今回のテーマは服薬アドヒアランス!
当たり前のことを、あえて書こうと思います。最近になって改めて重要性を感じているからです。
薬を渡したらそれで終わり!と考えている人はきっといないけど、無意識のうちにそうなっていないでしょうか?
目の前の患者さんが、薬をきちんと飲めるのか、飲み忘れてないのかを本当に評価できているのか、怪しい人もいると思います。もちろん、私もですよ(^_^;)
服薬アドヒアランスはめちゃくちゃ大事!
薬剤師はもっと心を傾けて(全集中して^_^)取り組むべきだ
という熱い思いを書きました。
ポイントは大きく3つあります。
- 服薬アドヒアランスの評価→薬剤師業務のスタート地点!
- 服薬アドヒアランスの低下→過剰医療の危険がある!
- 服薬アドヒアランスの意識→服薬後フォローの第一歩!
順番に見ていきましょう。
服薬アドヒアランスの評価→薬剤師業務のスタート地点!
アドヒアランスの評価なしに薬剤師の仕事は始められません
患者さんの理解度により、説明方法は工夫すべきだし、飲み忘れのリスクに応じて、調剤方法も選択すべきだからです。また、処方提案でもアドヒアランスに応じた、薬剤の選択が必要ですよね。
具体的にいうと、
ご高齢で認知機能がやや低下した人には、より丁寧な説明が欠かせません。ポイントを絞った繰り返しの説明はもちろん、リーフレットを用いたり、薬の情報提供書にマーカーで線を引いたりと服薬の重要性、副作用の対処法などを理解していただくための工夫が必要だからです。
また、飲み忘れのリスクや嚥下機能に問題があれば、一包化や粉砕、カレンダー管理を提案したり、飲みやすい剤型への変更やライフスタイルに合わせた服薬時点の変更を医師に打診するケースもありますよね。
もし仮に、評価がいい加減だとどうなるのか?
一律の対応しかできません。
・誰にでも同じ説明の繰り返し
・高齢者だからとりあえず一包化
・嚥下が悪い=粉薬へ変更
…など。もちろん、上手くいく場合もありますが、逆も然りです。
また、薬剤師の仕事が無意味になる場合もあります
薬効モニターや副作用モニタリングをいくら頑張っても、飲み忘ればかりだと効果を正しく評価できないからです。薬飲んでいないのに薬剤性と誤った判断を行う危険性もありますよね。
「薬をきちんと飲めるのか?」
服薬アドヒアランスの評価なしでは、薬剤師の仕事が始められないし、評価が不十分だと、どうしても一律の対応となり、薬剤師の介入が無意味だったり、逆効果となる可能性もあるのです。
逆にいうと、
評価の習慣が身につけば薬剤師の仕事がより生きてきます。下記のとおりです。
- 薬効や副作用の説明…理解度に応じてわかりやすい工夫
- 調剤方法の選択…飲み忘れのリスクやライフスタイルに合わせて個別対応
- 処方提案…嚥下機能に合わせた剤型や形状の薬をピックアップ
このように、薬剤師の仕事は服薬アドヒアランスの評価から始まり、一律の対応ではなく評価に応じて、患者さんごとに介入していくわけです。つまり、仕事の出来は評価次第であるともいえますね。
服薬アドヒアランスの低下→過剰医療の危険がある!
これは盲点かも知れません。
服薬アドヒアランスの低下は過剰医療の危険があります
どういうことなのか?
薬を飲み忘れてばかりだと、期待した効果が得られません。たとえば血圧やコレステロールの値が下がらないわけです。そうなると、医師と薬剤師は思います。このままではまずいと。次に待ってるのは薬の増量やより強力な薬への変更です。薬剤師も処方提案という形で積極的に関わるわけですね。
これが過剰医療の始まり!
単に薬を飲んでいないから効果が現れてないだけなのに、難治性の病態や投与量の不足と考えて、不要に薬が増えていくわけです。場合によっては高血圧や高脂血症の原因検索のために検査オーダーが追加されこともあります。
服薬アドヒアランスの低下が無意味な投薬や不要な検査に連鎖していくわけです。もちろん、無駄に医療費を増大させる点も忘れてはいけません。
では、どうすればいいのか?
効果不十分の時に、アドヒアランスの評価を行えば回避できる
といっても、これが難しい!
アドヒアランスの低下を疑う人は実に少ないからです。効果不十分と聞いて、頭の中に浮かぶことは何でしょうか?
・難治性だから?
・投与量が少なかった?
・消化吸収に問題がある!?
