脂質異常症薬

コレステロール値はどこまで下げる?【薬効モニター時の落とし穴に注意!】

動脈硬化の原因になるLDLコレステロール。

下げるために、食事や運動など生活習慣を改善するのはもちろん、薬物療法を行なっている人も多いですね。

では、どのくらいまで下げるべきなのか?

・「血液検査票に書いてある基準値○○まで、でしょ?」普通そう思います。ですが、実はそうとも言い切れないのが、ややこしいところ。

今回は、LDLコレステロール値はどこまで下げるべきなのか?治療目標を理解するためのポイントを解説します。

LDLコレステロールの治療目標値は?

脂質異常症の診断基準は?

LDLコレステロール(以下、LDL-C)値がいくらになれば、高LDL-C血症と診断されるのか?

・140mg/dL以上で高LDL-C血症と診断されます

通常、血液検査にあるLDL-Cの基準値が70〜139mg/dLなので、オーバーした時点で高LDL-C血症と判断されるのですね。

参考文献)動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版

LDL-Cが140mg/dL を超えると治療開始?

残念ながら、話は単純ではない。

「LDL-C値が140を超えたら治療をスタート。治療目標は140未満とする」という一律の基準があればいいですよね?

140という基準をもとに治療の開始を判断したり、治療効果をモニターできる。高齢者であっても、若年者であっても、基礎疾患の有無とか気にしなくても良いので、わかりやすい。

しかし、残念なことにそうではないのです。

・LDL-C値140は、診断のために使うスクリーニング値であって、治療開始のタイミングや治療目標を示しているわけではありません。

140を超えたからといって、どんな人でも一律、治療が始まるわけではないのです。

治療開始のタイミングは患者さんごとに異なる

LDL-Cを下げるのは冠動脈疾患を予防するためです。

しかし、発症リスクは一様ではなく患者さんごとに違います。

・年齢や性別、冠動脈疾患の既往、基礎疾患、合併症、危険因子の有無などによって冠動脈疾患の発症リスクは変わるからです。

二次予防の方が一次予防よりもハイリスク

日本人を対象としたJ-LIT試験によると、一次予防患者と二次予防患者では、冠動脈疾患のイベント発生率が異なることが示されています。

この研究は、高脂血症患者52421例 (一次予防47294例、二次予防5127例)を対象に、シンバスタチンの少量投与(5〜10mg/日)を行い、前向きに6年間、脂質値と冠動脈疾患発症の関連を調査したもの。

主な結果は以下の通りです。
▽一次予防患者

  • 冠動脈イベント(心筋梗塞、心突然死)… 209例(0.91イベント/1000人・年)
  • LDL-C160mg/dL以上、HDL-C40未満で冠動脈イベントのリスクが高い

▽二次予防患者

  • 冠動脈イベント(心筋梗塞、心突然死)…110例(4.45イベント/1000人・年)
  • LDL-C120mg/dL以上、HDL-C40未満で冠動脈イベントリスクが高い

→二次予防患者は一次予防患者に比べて、約5倍も冠動脈疾患の発生率が高いことがわかります。

また、LDL-C、HDL-Cの血清濃度別の冠動脈イベントリスクから、二次予防の方が一次予防よりも、LDL-Cの治療目標値を低く設定する必要があることが示されました。

リスク因子はいくつかある

さらに、同試験ではLDL-C以外の要因(年齢や性別、合併症、喫煙など)と冠動脈イベント発症との関連性も指摘されています。(下図参照)

一次予防の場合には、男性の方が女性よりも冠動脈イベント発症リスクが2.29倍高いという結果に。確かに、心臓カテーテル治療を受ける患者さんは男性の方が多い気がしますね。

他にも、以下の病態や因子を持つ人では有意なリスクの増加が見られました。

・60歳以上
・高血圧
・糖尿病
・心電図異常
・脳血管疾患
・冠動脈疾患の家族歴
・喫煙

参考文献)Matsuzaki M,et al. Circ J. 2002 ; 66:1087-95.、Mabuchi H,et al.Circ J. 2002 ; 66:1096-100.

このように、冠動脈疾患発症リスクは、年齢や性別、基礎疾患、合併症、危険因子の有無などによって患者さんごとに異なります。

・冠動脈疾患の発症リスクが違えば、治療の開始基準となるLDL-C値や治療目標も当然変わるのです。

・つまり、LDL-C値が140を超えると、高LDL-C血症と診断されますが、薬物療法を始めるかどうか、どのくらいまでLDL-Cを下げるかは患者さんごとの冠動脈疾患発症リスクに応じて決定されるというわけですね。

冠動脈疾患発症リスクの分類方法

ガイドラインのフローチャートから冠動脈疾患の発症リスクを求めることができる。

発症リスクは大きく2つに分類。

  • 二次予防
  • 一次予防

さらに一次予防は下記3つに分かれます。

  • 高リスク
  • 中リスク
  • 低リスク

狭心症や心筋梗塞など冠動脈疾患の既往がある人は二次予防ですね。少しわかりにくいのは一次予防のリスク分類です。

ざっくりいうと、以下、高リスク病態の既往があると高リスクになります。

  • 糖尿病やCKDなどを合併した患者さん。
  • 非心原性脳梗塞のうち特にアテローム性脳梗塞
  • 粥状硬化による狭窄や閉塞病変のある末梢動脈疾患(PAD)

動脈硬化の進行によって、冠動脈疾患を起こしやすい病態ですね。

高リスク病態がなくても、リスク因子の数や年齢、性別によっては高リスクとなる場合もあります。例えば、喫煙、高血圧など冠動脈疾患の重要な危険因子がある人。また、高齢であるほど、女性よりも男性の方が発症リスクが高くなります。

  • 高リスク因子…喫煙、高血圧、低HDL-C血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴など

このように、一次予防では冠動脈疾患を起こしやすい病態や因子などから患者さんごとにリスクを高・中・低に細かく分類していきます。

まとめると、まずは二次予防と一次予防に分類。二次予防の方がハイリスクです。一次予防はリスク病態やリスク因子などをもとに、冠動脈疾患発症リスクを層別化し、3つのグループ(高リスク、中リスク、低リスク)に分けていくのです。

詳細はガイドラインを参照してくださいね。

参考文献)動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年度版

治療方針と治療目標は?

