潰瘍性大腸炎・クローン病薬

潰瘍性大腸炎にJAK阻害薬?ゼルヤンツの特徴と使い方について

今回のテーマはゼルヤンツ錠!

一般名はトファシチニブです。

・世界初のJAK阻害剤で、国内では2013年7月に関節リウマチ、2018年5月から潰瘍性大腸炎にも使えるようになりました。

一体どんな薬なのか?ポイントを絞って解説します。さっそく見ていきましょう。

ゼルヤンツを理解するための4つのポイント

大きく4つのポイントがあります。

  1. JAK阻害薬?!
  2. 経口投与できるのがメリット!
  3. 安全性に懸念?!
  4. 中等症から重症の潰瘍性大腸炎、寛解導入と維持目的で使用

JAK阻害薬?!

JAKとはヤヌスキナーゼ(Janus kinase)のこと。ジャックと呼びます。

チロシンキナーゼの1種!
炎症性サイトカイン受容体の刺激を、STATを介して伝達するのが役割です。おもに免疫細胞や血球系細胞の増殖や分化、生存に関わってます。STATはシグナル伝達兼転写活性化因子のことです。

JAK-STATシグナルと呼ばれる伝達経路は以下のとおり。

  1. サイトカインが受容体に結合
    (インターロイキン、インターフェロンなど)
  2. JAKがリン酸化を受け活性化
  3. 細胞内ドメインにSTATが会合
  4. 活性化したSTATが2量体を形成し、核内へ移行
  5. サイトカイン関連の遺伝子が活性化し、免疫反応を促進

ゼルヤンツはJAKを阻害して、サイトカインによる刺激の伝達を妨げて免疫抑制作用を示します。

国内で使用できるJAK阻害薬は、ほかにもあります。

  • ゼルヤンツ(トファシチニブ)…関節リウマチ、潰瘍性大腸炎
  • オルミエント(バリシチニブ)…関節リウマチ
  • スマイラフ(ペフィシチニブ)…関節リウマチ
  • ジャカビ(ルキソリチニブ)…骨髄線維症、真性多血症

ゼルヤンツの適応は、関節リウマチ(RA)と潰瘍性大腸炎(UC)です。

メリットは経口投与できる点!

ゼルヤンツを含めJAK阻害薬は経口投与できます。

注射薬である生物学的製剤(TNF-α阻害薬など)とは異なる点で、患者さんにとって利便性が良いのがいいところです。

JAK阻害薬と生物学的製剤との比較は以下のとおり。

JAK阻害薬 vs 生物学的製剤
  • 投与経路…経口 vs 皮下または静脈
  • 構造…低分子 vs 高分子
  • 作用点…細胞内 vs 細胞外
  • 抗体の出現…なし vs あり

JAK阻害薬は低分子製剤!
生物学的製剤にように消化管で分解されないので、経口投与が可能です(ゼルヤンツのバイオアベイラビリティは74%)

細胞内に取り込まれて、刺激の伝達をストップします。サイトカインの刺激を細胞外でブロックするのが生物学的製剤です。

抗体産生の影響は?
生物学的製剤では中和抗体の産生により二次無効の原因となることもあります。一方で、JAK阻害剤では効果の減弱の恐れがありません。

ゼルヤンツは経口投与が可能で、利便性が良く、抗体産生による効果減弱の可能性もありません。

一方で、安全性には懸念が?!

JAK阻害薬はさまざまなサイトカインやホルモンの刺激伝達を妨げてしまうので、広範囲にわたる副作用が心配されます。

・IL(インターロイキン)、IFN(インターフェロン)、EPO(エリスロポエチン)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)など

生物学的製剤が特定のサイトカインをターゲットとしているのと大きく異なる点です。

 

JAKは4種類のファミリーがあります。

・JAK1、JAK2、JAK3、TYK2(チロシンキナーゼ2)