・相互作用により効果が減弱した?
とかの理由ですよね。
「単に飲んでいないだけの可能性は?」が抜けているのです
自分もそうですが、医師、薬剤師、看護師さんを含めて、アドヒアランス不良を疑う人は少ないと感じています。
アドヒアランス低下が改善するとさらにやばい!
正直言ってアドヒアランスが悪いままなら、患者さんへの実害はそれほど大きくありません。追加された薬もきっと飲まないので…。
でも、気をつけたいのが
なんらかの理由で、アドヒアランスが良くなった場合。
たとえば入院や施設入所等ですね。
薬剤師の介入や看護師さんや施設スタッフさんの管理により、アドヒアランスが是正されると過剰な効果が発現し、副作用を引き起こす危険性があります。実はこの前もありました。インスリンを打てていなかった人が、入院を契機に低血糖を起こすというケース。気をつけたいですね。
服薬アドヒアランスの低下は単に十分な薬効が現れないだけでなく、気づかないと過剰な医療行為につながります。きちんと飲めているか、服薬状況の把握はいつも心がけておきたいですね。
服薬アドヒアランスを追求→服薬後フォローが充実!
これは最近の話題ですね。
アドヒアランスを追求すれば、服薬後のフォローが充実する
飲み忘れがないか、きちんと飲めているかは投薬後の話で、経過のフォローが不可欠だからです。
服薬後のフォローが義務化
2020年9月から薬機法の改正により服薬後のフォローが義務化されました。薬を渡したらそれで終わりの薬剤師は淘汰される時代になったわけですね。私も含め病院薬剤師も入院中の薬物療法を退院後に引き継ぐために薬薬連携の重要性を日々感じているところです。
服薬アドヒアランスを追求することは、投薬後又は退院後の薬物療法について考えることとイコールだと思います。
・誰が薬を管理するのか?(本人、家族、職員)
・どこに退院するのか?(自宅、病院、施設)
・調剤方法はこれで良いのか?(PTP、一包化、粉砕、簡易懸濁等)
・次回受診日はいつ?(処方の日数は足りるのか)
・飲み忘れのリスクや副作用の危険性はないの?
・問題あるならどうすればいいのか?
というふうに、服薬アドヒアランスの妨げになるものがないかを、自然に考えるようになるのです。
薬を渡したらそれで終わりではなく、薬を渡した後の状況が気になります。
意識の持ち方が変わるわけですね。
服薬後のフォローは薬剤師がもっと介入すべき!
なのに、まだまだです。一方で、看護師さんはすごいです。病棟で仕事をしてるといつも思います。退院後を常に考えているーー。
・この人は粉薬が苦手
・あの人は大きい錠剤が飲めない
・◯◯さんは一人暮らしだし、種類が増えるのは困る
・△△さんは認知機能の低下があるのできっと飲み忘れる
とかが頭の中に入っていて、先生が薬を処方すると同時に、退院後の服薬管理を考えて、あれこれ問題点を指摘されています。いつも感心するばかり(^_^)
「薬物療法を継続できるか!」
この視点を薬剤師はもっと持つべきだと思います。まだまだ弱いので…。
服薬アドヒアランスの意識が高まれば、投薬後や退院後のフォローが充実します。服薬後フォローはどうやってやろうか考えなくても、アドヒアランスを意識するだけで自然とできるようになるはずです。
まとめ
今回は服薬アドヒアランスにもっとこだわるべきという思いを書きました。
アドヒアランスの評価って、薬剤師にとっては当たり前すぎて、逆に疎かになっている気がします。専門性を磨いたり、処方提案のスキルを伸ばしたり、チーム医療で存在感を高めたりする方が薬剤師の職能も広がるし、より患者さんにも貢献できるはずで、アドヒアランスを高める方法を習得しようなんて流行らないですよね。
でも、服薬アドヒアランスを意識すれば、薬剤師が行う仕事の質がワンランク上がります。服薬指導や処方提案、コンサルテーションにおいても、患者さんに寄り添った関わりができると思うのです。
「結局、薬をきちんと飲んでもらうことがスタート地点!」
そこから薬剤師の仕事が枝分かれしていくイメージです。スタートを切れないのに、その後のことを必死にやってもコスパが悪いだけ。きちんと飲めてないのに、薬効モニターや副作用モニタリング、処方提案を頑張っても効果半減ですよね。
まずは薬を飲んで頂くための評価です。服薬アドヒアランスに全集中できるようになれば、薬剤師のアプローチの幅が広がり、仕事のあり方もいい方向に変わると思います♪