発症リスクをもとに治療方針と治療目標が決定されます。

治療方針と治療目標値について、ポイントをまとめたので参考にしてくださいね。

 治療方針の違い ( 一次予防 vs 二次予防 )

まずは治療方針について。

一次予防では、食事療法や運動療法、禁煙など生活習慣の改善が基本です。

ただ、ですね。
高リスクの人や低中リスクであっても、生活習慣の改善だけでは効果が乏しい人では薬物療法を考慮することがあります。

第一選択はスタチン。
LDL-Cをどのくらい下げるのか、治療目標値によって、スタンダートスタチンとストロングスタチンを使い分けます。

二次予防では、生活習慣の是正に加えて薬物療法を早期から開始し、冠動脈疾患の発症予防に努めなければなりません。再発を防ぐためですね。

一次予防と同様に第一選択はスタチン(ストロングの方)です。場合によっては小腸コレステロールトランスポーター阻害薬やPCSK9阻害薬などを組み合わせた併用療法が選択されることもあります。

治療目標の違い ( 一次予防 vs 二次予防 )

次に、目標LDL-C値はどのくらいを目指すのでしょうか?

言い換えると、LDL-C値をどこまで下げればいいのかということ。

一次予防では100〜160くらいと幅があります(高リスクの場合は120未満)。一方で、二次予防では100未満とより厳しい基準になります。

家族性高コレステロール血症(FH)や急性冠症候群(ACS)などを合併している場合にはさらに70未満へ。冠動脈疾患のハイリスク病態の場合ですね。

このように、LDL-Cの治療目標値は個々の冠動脈疾患発症リスクによってかなり違うのです。冠動脈疾患の発症リスクによって治療方針、治療目標値が決まります。

抗コレステロール薬の効果モニター、落とし穴に注意!


LDL-Cの目標値は薬効モニターに欠かせない。

どのくらいまで下げれば良いのか、目標値がわからないと薬効評価はできないですよね。

では、患者さんごとに抗コレステロール薬の治療目標値、意識しているでしょうか?
意識していないと誤った判断をする可能性があります。
2つの例を用いて見てみましょう。

ケース1:スタチン服用中の患者さん、定期検査のLDL-C値が130mg/dL

薬物療法が上手くいってるのか?

よくやってしまうのは、血液検査に記載されたLDL-Cの数値だけを見て判断してしまう。基準値が70〜139mg/dLなので。

【 #薬効評価…LDL-C値130mg/dL、基準値内でありコントロールOK 】
という評価に。

仮に、一次予防で基礎疾患がなく冠動脈疾患リスクが低い人なら、評価自体は間違いではありません。治療目標値<140なのでコントロール良好です。

しかし、ですね、
二次予防の人や一次予防であっても、糖尿病を合併した高リスクの患者さんの場合はどうか。

治療目標値<100を満たしてないので、効果は不十分。コントロールOKなんて言うのはダメで、増量や処方変更について医師にコンサルトが必要でしょう。

このケースでは誤った判断になってしまうのです。

ケース2:スタチンとPCSK9阻害薬併用。LDL-C値60mg/dL、慌てて薬の中止を訴える患者さん

検査値の基準値だけで判断してしまうと、下限値70mg/dLを下回っているので、

【#薬効評価…LDL-C値60mg/dL 、やや効きすぎの可能性あり、減量について考慮 】
となってしまう。

もちろん、一次予防で低リスクであれば、減量を考慮する場合もありえるでしょう。しかし、急性心筋梗塞を発症して冠動脈ステント治療を受けた人ではどうか。

管理目標値が70未満なので、脂質コントロール良好と評価できます。「効きすぎの可能性」という判断は正しくありません。

PCSK9阻害薬を投与してる時点で厳格な脂質管理が必要な人であるとわかるので、誤った判断をすることは普通ないですが…。

このように、患者さんごとで脂質管理の目標値が異なります。わかってないと、薬効を正しくモニターできないばかりか誤った処方提案や情報提供を行ってしまう可能性もあるのです。

冠動脈疾患の発症リスクを意識し、正しい知識を持って抗コレステロール薬の薬効評価を心がけたいものですね。

まとめ:コレステロール薬の治療目標と薬効モニター時の注意点

最後にまとめておきますね。

押さえておきたいポイントは以下の通りです。

  • LDL-C値140mg/dL 以上で高LDLコレステロール血症と診断
  • でも、すぐに治療が必要かは別の話。
  • 治療の必要性は一律ではなく患者さんごとの冠動脈疾患発症リスクによって決定する
  • 一次予防か二次予防に分けて考えるとわかりやすい
  • 二次予防…100未満が基本(<70の場合も)、一次予防…リスクの層別化によって設定(100〜160くらい)
  • 薬効評価は患者さんごとの治療目標値をもとに行う

★ ★ ★ ★ ★

今回は、LDLコレステロール値はどこまで下げるべきなのか、治療目標を理解するためのポイントと薬効モニター時の注意点を解説しました。

抗コレステロール薬を見たら、「この人の治療目標はどのくらいなのか、一次予防それとも二次予防?」と意識することが大切です。服薬指導や処方監査など日常業務にお役立て頂けたらうれしいです^_^

最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。

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