抗菌薬

ザバクサ配合点滴静注用が発売!抗菌スペクトル、適応、臨床的な位置付けは?

新規の抗菌薬ザバクサが、2019年6月から使えるようになりました。

薬剤耐性菌対策が叫ばれる中、一体、どのような薬剤なのか?

今回のテーマは「ザバクサ」です。
以下の3つのポイントから、特徴を見ていきましょう。

2019年12月に敗血症と肺炎に適応が追加されました。

  1. ザバクサの抗菌スペクトルはどのくらい?
  2. 適応は大きく2つある(3つに増えました)
  3. 臨床的な位置付けは?

ザバクサの抗菌スペクトルは?

セフトロザンとタゾバクタムの配合剤

ザバクサは2種類の成分からなる配合剤です。

・セフェム系薬のセフトロザン
・βラクタマーゼ阻害剤のタゾバクタム

抗菌活性を示すのはセフトロザン。
タゾバクタムは、セフトロザンが分解されて失活しないように、細菌が産生するβラクタマーゼを阻害するために入っています。

βラクタマーゼ阻害剤を配合した抗菌薬

βラクタマーゼ阻害剤は、タゾバクタムのほかにも、スルバクタムやクラブラン酸などがあります。

代表的なβラクタマーゼ阻害剤入りの抗菌薬は以下のとおりです。

▽注射薬

・ユナシン…アンピシリン/スルバクタム
・ゾシン…ピペラシリン/タゾバクタム
・スルペラゾン…セフォペラゾン/スルバクタム
・ザバクサ…セフトロザン/タゾバクタム

▽内服薬

・オーグメンチン、クラバモックス…アモキシシリン/クラブラン酸
・ユナシン…スルタミシリン(腸管でアンピシリンとスルバクタムに分解)

βラクタマーゼ阻害剤入りの抗菌薬は、注射薬で4種類、内服薬で2種類あります。ザバクサはゾシンと同じタゾバクタムの配合剤です。

セフトロザンはセフタジジムに構造が似ている

セフトロザンって一体何者?

構造は第3世代セフェムの注射薬セフタジジムに類似。側鎖は違うけど、抗菌スペクトルも似ています。

セフトロザンは抗菌スペクトルから、第3世代のセフェム系薬です。

第3世代セフェム系薬の抗菌スペクトルは?

第3世代セフェムはスペクトルの違いから大きく2種類に分類されます。

以下のように、緑膿菌に活性があるかどうかです。

・第3世代セフェム(緑膿菌活性なし)…セフトリアキソン、セフォタキシム
・第3世代セフェム(緑膿菌活性あり)…セフタジジム、セフォペラゾン、(セフトロザン

セフトロザンは緑膿菌に抗菌活性のある第3世代のセフェムです。

第3世代セフェム(緑膿菌活性なし)の抗菌スペクトルは?

下記のとおりです。

  • グラム陽性球菌…レンサ球菌、黄色ブドウ球菌など
  • グラム陰性桿菌…PEK(プロテウス、大腸菌、クレブシエラ)、HM(インフルエンザ菌、モラクセラ)、院内感染(シトロバクター、エンテロバクター、セラチアなど)……など。

グラム陽性球菌から腸内細菌、上気道感染、院内感染で問題となる菌まで幅広いスペクトルを有します。

セフトロザンの抗菌スペクトルは?

