2022年9月20日から、オミクロン対応ワクチンの接種が始まりました。
もう、新しいワクチンがどんどん増えていて、よくわからなくなってきた!
と頭を抱える人も多いのではないでしょうか?
もちろん、私もその一人です。
そこで今回は
- 投与方法(対象者、追加免疫の有無)と
- 調製方法(解凍、1回量、採取本数、保存)
について、各社製剤ごとにまとめたので共有します。
国内で使用可能なワクチンは9種類です。
ファイザー社
②コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)
③コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)
④コミナティ筋注5~11歳用
⑤コミナティ筋注6ヵ月~4歳用
⑥コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)2023年2月28日承認
モデルナ社
⑦スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)
⑧スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)
武田社(ノババックス)
⑨ヌバキソビッド筋注
アストラゼネカ社
バキスゼブリア筋注( 2022年9月で終了)
順番に見ていきましょう!
ファイザー:mRNAワクチン
コミナティ筋注 (1価:起源株) | コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1) | コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) | コミナティ筋注 5~11歳用(1価:起源株) | コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) | コミナティ筋注 6ヵ月~4歳用 | |
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薬事承認 | 2021年2月14日 | 2022年9月12日 | 2022年10月5日 | 2022年1月21日 | 2023年2月28日 | 2022年10月5日 |
有効成分 | ①トジナメラン | ②リルトジナメラン | ①トジナメラン②ファムトジナメラン | ①トジナメラン①トジナメラン | ②ファムトジナメラン | ①トジナメラン①トジナメラン |
容量 | 0.45mL | 2.25mL | 2.25mL | 1.3mL | 1.3mL | 0.4mL |
貯法 | −90~−60℃ | −90~−60℃ | −90~−60℃ | −90~−60℃ | −90~−60℃ | −90~−60℃ |
冷蔵庫保管 | 2~8℃で1か月 | 2~8℃で10週間 | 2~8℃で10週間 | 2~8℃で10週間 | 2~8℃で10週間 | 2~8℃で10週間 |
有効期間 | 18ヵ月 | 18か月 | 18か月 | 18ヶ月 | 18ヶ月 | 18か月 |
対象者 | 12歳以上 | ※初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴あり | 12歳以上※初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴あり | 12歳以上5歳以上11歳以下 | 5歳以上11歳以下 | 6ヵ月以上4歳以下 |
投与方法 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 |
初回免疫 | 1回0.3mLを合計2回 (3週間の間隔) | 1回0.2mLを合計2回(3週間の間隔) | 1回0.2mLを合計3回(2回目…3週間、3回目…8週間の間隔) | |||
追加免疫 | 1回0.3mL | 1回0.3mL | 1回0.3mL | 1回0.2mL | 1回0.2mL | |
希釈 | 必要 生食1.8mL | 不要 | 不要 | 生食1.3mL | 必要生食1.3mL | 必要生食2.2mL | 必要
採取本数 | 6人分 | 6人分 | 6人分 | 10人分 | 10人分 | 10人分 |
希釈後の期限 | 6時間以内 2〜30℃ | 12時間以内 2〜30℃ | 12時間以内 2〜30℃ | 12時間以内 2〜30℃ | 12時間以内 2〜30℃ | 12時間以内 2〜30℃ |
解凍方法 | 冷蔵庫(2〜8℃) 室温(1〜30℃) | 冷蔵庫(2〜8℃) 室温(1〜30℃) | 冷蔵庫(2〜8℃) 室温(1〜30℃) | 冷蔵庫(2〜8℃) 室温(1〜30℃) | 冷蔵庫(2〜8℃) 室温(1〜30℃) | 冷蔵庫(2〜8℃) 室温(1〜30℃) |
解凍後の期限 | ※2h以内に希釈+希釈後6h以内に使用 | 最大8時間以内24時間以内 | 24時間以内 | 24時間以内 | 24時間以内 | 24時間以内 |
コミナティ筋注とRTU筋注の共通点
コミナティ筋注とRTU筋注の相違点
押さえておきたい違いは4つです。
- 有効成分
- 対象者
- 希釈の有無
- 希釈・充填後の期限
有効成分
オミクロン株BA.1対応
オミクロン株BA.4-5対応
コミナティRTUはオミクロン対応2価ワクチンです。起源株とオミクロン株BA.1(又はオミクロン株BA.4-5)対応のスパイクタンパク質を発現するmRNAを質量比1:1で含有しています。従来のコミナティ半量とリルトジナメラン(又はファムトジナメラン)半量を組み合わせた製剤ということですね。
対象者
コミナティRTUの対象は追加免疫のみです。つまり、起源株用(1回目と2回目)の接種を終えた人が、3回目又は4回目に接種できます。また、5回目の投与も可能です。追加免疫(3回目、4回目)の有無に関わらず接種対象とされています。また、対象年齢は12歳以上です。ここは後述するモデルナ社のオミクロン対応ワクチンと異なります。
・12歳以上の方
令和4年秋開始接種(オミクロン株対応2価ワクチンの接種)についてのお知らせ
・追加接種(3回目又は4回目)の実施の有無にかかわらず、日本国内で少なくとも初回接種(1回目・2回目)が完了している方又はそれに相当する接種が完了している方
・前回の接種から、一定期間が経過した方
コミナティRTUの接種タイミングは前回投与(2回目又は3回目、4回目)から5ヶ月が経過した時点になります。現在、投与間隔の短縮が可能か、議論されており、10月下旬に結論が出る予定です。
3 接種時期
コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)、コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) 電子添文通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種することができる。
3 接種時期
コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)、コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) 電子添文
通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。
希釈の有無
ここが最大の違いだと思いました。コミナティRTUは希釈が必要ありません。
名前にあるように、希釈の手間がなく、薬液を吸うだけでOKです。スパイクバックス(モデルナ)ワクチンと同じですね。集団接種会場等、調製担当者の負担が減るのは嬉しいポイント!
