「空気がなかなか抜けない!どうしよう?」
「どうしてエアが残るの?時間がないのに…」
ワクチンの調製で、難易度が高い操作といえば、エア抜きですよね。
コミナティ、スパイクバックス(旧COVID-19ワクチンモデルナ)、どちらも空気を抜くのが大変。
なぜなら、シリンジを叩けないし、弾けないから。mRNAは衝撃に弱く分解される可能性があります。もちろん、時間をかけたらいつかは抜けるでしょう。
でも、そんな余裕はありません。「ワクチンはまだか!」と接種ブースから言われるわけにはいかないから。円滑に集団接種を進める役割があります。
では、エア抜きをスピーディに行うためにどうすればいいのか?
私の経験をもとに、考察したので共有したいと思います。個人の見解ですので、参考程度に読んで頂けたら幸いです^_^
エア抜きが難しい気泡とは?
\エア抜きの難易度は気泡の大きさによって変わります!/
難易度
抜きにくい
難易度
簡単に抜ける
何となくイメージできますよね。
「“この空気”がなかなか取れない!」
というときの、“この空気”って大抵小さいはずです。サイズは直径1~3mmくらい(体感)ですかね。
一方で、3mmを超える泡は比較的簡単に抜けます。ガスケットやシリンジ側壁から剥がれやすいからです。大きい泡の方が浮力(気泡の体積に比例)が大きいためと考えられます。
「私たち調製担当を困らせる泡のサイズは小さい」
ここは押さえておきたいところ。では、エア抜きの難易度が高い小さな気泡はどのように処理すればいいのか?
エアは空気と共に抜く!
皆さんは、シリンジ内の空気をどのように抜いていますか?
方法は大きく2つあります!
①振動を与える(シリンジを叩く)
②気泡を空気でまとめて抜く
①振動を与える方法は有名ですね。針先を上に向けてシリンジを叩く(弾く)と、気泡がフワッと浮かびます。ガスケットやシリンジ側壁、肩部分の気泡を抜くときに便利ですね。
しかし、コミナティやスパイクバックス(COVID-19ワクチンモデルナ)など、mRNAワクチンには向いていません。上述のように、振動により壊れる可能性があるからです。
少しだけなら叩いても大丈夫とか、軽くなら弾いてもOKという意見もあるようですが、その必要はないと私は思います。以下のように②気泡を空気でまとめて抜く方法でなんとかなるからです。
しかし、弱点もあります。大きく2つです。
①ガスケットの気泡には向いていません
②意外と時間がかかります
ここを何とかスムーズに行えないかが今回のテーマ。ここからが本題です。
エア抜きをスピーディに行う方法
\ここまでの内容を改めてまとめると/
- 小さな泡は抜けにくい(実際にそう)
- だから、大きな空気のかたまりにして抜く(mRNAワクチンはこれしかない)
- でも時間がかかる!
じゃあ、どうすれば?
答えは簡単!
小さな泡を作らないこと。逆の発想ですね。
方法は大きく2つあります!
- 泡立たせない…プランジャーはゆっくりと等速で引く!
- エアをちぎらない…肩部分を通過する時のスピードは超スローに!
プランジャーを動かす速度がポイント!
\図で表すと以下のとおりです!/
順番に解説します。
泡立ちを抑える
一つ目は、プランジャーを引くスピードに注目です。
調製手順のどの場面か?
というと、以下のように初めのステップです。
ここで泡立ちを抑える!
プランジャーを引くスピードが速いと細かい気泡が無数にできます。薬液が勢いよくシリンジ内へ注入されるからです。ブシャーってなる感じ、みんな経験ありますよね。
気泡を作らないためには、プランジャーの速度に気をつけることが大切です。ゆっくりと同じスピードで引くと泡立ちを抑えられます。
- プランジャーをゆっくり引くと調製に時間がかかる?
-
かというと、そうでもありません。経験上、プランジャーを引くスピードを抑えた方が、時間が短縮できるからです。急いで作業を行うとかえって泡泡(アワアワ)になって、時間を要します。急がば回れの精神で臨むことが大切ですね。
「引くスピードはゆっくりと!」
これを意識すれば、自分で作った泡を、時間と手間をかけて抜かなくても良くなります(^ ^)
エアをちぎらない
2つ目はプランジャーを押す速度に注目!
調製手順の場面は以下のとおりです。
ここで空気をちぎらない!
肩部分を通過するときに「極端過ぎるくらい」にスピードを落として、プランジャーを押すとエアは残りません。残ったとしても微小で無視できるくらいです。
一方で、速度を落とさないと肩部分に空気が残ります。肩部分に引っかかってプチッと切れてしまうからです。
シリンジ先端は径が細く、一定時間に通過できる空気(薬液)の量も減ります。にもかかわらず、同じスピードで空気を送ると処理しきれず、手前の肩部分に残りやすいという理解ですね。
「これでもか!というくらい超スローに押す!」
と、エアがちぎれずに綺麗に抜けていきます。シリンジの肩部分に残る気泡に悩まされている人は是非、この方法を試して欲しいです!
もし、肩部分に空気が残ったら、もう一度、少しだけ空気をいれて再トライ。2回目は肩部分に薬液が馴染んでいるので、上手くエアが抜けます。
あと、注射筒の構え方!
「シリンジを垂直」に「液面を水平」に構えると肩のエアが抜けやすいと思います。傾いた状態では物理的にエアが引っかかりやすいからです。これも試してみてくださいね。
まとめ
今回はコロナワクチンの調製で、エア抜きをスピーディに行うための方法について考察しました。
意識したいのは
・プランジャーを動かすスピード!
とにかく、超スローを心がけましょう(とくに肩部分)
\本記事の方法なら、3つのステップで充填が完了します/
ゆっくりと
薬液をシリンジ内へ(泡立てずに)
超スローに
シリンジ内の空気をバイアルへ(肩部分に残さずに)
必要量の薬液をシリンジ内へ
上手くいけばの話ですけど…(^^;)
スピーディかつ最小限のエア抜きは、集団接種を円滑に進めることができます。ここがメリット。それに、壊れやすいmRNAワクチンへの影響を最小化できるのではないでしょうか。25G針の筒内を何度も行き来させるのは、少し気になりますよね。
これから、調製業務に参加する人は一度試してみてはどうでしょうか。超スロー操作でも、仕上がりのスピードはきっと上がるはずです♪