上記の抗菌スペクトルに加えて、緑膿菌活性を持っているのが特徴です。

一方で、グラム陽性球菌の活性が落ちています。レンサ球菌などグラム陽性球菌にも効きますが、弱いので第一選択にはなりません。

セフトロザンは抗緑膿菌活性のあるセフタジジムと類似のスペクトル。緑膿菌を含めて、おもにグラム陰性桿菌に広く効く薬です。

セフトロザンは特に、緑膿菌の耐性機序に安定である

緑膿菌にさらに効きが良くなった。

安定した効果が期待できる!ここがセフトロザンのいいところです。

緑膿菌は薬剤耐性を獲得する名手

緑膿菌は抗菌薬が効きにくい。

耐性機序で主要なものは3つです。

  • 外膜透過性低下…抗菌薬が作用点に到達できない。グラム陰性桿菌には抗菌薬の作用点であるペプチドグリカンの前に、外膜があって、ポーリンと呼ばれるタンパクチャネルを通過できないと効果を発揮できない。
  • 抗菌薬の不活化亢進…βラクタマーゼを産生して抗菌薬を無力化させる。ESBL、AmpCなど。
  • 排出ポンプによる機能亢進…ペプチドグリカンに達する前に薬剤が菌外へ排出される。

緑膿菌は、もともと抗菌薬が効きにくいのに、使用中に耐性となることもあり、治療に難渋するケースもあります。

セフトロザンは、いずれの耐性機序に対しても安定!

ポーリンの欠損、AmpC亢進、薬剤排出タンパク質のいずれに対しても安定であることが示されています。

以下、ザバクサ配合点滴静注用インタビューフォームより。

セフトロザンの抗P. aeruginosa活性に及ぼすAmpCβ-ラクタマーゼの発現レベルの影響と、AmpCβ-ラクタマーゼに対する安定性

セフトロザンの抗P. aeruginosa活性に及ぼすAmpCβ-ラクタマーゼの発現レベルの影響と、P. aeruginosaから精製したAmpCβ-ラクタマーゼに対するセフトロザンの安定性を検討した試験において、セフトロザンはP. aeruginosaのAmpC酵素に対する親和性が低く、AmpCによる加水分解を受けず安定であった。
外膜蛋白質ポーリン(OprD)の欠損又はその変化はP. aeruginosaのカルバぺネム系抗菌薬に対する耐性機構の1つであるが、OprD変異のあるP. aeruginosaに対してセフトロザンは抗菌活性を示し、OprDの欠損による影響を受けなかった
P. aeruginosaの非酵素的耐性機構である薬剤の能動的排出機構に介在する排出ポンプ(MexAB- OprM、MexCD-OprJ、MexEF-OprN 及びMexXY-OprM)を過剰発現した菌株に対するセフトロザンのMICは、親株に対するMICと比較して上昇しなかったことから、セフトロザンはこれらの排出ポンプの基質ではないことが示された。

