトール錠の特徴についてまとめました。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤という新規薬であり、肝臓におけるコレステロールの合成を妨げます。肝臓に選択的であり、HMG-CoAよりも上流で作用します(従来薬スタチンとの違い)。一方で、高尿酸血症や痛風のリスク、スタチンとの相互作用(血中濃度上昇による横紋筋融解症等のリスク)には注意が必要です。定期的に血液検査を実施し、副作用の早期発見に努めなければなりません。ネクセトールの発売により、高コレステロール血症、家族性コレステロール血症における選択肢が広がります。本記事が知識の整理にお役立て頂けたら幸いです!

