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ポリファーマシーを防ぐ!減薬を妨げる要因と解決方法を考察してみた

「ポリファーマシー」に、社会の注目が集まっています。

多剤服用にともなう副作用の危険や医療費の圧迫、残薬問題等の理由からです。不要な薬はできるだけ飲まない方がよいに決まっています。

それなら、薬を減らせばいいだけの話、ですが減薬は本当にむずかしくて一筋縄ではいきません……(>_<)

今回はポリファーマシー対策において、減薬を妨げる要因と解決方法を考察しました。

ポリファーマシーとは?

言葉の定義

Poly(多い)+Pharmacy(くすり)という意味の造語です。多剤併用または多剤服用を意味しています。

薬の種類がいくつを超えると、ポリファーマシーになるかという明確な基準は実はありません。4〜6種類以上が目安とするのが一般的です。

ポリファーマシーは臨床的に必要以上に、または不必要に薬を処方されている状態のこと

高齢者はとくに薬の種類が多い

薬剤師なら当たり前の感覚ですね。厚生労働省の調査結果は以下のとおりです。

・7種類以上飲んでいる高齢者の割合は、65歳以上で約4割、80歳を超えると約6割に増加し、年齢とともに服薬数が増える傾向があります。

▽年齢ごとの服薬数

  • 65〜69歳…39.4%
  • 70〜74歳…43.4%
  • 75〜79歳…46.2%
  • 80歳以上…61.5%

※平成30年度診療報酬改定、結果検証に係る特別調査速報値

高齢者は多剤併用、多剤服用が当たり前の状況です。複数の疾患に対して、複数の診療科や病院、クリニックなどを受診されています。

以前に26種類飲んでいる人を見ました。薬だけでお腹いっぱいと言っていましたね。(^_^;)

たくさんの薬=Polypharmacy?

薬の種類が多いとポリファーマシーを連想します。しかし、必ずしもそうとは限りません。

服薬の必要性が高くて、安全性の問題なければポリファーマシーではないのです。

たとえば、心臓カテーテル治療後の患者さんを考えてみます。以下、8種類の薬を飲んでいました。

  1. アスピリン
  2. チエノピリジン系
  3. PPI
  4. βブロッカー
  5. ARB
  6. Caブロッカー
  7. スタチン
  8. ループ利尿薬

薬のラインナップは約束処方なのかと思うくらい、循環器領域でよく見られる定番レシピです。「こんなに薬を飲まないといけないのか」ときどき、患者さんから質問されることもありますよね。

ポリファーマシーといえるのか?処方目的を確認すると下記です。

  • DAPT→ステント血栓症の予防
  • PPI→消化管出血の予防
  • ARB、Caブロッカー、ループ利尿薬→血管拡張、利尿による心臓保護または降圧
  • スタチン→動脈硬化予防

いずれの薬もPCI後の薬物治療として必要性が高いと考えられます。

現時点で副作用もなく症状も安定していれば、服薬の必要性を説明してきちんと飲んでいただくよう指導するのが基本的な対応です。8種類と薬の種類は多いけど、ポリファーマシーとはいえません。

・多剤併用であっても、服薬の必要性が高く、安全性の問題なければポリファーマシーと判断することはできません

1種類でも不要な薬=Polypharmacy

1種類でも不要な薬であるなら、ポリファーマシーです。薬の数だけで判断できるわけではないんですね。

具体的に見てみましょう。85歳のおばあちゃんが入院されました。服薬歴は下記の1剤のみです。

①フロセミド

ときどき見かけるケースですね。処方目的ははっきりせず、足の状態を見ると、乾燥気味でした。浮腫は認めず、血液検査ではやや脱水の傾向があります。

服薬の必要性はどうでしょうか?