セフトロザンは、多剤耐性を示す緑膿菌に対しても安定した効果が期待できるのが良いところです。

セフトロザンはタゾバクタムを配合して、スペクトルをさらに拡大

タゾバクタムを配合することでスペクトルが拡大しました。
大きく2つの領域です。

  1. ESBL産生菌
  2. 一部の嫌気性菌

ESBL産生の腸内細菌にも効く

ザバクサ(セフトロザン/タゾバクタム)はESBL産生菌に対しても抗菌力を発揮します。

タゾバクタムは、抗菌薬を分解するESBLという酵素を阻害するからです。つまり、グラム陰性桿菌(緑膿菌を含む)にプラスしてESBL産生菌にも効くようになりました。

代表的な細菌は以下のとおりです。

  • ESBL産生の大腸菌
  • ESBL産生のクレブシエラ
  • ESBL産生のプロテウス…など
ESBLは拡張型βラクタマーゼのこと

βラクタマーゼの強力版で、ペニシリンや、第1から第4世代のセフェム系まで分解してしまう酵素です。

ペニシリナーゼに安定な⑴セファゾリン、⑵セフォチアム、⑶セフトリアキソン、⑶セフタジジム、⑷セフェピムなども効きません。

βラクタマーゼ阻害剤のタゾバクタムは、ESBLの阻害活性を有するので、単独では無効だったセフトロザンがESBL産生の腸内細菌にも効くようなりました。

ちなみに、以下の抗菌薬もESBL産生菌に効果が認めらます。
・セファマイシン系のセフメタゾール
・オキサセフェム系のラタモキセフ
・カルバペネム系薬など

ザバクサは、グラム陰性桿菌(緑膿菌を含む)に加えて、さまざまな抗菌薬に耐性を示すESBL産生菌にも効きます。

一部の嫌気性菌にも効く

多くの嫌気性菌もβラクタマーゼを産生するので、ータゾバクタムを配合することで、スペクトルが拡大します。

バクテロイデス、フラジリスなど一部の嫌気性菌にはin vitroで抗菌活性が認められている。一方で、それ以外や、グラム陽性の嫌気性菌などには効きません。

以下、ザバクサ配合点滴静注用の審議結果報告書より

申請適応菌種のうち、バクテロイデス属について、B. fragilisに対するセフトロザンの MIC50/90は0.06/0.25μg/mLであったが、B. thetaiotaomicro 及び B. distasonis に対しては、それぞれ5/6株及び3/3 株でMICが32μg/mL以上と高値であり、B. fragilisの抗菌活性は確認されたが、それ以外の菌種に対しては得られているデータからは抗菌活性は確認されていないと考える。

単独では嫌気性菌に無効であったセフトロザン。タゾバクタムを配合することで嫌気性菌にスペクトルが拡大するものの、抗菌活性はバクテロイデス・フラジリスなど一部に限定的です。

腹腔内感染症ではメトロニダゾールとの併用が必須

おおむね、嫌気性菌に弱い

ザバクサは、嫌気性菌が起炎菌となりうる腹腔内感染症では、メトロニダゾールとの併用が必須です。一部を除き、嫌気性菌への抗菌活性が認められていないからです。

一方、尿路感染症では単独でOKです。

通常、成人には1回1.5g(タゾバクタムとして0.5g/セフトロザンとして1g)を1日3回60分かけて点滴静注する。
なお、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍に対しては、メトロニダゾール注射液と併用すること。

ただし、尿路感染症であっても、嫌気性菌の関与を強く疑う場合には、併用する必要があると考えられます。

カルバペネマーゼは阻害できない!

CREは聞いたことがありますか?

カルバペネム耐性の腸内細菌科細菌
(Carbapenem-resistant enterobacteriaceae:CRE)のことです。

カルバペネマーゼを産生してカルバペネム系薬が効かないだけでなく、通常全てのβラクタム薬に耐性を示します。

タゾバクタムはカルバペネマーゼを阻害できないので、ザバクサは薬剤耐性菌であるCREには無効です。

ザバクサの適応は大きく3つ

ザバクサが使えるのは、以下の感染症です。

  • 尿路感染症
  • 腹腔内感染症
  • 肺炎、敗血症(2019年12月追加)

海外の臨床試験をサラッと確認します。

腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症

  • 対象者は、腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症患者 1083例
  • ザバクサ1.5g×3/日 vs レボフロキサシン750mgを1日1回
    (※国内のLVFXは1日500mg)
  • 主要評価項目は、ME集団のTOC時点の細菌学的効果※ME:Microbiologically evaluable ※TOC(Test of cure):治験薬最終投与後7日±2日
  • 結果はザバクサ群84.7%、レボフロキサシン群75.4%
    →ザバクサはレボフロキサシンに対して非劣性であることが検証されました。

参考文献)CXA-cUTI-10-04/05 試験

腹腔内感染症

  • 対象者…複雑性腹腔内感染症患者 993例
  • (ザバクサ1.5g×3/日+メトロニダゾール0.5g×3/日)vs メロぺネム1g×3/日
  • 主要評価項目:CE 集団のTOC時点の臨床効果※CE:Clinically evaluable ※TOC:26〜30日
  • 結果はザバクサ+メトロニダゾール群 94.1%、メロペネム群 94.0%
    →ザバクサ+メトロニダゾール群は、メロペネムに対して非劣性であることが検証されました。