希釈が面倒なコミナティ筋注の調製方法はこちら
希釈・充填後の期限
ここは地味に変わっている部分です。コミナティRTUは充填後の使用期限が延長されています。1本目の注射器をゴム栓に穿刺した時点から、12時間以内は使用可です(コミナティ5〜11歳用ワクチン、モデルナ社ワクチンと同じ)。一方で、コミナティは生食1.8mLをバイアル内に注入した時点(希釈後)から、6時間以内に使用しなければなりません。みなさんご存知の通りです。
ここで注意です!
RTUの方は、1本目充填後から12時間以内とありますが短縮される場合があります。解凍後(室温に戻してから)24時間以内と別の期限が定められているからです(コミナティ5〜11歳用ワクチン、モデルナ社ワクチンと同じ)。
解凍時点(室温に戻して)から
- すぐに充填開始→12時間以内に使用
(解凍後、24時間以内なのでOK) - 14時間経ってから充填開始→12時間以内に使用
(解凍後、26時間となりOVER→充填後10時間以内へ短縮)
ここは盲点かも知れません。室温に放置して、長時間放置するケースはほとんどないと思いますが…。
あと、遮光しながら、2〜30℃の範囲で保存した場合という条件付きです!特に、夏場や冬場でも暖房が効いた部屋では温度管理にも気をつけましょう。
コミナティ筋注:製剤ごとの投与量
実際に投与するmRNA量は、製剤ごとに異なるのか?
調べてみると以下のとおりでした!

・「12歳以上のワクチン」はどれも同じ(30μg)
・「5~11歳のワクチン」は「12歳以上のワクチン」の1/3量(10μg)
・「6ヵ月~4歳のワクチン」は「12歳以上のワクチン」の1/10量(3μg)
コミナティ筋注 (1価:起源株) | コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1) | コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) | コミナティ筋注 5~11歳用(1価:起源株) | コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) | コミナティ筋注 6ヵ月~4歳用 | |
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容量① | 0.45mL | 2.25mL | 2.25mL | 1.3mL | 1.3mL | 0.4mL |
mRNA量② | 0.225mg | 0.225mg | 0.225mg | 0.130mg | 0.130mg | 0.040mg |
希釈③ | 生食1.8mL | 生食1.3mL | 生食1.3mL | 生食2.2mL | ||
液量④ (①+③) | 2.25mL | 2.25mL | 2.25mL | 2.6mL | 2.6mL | 2.6mL |
濃度⑤ (②÷④) | 0.1mg/mL | 0.1mg/mL | 0.1mg/mL | 0.05mg/mL | 0.05mg/mL | 約0.015mg/mL |
1回接種量⑥ | 0.3mL | 0.3mL | 0.3mL | 0.2mL | 0.2mL | 0.2mL |
1回mRNA量(⑤×⑥) | (30μg) | 0.03mg(30μg) | 0.03mg(30μg) | 0.03mg(10μg) | 0.01mg(10μg) | 0.01mg(3μg) | 約0.003mg
モデルナ:mRNAワクチン
スパイクバックス筋注 (1価:起源株) | スパイクバックス筋注 (2価:起源株/オミクロン株BA.1) | スパイクバックス筋注 (2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) | |
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薬事承認 | 2021年5月21日 | 2022年9月12日 | 2022年11月1日 |
有効成分 | ①エラソメラン | ① ②イムエラソメラン | エラソメラン① ②ダベソメラン | エラソメラン
容量 | 5mL | 2.5mL | 2.5mL |
貯法 | -20±5℃ | -20±5℃ | -20±5℃ |
冷蔵庫保管 | 2~8℃で30日間 | 2~8℃で30日間 | 2~8℃で30日間 |
有効期間 | 9ヵ月 | 9ヵ月 | 9ヵ月 |
対象者 | 12歳以上 | 12歳以上(2022年12月13日に拡大) ※初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴あり | 12歳以上(2022年12月13日に拡大) ※初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴あり |
投与方法 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 | 筋肉内に接種 |
初回免疫 | 1回0.5mLを合計2回 (4週間の間隔) | ||
追加免疫 | 1回0.25mL | 1回0.5mL | 1回0.5mL |
希釈 | 不要 | 不要 | 不要 |
採取本数 | 追加免疫…20人分 | 初回免疫…10人分追加免疫…5人分 | 追加免疫…5人分 |
希釈後の期限 | 12時間以内 2〜25℃ | 12時間以内 2〜25℃ | 12時間以内 2〜25℃ |
