今回のテーマはゾルトファイ配合注!
2019年9月から使用できるようになりました。
・インスリンとGLP-1作動薬を組み合わせた製剤です。一体どんな特徴がある薬なのか?
内容をギュッと凝縮して解説します。
ゾルトファイを理解するための4つのポイント

ゾルトファイの特徴は?大きく4つのポイントに集約できます。
- 持効型インスリンとGLP-1製剤の配合注
- 組み合わせの相性が良い(相互に副作用を軽減できる)
- コンプライアンスの向上が期待できる!
- 1ドーズという新しい概念(1単位+0.036mg)
1)持効型インスリンとGLP-1製剤の配合注
ゾルトファイは持効型インスリンとGLP-1の配合剤。組み合わせは以下のとおりです。
- インスリン…トレシーバ(インスリンデグルデグ)
- GLP-1製剤…ビクトーザ(リラグルチド)
デバイスは操作がしやすいフレックスタッチです。
インスリンとGLP-1製剤の併用療法は、良好な血糖コントロールが得られない場合の選択肢として、糖尿病治療ガイド2018-19でも推奨されています。
2)インスリンとGLP-1の組み合わせは相性が良い
一番のメリットは何か?
インスリンとGLP-1を組み合わせることで、相互に用量を減らせる点です。インスリンによる低血糖や体重増加を減らし、GLP-1による胃腸障害を軽減する効果が期待できます。
相性が良いのが一番のメリットですね。
3)コンプライアンスの向上が期待できる
インスリンとGLP-1製剤を2剤併用している人がいます。
○単位と△mgで単位が違うので、打ち間違うリスクは低いものの、毎日の注射手技は大変で患者さんの負担も大きいです。
2種類を1剤にまとめたゾルトファイ配合注はコンプライアンスの向上が期待できます。
4)1ドーズという新しい概念(1単位+0.036mg)
1ドーズの中身は以下のとおり
・インスリン 1単位、GLP-1 0.036mg
最大投与量は50ドーズ(50単位と18mg)です。
インスリンとGLP-1の配合割合が固定なので、それぞれを細かく調節することはできません。
インスリンは◯単位、GLP-1は△△mg、ゾルトファイは□□ドーズ、単位が違うのもややこしいですね。
ゾルトファイの特徴をまとめると、ざっとこんな感じです。
ゾルトファイの国内臨床試験も確認!

サラッと臨床試験を確認します!どちらも対象は2型糖尿病患者です。
インスリン療法患者が対象:トレシーバと比較
▽ゾルトファイ vs トレシーバ
- HbA1cの変化率→優越性が示された
(-1.95% vs -0.65%) - 空腹時血糖の変化率→同程度であった
- 37.6ドーズ vs 41.3単位(24週の時点で)
- 低血糖→同程度であった(28.6% vs 30.5%)
- 体重…減少 vs 増加(有意に)
→ソルトファイは低血糖のリスクを増加させず、HbA1cをより低下させました。
参考文献)DUALⅡJapan試験、インタビューフォーム、添付文書
・インスリン療法で血糖管理が不十分な場合に有用です。GLP-1が入ることでインスリン量が減り、低血糖リスクを低減。体重を減少させる効果も期待できます。
経口糖尿病薬使用中の患者が対象:トレシーバ、ビクトーザと比較
▽ゾルトファイ vs トレシーバ vs ビクトーザ
- HbA1cの変化率
→トレシーバに非劣性、優越性も
(-2.42% vs -1.80%)
→ビクトーザに優越性
(-2.42% vs -1.80%) - 空腹時血糖の変化率
→トレシーバと同程度
→ビクトーザよりも大きかった - 27.7ドーズ vs 34.8単位 vs 1.8mg
(52週時点で) - 低血糖
→トレシーバより少なかった
(38.5% vs 54.6%)
→ビクトーザよりも多かった
(38.5% vs 2.2%)
→有効性が高く低血糖のリスクを増やさない(トレシーバ比較)。ビクトーザよりも優れた効果(低血糖は増えるけど)
参考文献)DUALⅠJapan試験、インタビューフォーム、添付文書
・経口糖尿病薬で血糖管理が不十分な場合の選択肢として有用です。インスリン量を抑えて低血糖を増やさないのがメリット。ビクトーザ単独よりも強い効果が期待できます。血糖管理に難渋してるケースでは早期から使うのもアリですね。
Question & Answer

疑問に思いやすいことを、まとめました。
1)DPP-4阻害薬との併用は?
有効性、安全性は確認されていません。作用機序からすると、DPP-4阻害薬と併用することはないと思います。
一方で、メトホルミンやα-GI、チアゾリジン系、SU薬、SGLT2阻害薬、グリニド系などとの併用はOKです。ただし、低血糖症状のリスクから併用注意になっています。
2)速効型、超速効型のインスリンと併用できる?
ゾルトファイを始める時には先行投与の基礎インスリン、混合型/配合溶解インスリン、GLP-1製剤を中止して切り替えるのが基本です。
速効型や超速効型はどうか?禁止の旨が書かれているわけではないので、併用は可能だと考えられます。
ただ、併用療法は国内臨床試験で有効性、安全性が検証されていません。
3)用量換算は?
インスリンにGLP-1が配合された製剤なので、どちらを基準に用量換算すれば良いのか?
切り替えの目安はありません。
たとえば、インスリンを○単位使ってたら、ゾルトファイ△ドーズとか、GLP-1を○mg使ってたらゾルトファイ△ドーズっていう風に用量を換算することはできないのです。
- GLP-1から切り替える場合は10ドーズ、減量は可能。
- インスリンから切り替える場合は10ドーズ。高用量からの切り替え時は16ドーズまで増量可能。
基本的には10ドーズからスタート。効果、反応を見ながら段階的に増量していきます。
4)糖尿病薬の先行投与が必要?
経口血糖降下薬やBasalインスリン、混合型/配合溶解インスリンなどで治療効果が十分得られないときに適応になります。
食事療法と運動療法に加えて薬物療法を行ったけど、HbA1cが目標に届かないときにゾルトファイの出番です。
本剤は食事療法・運動療法に加え、糖尿病用薬による治療で効果不十分な場合に使用を検討すること
※ゾルトファイ配合注、添付文書
2型糖尿病と診断されて、いきなりゾルトファイとはならないのですね。
5)保管方法は?
未使用のものは冷蔵庫で保管します。2〜8℃ですね。凍らさないように。
・使用後は室温(30℃以下)で3週間以内、25℃以下で4週間以内です。
多くのインスリン製剤が室温で4〜6週間なのに対して、ゾルトファイは3週間なので、説明の際には注意が必要ですね。
まとめ

ゾルトファイ配合注フレックスタッチ、ポイントは以下のとおりです。
- 基礎インスリンとGLP-1製剤の配合剤
→基礎インスリン、経口糖尿病薬で血糖管理が不十分な2型糖尿病患者に、優れたHbA1c低下作用を示す。 - お互いの副作用を軽減できるのがメリット
→インスリンによる低血糖、体重増加を減らし、GLP-1製剤による胃腸障害を軽減する効果も期待できる! - コンプライアンス向上が期待できる
→基礎インスリンとGLP-1製剤を一本に充填、注射手技の手間、煩雑さを解消できる。 - 1ドーズ=1単位+0.036mg
→新しい単位の概念。基本は10単位からスタートする。最大50ドーズ=50単位+18mg
今回はゾルトファイ配合注についてまとめました。日常の処方監査や処方提案等に活用していただけたらうれしいです♪
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