参考文献)CXA-cIAI-10-08/09 試験

肺炎、敗血症

  • 対象者…人工呼吸器を装着している院内肺炎患者726例
  • ザバクサ3g×3/日 vs メロぺネム1g×3/日
  • 主要評価項目:ITT集団のTOC時点の臨床効果(肺炎)※ITT:Intent-to-treat  ※TOC:治療終了後7〜14日
  • 結果はザバクサ群 54.4%、メロペネム群 53.3%
    →ザバクサ群は、メロペネムに対して非劣性であることが検証されました。

参考文献)008試験(国際共同第Ⅲ相臨床試験)

ザバクサの適応は大きく、尿路感染、腹腔内感染症、肺炎・敗血症の3つ。尿路感染はレボフロキサシンと、腹腔内感染症、肺炎・敗血症ではメロペネムと比較して非劣性です。

臨床の位置付けは?

カルバペネム系を温存するための経験的治療に

以下のエンピリックセラピーに使用する!

  • 膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症
  • 腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍など腹腔内感染症
  • 敗血症、肺炎(院内肺炎が対象でした)

・臓器ごとに想定される起炎菌を広くカバーした抗菌薬を選択する場面です。尿路感染、敗血症、肺炎では単独で、腹腔内感染症ではメトロニダゾール(MNZ)と併用で。

もちろん、なんでもかんでもザバクサではなくて、とくに薬剤耐性菌の関与が疑われる場合の選択肢の一つで、カルバペネムの代替薬としての位置付けになると考えられます。(対象者はできる限り絞り込んだ上で)

デ・エスカレーションが大前提。

投与前には必要な細菌培養試験を実施して、投与後の培養結果に基づき、スペクトルが狭い抗菌薬への変更を考慮することも、耐性菌防止の観点から重要です。

ザバクサは、経験的治療においてカルバペネム系を温存するための代替薬として有用です。といっても、1バイアルあたり6430円と高価なので、使う場面はかなり限られますが……。

薬剤耐性菌に対する標的治療に

尿路感染、腹腔内感染症、敗血症、肺炎の標的治療として。

・起炎菌が明らかになった場合に、その細菌に感受性があり、組織移行性に優れた最適な抗菌薬を選択するデフィニティブセラピーに使用する。

ザバクサは、特に緑膿菌に安定した効果が期待できる。
ESBL産生菌もOKですが、重症例ではカルバペネムの選択が望ましい。

MNZの併用は不要?!

嫌気性菌の関与がないと判明したなら、腹腔内感染症であっても、MNZの併用は不要だと考えられます。保険適応的にどうなのか確認が必要ですが、不要なスペクトルをカバーする必要はないはずです。

ザバクサは、細菌培養試験で薬剤耐性菌が同定された場合、標的治療の選択肢の一つとして、ここぞという時に活躍できる薬だと思います。

まとめ

最後にまとめておきますね。

ポイントは以下の7つです。

  1. ザバクサは第3世代セフェム系セフトロザンとβラクタマーゼ阻害剤タゾバクタムの配合剤。
  2. セフトロザンはセフタジジムと構造が似ており、緑膿菌に安定した抗菌作用を示す。
  3. タゾバクタムを配合することで、ESBL産生菌を含めた薬剤耐性菌にスペクトルが拡大。
  4. 一部の嫌気性菌にも効くが、腹腔内感染症には嫌気性菌をターゲットにメトロニダゾールとの併用が必須。
  5. 適応は尿路感染症(単独,1.5g×3)、腹腔内感染症(MNZ併用,1.5g×3)、敗血症・肺炎(単独,3g×3)の大きく3つです。
  6. 臨床での位置付けは、カルバペネム系薬温存のためのエンピリック治療、ESBL産生菌、緑膿菌など多剤耐性菌に対する標的治療の選択肢の一つとして用いるのがベター
  7. 抗菌薬適正使用、薬剤耐性菌防止の観点から、対象は限定的に、デ・エスカレーションを考慮することが大切(乱用はダメ)

★ ★ ★ ★ ★
今回は、ザバクサ配合点滴静注用についてポイントを解説しました。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

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