明らかな浮腫がなく、血圧や心機能、尿量なども問題なければ、服薬の必要性は低いと考えられます。脱水症状は副作用の可能性があるので、中止や減量について主治医への相談が必要です。

1種類であってもポリファーマシーといえます。

また、臨床でよく見かける降圧剤を1種類だけ飲んでいる患者さん。血圧の推移が降圧目標を大きく下回っていたり、ふらつきやめまいなど副作用が疑われるときには、1種類であっても服薬の必要性は低く、同じくポリファーマシーですね。

・多剤併用でなくても、服薬の必要性が低く、副作用が疑われる場合にはポリファーマシーと判断されます。

潜在的な副作用のリスクがある

ポリファーマシーの弊害といえば、以下のようなものがあります。

  • 薬剤費の増大による医療費の高騰
  • 有害事象発生の危険性
  • 残薬や服薬アドヒアランスの低下
  • 調剤過誤の問題など

中でも、潜在的な副作用のリスクが高まるのが一番の問題です。

「では、どのくらいの頻度なのか」というと、薬物有害事象の発生率が急激に上昇するのは、投与している薬剤が6種類を超えたとき、といわれています。

1995~2010年に東京大学病院の老年病科に入院された、65歳以上の高齢者2412人を対象に実施した後向き調査によれば、252人(約10.5%)に薬物による有害事象を認めました。

服薬数ごとに副作用の頻度を調査すると以下のとおりでした。

  • 1〜3種類…6.5%
  • 4〜5種類…8.9%
  • 6〜7種類…13.1%
  • 8〜9種類…11.9%
  • 10〜種類…13.9%

→6種類を超えると副作用のリスクが急上昇することが明らかに。

参考文献)Kojima T et al., Geriatr Gerontol Int 2012;12:761-762

65歳以上+多剤併用(6種類以上)の場合、副作用が特に起こりやすいので、副作用の確認やモニタリングが大切ですね。

処方カスケードが引き起こす原因

クスリが薬を呼ぶ、処方カスケードがポリファーマシーの原因になります。

処方カスケードとは、薬剤の服用で生じた有害事象に対して副作用の可能性を精査せずに、その症状に対して薬剤が処方されること。

有名なのはACE阻害薬による空咳の副作用に、咳止めが処方されるケースですね。本当はACE阻害薬をARBに変更すると症状を緩和できます。しかし対症療法の出番ということで鎮咳薬が処方されてしまうのです。

さらに、処方カスケードは続きます。

鎮咳薬によって嚥下機能の低下を招き誤嚥性肺炎を発症する→抗菌薬が処方され下痢になる→止瀉薬が処方される→便秘になる…というように対症療法が繰り返されていく。その過程でポリファーマシーが形成されます。

ポリファーマシー対策、減薬を妨げる要因とは


薬を減らすのはなかなかむずかしいです。大きく2つの要因があると、減薬を試みる中で感じています。

  1. 医師は自分以外の処方を触りたがらない
  2. 薬剤師は減薬の可否に確信が持てない

順番に説明しますね。

1)医師は、自分以外の処方を触りたがらない

薬剤師であれば共感できる部分ですよね。

特に病院薬剤師は困っています。「ほかの医師が処方した薬はそのまま」というスタンスをとる医師が多く、入院患者さんが持参された薬のうち、他院の処方は変更がむずかしいからです。

減薬について処方提案を行うと、返ってくる言葉は大抵決まっています。

「前の先生が処方した薬なので、勝手に触れない」
「現時点で特に副作用が出ていなければ、そのままでいいんじゃないかなあ」

もう決まり文句といってもいいほど……ですね。

理由はよくわかりません。おそらく、長年診療された前医の処方を尊重している、または処方変更に伴うリスクの方を重視しているとかでしょうか。

自分の処方に関しては減薬の提案を聞き入れてくれる医師であっても、他人の処方を削減・整理することに関しては、急に抵抗を示すようになります。その結果、持参薬Doが実行されるのです。

どうしたものかと、悩んでいるわけですけど、今のところいいアイデアが思いつきません(-_-。)

大幅な診療報酬の改定や保険点数の見直しなどがあれば少しは変わるのかも……限界を感じる部分ですね。

2)薬剤師は減薬の可否に確信が持てない

ポリファーマシー対策を進める薬剤師側の問題ですね。実際やってみるとわかりますが、不安が付き纏います。

「中止して病状が悪化したらどうしよう?」
「何かあってからでは遅いので薬を中止しないほうがいいのでは?」

…というふうに。

とりわけ自分の得意分野でない薬は悩みになやみます。

例えば、精神科や心療内科の薬をほとんど扱わない薬剤師にとって、向精神薬の減薬や整理はハードルが高いです。中止や減量に伴う症状の悪化を恐れて、提案を見送ることも少なくありません。