以下のように、広く組織に発現しており、いろんなサイトカインやホルモンの刺激を伝達することが分かってます。

  • JAK1…広範囲の組織に発現(IL、IFN-α、G-CSFなど)
  • JAK2…多くの組織に、造血細胞に特徴的(IL、IFN-γ、EPOなど)
  • JAK3…リンパ球(ILなど)
  • Tyk2…多くの組織に(IL、IFNなど)

ゼルヤンツはJAKファミリーに広く作用するので、さまざまな免疫異常疾患に効果が期待される一方で、全身性の副作用も問題になりやすいです。

注意すべき副作用は以下のようなものがあります。

  • 感染症…結核、B型肝炎、帯状疱疹、肺炎、敗血症など
  • 悪性腫瘍…固形がん、悪性リンパ腫
  • 血液障害…好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン低下
  • 肝機能障害、黄疸…AST/ALT増加、ビリルビン上昇
  • 脂質異常…総コレステロール、LDL-C、HDL-C増加

感染症の中でも、帯状疱疹には特に注意が必要といわれています。投与前の安全性のチェック、投与中の副作用のモニタリングが欠かせない薬剤ですね。

寛解導入、寛解維持目的で使用する

潰瘍性大腸炎は原因不明の炎症性疾患で、慢性的に寛解(症状が良くなる)と再燃(悪くなる)を繰り返す病態です。

薬物治療は2つの病期で使い分けます。

寛解導入目的に使用
  • 5-ASA(メサラジン、サラゾスルファピリジン)
  • ステロイド
  • 経口タクロリムス
  • 抗TNF-α製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ)
  • 抗IL-12/23p40モノクローナル抗体(ウステキヌマブ)
  • 抗α4β7インテグリンモノクロナール抗体(ベドリズマブ)
  • JAK阻害剤(トファシチニブ)
寛解維持目的で使用
  • 5-ASA製剤
  • AZA・6-MP(アザチオプリン・メルカトプリン)
  • 抗TNF-α製剤
  • 抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体
  • 抗α4β7インテグリンモノクロナール抗体
  • JAK阻害剤(トファシチニブ)

※サラゾスルファジンは大腸型に限る、※6-MPは適応外

ゼルヤンツは、潰瘍性大腸炎の難治例寛解導入または寛解維持目的で使う薬です。

・難治例というのは、副腎皮質ステロイドが効きにくい(抵抗例)または、ステロイドを中止すると症状が再燃する(依存例)ケースのことをいいます。

経口薬ではタクロリムス(プログラフ)も使用できますが、寛解導入のみの適応で、投与期間は3週間まで。TDMによる用量調節も必要です。

・ゼルヤンツの臨床的な位置付けは、TNF-α阻害薬やインテグリンモノクローナル抗体と同じで、有効性や安全性、患者さんのライフスタイル、コスト等を考慮して使い分けがされるものと考えられます。

参考文献)
炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016
潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針平成30年度改訂版

国際共同試験を確認

寛解導入試験(OCTAVE1)プラセボと比べてどうか?

ポイントだけをサラッと確認しておきますね。

  • 対象…前治療(ステロイド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、TNF-α阻害薬)の少なくとも1つの治療で効果不十分または忍容性不良の中等症から重症の活動期にある日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者
  • ゼルヤンツ vs プラセボ

▽結果は以下のとおり(ゼルヤンツ10mg×2 vs プラセボ)

  • 寛解率(全体   )…18.5% vs 8.2%(優越性、8週時点)
  • 寛解率(日本人)…22.4% vs 7.7%
    ※Mayoスコアが2点以下で、個々のサブスコアが1点以下、直腸出血サブスコアが0点の場合を寛解

→寛解率はプラセボに比べて優越性、日本人でも同様の傾向。

既存治療で効果不十分な場合の中等症から重症の潰瘍性大腸炎において、寛解導入効果がプラセボに比べて優越性が示されました。

寛解導入療法では10mg×2を8週間投与するのが基本です。

寛解維持試験(OCTAVE Sustain)プラセボと比べてどうか?