解凍方法 | 冷蔵庫(2~8℃) 常温(15~25℃) | 冷蔵庫(2~8℃) 常温(15~25℃) | 冷蔵庫(2~8℃) 常温(15~25℃) |
解凍後の期限 | 24時間以内 | 24時間以内 | 24時間以内 |
スパイクバックス筋注(1価:起源株)は、令和5年2月11日をもって、接種が終了しています。
スパイクバックス:1価と2価の共通点
スパイクバックス:1価と2価の相違点
押さえておきたい相違点は4つです。
- 有効成分
- 対象者
- 1回量
- 採取本数
有効成分
オミクロン株BA.1対応
オミクロン株BA.4/5対応
コミナティRTUと同様に、2価のスパイクバックスはオミクロン対応のワクチンです。起源株とオミクロンBA1株(又はオミクロン株BA.4-5)のスパイクタンパク質を発現するmRNAを質量比1:1で含みます。従来のスパイクバックスとイムエラソメラン(又はダベソメラン)を半量ずつ組み合わせた製剤ですね。
対象者
スパイクバックス(2価)は追加免疫のみ認められています(コミナティRTUと同様)。つまり起源株用(1回目と2回目)の接種を終えた人が、3回目又は4回目に接種できるわけです。先述のように、5回目の投与も接種対象とされています。
それから、2価のスパイクバックスは18歳以上12歳以上が対象です(コミナティRTUと相違同様)。
令和4年12月13日、接種対象者が12歳以上へ拡大されました!
(接種対象者)過去に初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴のある12歳以上の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。
スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)電子添文
あと、投与のタイミングはコミナティRTUと同じ。前回投与(2回目又は3回目、4回目)から5ヶ月3ヶ月が経過した時点です。
令和4年10月19日、3か月に短縮されました!
接種時期
通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。
スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)電子添文
投与量
ここは予想が外れました。2価のスパイクバックスは1回量が0.5mLです。追加免疫なので、1価のワクチンと同様に0.25mlと思っていたのですが…。起源株用0.25mLとBA.1用0.25mLを投与するかたちですね。
採取本数
5mL/バイアル
2.5mL/バイアル
2価のスパイクバックスは1瓶で5人分しか採取できません。容量が2.5mL(0.5mL×5)と従来の半量になっているからです。ここはメリットが大きいと思います。従来品は10〜20人分/瓶であったことから、予約人数を確保するのが大変だったので…。
武田ノババックス:組み替えタンパクワクチン
ヌバキソビッド筋注 | |
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薬事承認 | 2022年4月19日 |
有効成分 | SARS-CoV-2 rS 5μg |
容量 | 5mL |
貯法 | 2〜8℃ |
有効期間 | 9ヵ月 |
対象者 | 初回…12歳以上 追加… |
投与方法 | 筋肉内に接種 |
初回免疫 | 1回0.5mLを合計2回 (3週間の間隔) |
追加免疫 | 1回0.5mL 前回投与から6ヶ月空ける |
希釈 | 不要 |
採取本数 | 10人分 |
充填後の期限 | 6時間以内 2〜25℃ |
アストラゼネカ:ウイルスベクターワクチン
バキスゼブリア筋注 | |
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薬事承認 | 2021年5月21日 |
有効成分 | コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター)5×1011 ウイルス粒子量 |
容量 | 5mL |
貯法 | 2〜8℃ |
有効期間 | 6ヵ月 |
対象者 | 初回…原則、40歳以上 |
投与方法 | 筋肉内に接種 |
初回免疫 | 1回0.5mLを合計2回 (4〜12週間の間隔) |
追加免疫 | |
希釈 | 不要 |
採取本数 | 10人分 |
充填後の期限 | 室温…6時間以内 2~8℃…48時間以内 |
まとめ


今回はコロナワクチンの投与・調製方法についてまとめました。
各社・製品ごとに、対応が異なる部分があります。
特に、ややこしいのがスパイクバックスです。
1価:スパイクバックス筋注 | 2価:スパイクバックス筋注 | |
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追加免疫の投与量 | 0.25mL | 0.5mL |
追加免疫の対象年齢 | 12歳以上 | →12歳以上(同じになりました!) |
それから、コミナティRTUにも懸念があります。希釈が不要になりましたが、起源株用は希釈が必要なままです。思い込みによると調製間違い(希釈不要なのに希釈する、希釈必要なのに希釈を忘れる)の可能性もゼロではありません。
あと、充填後の温度管理が微妙に異なるのも意外と知られていないと思います。
- コミナティ…2〜30℃
- スパイクバックス…2〜25℃
円滑かつ安全にワクチン接種を進めるのが薬剤師の役割です。各社・製剤ごとの違いを把握し、正しい情報の発信と調製手順の遵守が大切と感じました。