薬剤師が自信を持って処方整理を行なうためには、「薬をやめるベネフィット」と「薬をやめるリスク」を正しく評価する必要があります。

これが結構むずかしくて悩みながらなんとか答えをひねり出している人が多いのではないでしょうか。ポリファーマシー対策は責任が伴うヘビーな仕事といえます。

薬剤師が考えるポリファーマシーの解決方法

薬剤師がリードしていくのがbetterです。

医師と協働して行うべきものですが、どちらかというと薬剤師の方が主導でやっていく方が上手くいくと思います。なぜなら日常業務である処方の適正化(適応症や投与量、相互作用のチェックなど)がまさにポリファーマシー対策だからです。

では、減薬はどのように進めればいいのか、薬剤師に必要なスキルは大きく2つあると考えます。

  1. 処方意図を読み解く力を鍛えよう
  2. 薬剤性の意識を高めて処方カスケードを予防

1)処方意図を読み解く力を鍛えよう

そもそも処方意図がわからないと不適切処方かどうかわからない

減薬の対象は不適切な処方です。その判断に処方の意図を読み解く力が必要になります。

たとえば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を飲んでいる人を考えてみましょう。

まずは処方意図が何かです。処方の妥当性を判断するために、どうしてPPIを飲んでいるのか、病歴や併用薬、患者さんからの聞き取りによって確認します。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療であるなら、投与期間はそれぞれ8週間と6週間です。それ以上であれば、潰瘍治療の経過にもよるものの、基本的には必要以上の処方と判断できます。

NSAIDsや低用量アスピリン併用による消化性潰瘍予防の場合はどうか?

二次予防、つまり消化性潰瘍の既往がある場合には適応が認められており、ガイドラインでもPPIの投与が推奨されています。安全性に問題なければ、必要ですね。

それに対して、一次予防の場合は適応外。必要以上の処方と判断することができます。ただし、消化管出血を予防するためにPPIが”提案”されているので、一律に必要性が低い処方と判断できません。消化管出血リスクを個々で考慮する必要があります。

仮に、抗凝固薬併用に対するPPIの一次予防は、エビデンスに乏しく適応もなければガイドラインでも推奨されていません。基本的には必要以上の処方ですね。

参考文献)消化性潰瘍診療ガイドライン2015改訂第2版

つまり、処方の妥当性は処方意図がわかってはじめて判断できるわけです。

薬剤師が処方意図を読み解く力を身につければ、必要性の高い処方と低い処方の区別ができるようになります。処方の削減や整理がはかどりますね。

・処方意図を検討することからポリファーマシー対策は始まります。処方の削減をリードしていく薬剤師にとって必要なスキルです。

処方意図を読み解く力を身につけるためには?

答えは簡単。日常業務においていつも処方意図を意識することです。

「この薬は何のために処方されているのだろう?」
「処方の必要性はどうなの?」

服薬指導や調剤監査の場面で考える習慣を身につけると、自然に力がついてきます。

新人の頃はわからないことが多いです。

でも大丈夫。書籍で調べたり、先輩に聞いたり、可能であれば医師に教えてもらう。繰り返していくうちに、薬の使い方や臨床における位置付けについて知識が養われ、処方意図がだんだんわかるようになります。

まずは、意識することが大事ですね。

2)薬剤性の意識を高めて処方カスケードを予防

処方を増やさないことも大事!

逆の発想です。減薬も大切だけど、不適切な処方を増やさないことも大切ですね。

まさに処方カスケードを防ぐという視点です。

そもそも、処方カスケードが起こるのは、薬の副作用を疑わないからですよね。「疑わないから、薬をやめずに、薬が足される」繰り返しによってポリファーマシーが形成されます。

もちろん処方カスケードは医師側の問題です。処方のときに副作用を精査せずに対症療法を行うのが原因ですよね。

ただし、薬剤師にも落ち度があります。副作用に対する対症療法である点を見逃しているからです。結局のところ、医師と薬剤師どちらにも問題があると思います。

処方カスケードを防ぐためにはどうすれば?