次は寛解維持試験です。

  • 対象…寛解導入試験(OCTAVE 1,2)のいずれか1試験を完了し、臨床反応(ベースライン時に比べMayoスコア3点以上かつ30%以上の低下があり、直腸出血サブスコアの1点以上の低下または絶対値が0点又は1点)が認められた日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者
  • ゼルヤンツ vs プラセボ

▽結果は下記(ゼルヤンツ10mg×2又は5mg×2 vs プラセボ)

  • 寛解率(全体   )…40.6%(34.3%) vs 11.1%(優越性、52週)
  • 寛解率(日本人)…66.7%(31.3%) vs 9.1%
    ※Mayoスコアが2点以下で、個々のサブスコアが1点以下、直腸出血サブスコアが0点の場合を寛解

→寛解率は10mg×2、5mg×2ともにプラセボに比べて優越性、日本人でも同じ傾向。

寛解率は“①10mg×2”と“②5mg×2”どちらもプラセボに比べて有用性が示されました。

維持療法では②を基本とし、効果不十分な時や過去の難治例では①への増量が認められています。

参考文献)N Engl J Med 2017376:1723-1736、ゼルヤンツインタビューフォーム、添付文書

処方チェックのポイント

投与前の検査値チェック項目は?

ゼルヤンツは骨髄抑制がかかるので、投与前の検査値チェックが必要です。基準値を下回る場合には、禁忌になります。

  • 好中球数が500/m㎥未満
  • リンパ球数が500/m㎥未満
  • ヘモグロビン値8g/dL未満

調剤前の確認、副作用モニタリングを忘れずに行うことが大切です。

腎機能、肝機能が悪い人の対応は?

ゼルヤンツは約70%が肝代謝、30%が腎排泄されます。

・重度の肝障害の患者さんには禁忌です。

“中等度の肝機能障害”や“中等度、重度の腎機能障害”のある人では減量する必要があります。

1回投与量を減量するか、減量することができない場合は投与回数を減らすといった投与量の調節が必要です。

相互作用のあるクスリは?

ゼルヤンツの成分であるトファシチニブはCYP3A4、一部CYP2C19で代謝されます。

薬剤や食物との併用には注意が必要で、併用薬のチェックが欠かせません。

阻害→トファシチニブ曝露量↑
  • マクロライド系…クラリスロマイシン、エリスロマイシン
  • ノルフロキサシンなど
  • アゾール系抗真菌薬…イトラコナゾール、フルコナゾールなど
  • カルシウム拮抗薬…ベラパミル、ジルチアゼムなど
  • アミオダロン
  • シメチジン
  • フルボキサミン
  • 抗HIV薬…リトナビル、インジナビルなど
  • 抗ウイルス薬…テラプレビル
  • グレープフルーツ……など

ほかにもあるので、添付文書の確認を!併用時にはトファシチニブの減量(1回量↓または投与間隔延長)を考慮する必要があります。

誘導→トファシチニブ曝露量↓
  • 抗てんかん薬…バルビツール酸誘導体、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン等
  • リファンピシン、リファブチン
  • セイヨウオトギリソウ……など

詳しくは添付文書を見て下さいね。併用時にはCYP3A4誘導作用のない、または弱い薬剤への変更を考慮することになっています。

まとめ

ゼルヤンツのポイントは以下のとおりです。

  • JAK阻害剤
    →ゼルヤンツは炎症性サイトカインの細胞内シグナル伝達(JAK-STAT経路)を妨げて免疫抑制作用を示す。
  • 経口投与できるのがメリット
    →注射剤の生物学的製剤と同じくらいの効果が得られる経口薬。患者さんの利便性が良い。
  • 安全性に懸念が!
    →多くのサイトカイン、ホルモンに作用するので生物学的製剤に比べ、全身性の副作用が問題となりやすい。
  • 中等症〜重症の潰瘍性大腸炎、寛解導入と維持目的で使用
    →既存薬で効果不十分な場合の選択肢。臨床的な位置付けはステロイド依存、抵抗性のある患者さんに。

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今回はゼルヤンツ錠についてまとめました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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