副作用を疑う習慣を身につけること。医師だけでなく、薬剤師もチェック機構を強化する必要があります。

例えば、アーガメイトゼリー®︎やケイキサレート®︎が処方されたときを考えてみましょう。

「もしかして、カリウム(K)を増加させる薬を飲んでいないのか」

最初に薬剤性を疑うことが大切です。薬効重複や投与量、相互作用などルーチンのチェックの前に、処方カスケードの可能性は大丈夫?という発想が欲しいところですね。

もちろんKが増加する原因は薬剤性だけではありません。だけど、ACE阻害薬やARB、抗アルドステロン薬などで高カリウム血症になって、Kを下げる薬が処方された可能性は否定しておく必要があります。

副作用を疑うことが処方カスケードを未然に回避するために欠かせません。

薬剤性を疑うべき例は以下のとおりです。

  • 鎮咳剤処方…ACE阻害薬服用の有無は?
  • 抗めまい薬処方…降圧剤、プレガバリンなど服用の有無は?
  • 頻尿改善薬処方…利尿薬服用の有無?
  • 便秘薬処方…抗コリン薬服用の有無は?
  • カリウム製剤処方…ループ利尿薬、肝臓を含む漢方薬など服用の有無は?
  • 抗パーキンソン病薬処方…ドパミンD2拮抗薬服用の有無は?

といっても、未然に回避するのは簡単ではない

特に高齢者ではむずかしいです。薬剤性よりも、加齢に伴う身体機能の衰えが原因である可能性が高いからですね。

たとえば、85歳のおばあちゃんに頻尿改善薬が処方されたとします。

利尿薬の服用歴を確認して、薬剤性を疑う人はきっと少ないのではないでしょうか。

高齢者は加齢に伴って身体機能が衰えていくのが一般常識。なので、頻尿症状があっても、特に違和感はなく、むしろ自然だと思いますよね。

となると、薬剤性の視点はきちんと働かないことが多いでしょう。

・加齢に伴う身体機能の衰え> 薬剤性の可能性。

この図式によって、高齢者では薬剤性の可能性が見逃される傾向があると思います。

もちろん薬剤性ばかりを前面に押し出せばいいわけではありません。薬剤性は除外診断なので、ほかに明らかな原因がないことが前提です。

「副作用?それとも身体機能の衰え?はたまた別の要因?」総合的に処方の妥当性を評価できるセンスを養うことが処方カスケードの防止につながります。

まずは、日常業務で薬剤性を疑う習慣を身につけてみてはどうでしょうか。

まとめ

最後にまとめておきますね。

▽ポリファーマシーとは

  • 多剤併用または多剤服用のこと(4〜6種類以上が目安)
  • 臨床的に必要以上にor不必要に、薬が処方されている状態
  • 一種類でもポリファーマシーの場合がある
  • 薬がクスリを呼ぶ、処方カスケードは特に注意

▽減薬を進める上での問題点

  • 医師は自分以外の処方を触りたがらない
  • 薬剤師はクスリを中止しても問題ないのか確信が持てない
  • 薬を中止することは簡単ではなく、ポリファーマシー業務は責任が伴うヘビーな仕事

▽薬剤師ができる解決方法

  • 処方意図を読み解く力を鍛えよう(不適切処方を発見しやすくなる)
  • 薬剤性の意識を高めて処方カスケードを予防(削減も大事、でも処方を増やさない努力も必要)
  • 薬剤性と身体機能の衰えによる可能性、または別の原因?総合的に処方の妥当性を評価できるスキルを身につける(むずかしいけど…センスを磨きたい)

今回は「ポリファーマシー」をテーマに、減薬を進める上での問題点と薬剤師ができる解決方法を考察しました。

減らすことは本当にむずかしいーー。けど、「もしかして、ポリファーマシー」と意識すれば少しずつ状況は変わっていくと思います。

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